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42.気持ちのこもったお手紙が書けない小話(文月ふみの日)

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「はいこれ、晴海にあげる」 
「半紙? ええと……月島晴海様……?」
「部活の時間に、文の日だから手紙を書いてみましょうってことになって。晴海へのお手紙にしてみました」
「えっ! すげー! 一生持っとく」
「一生はどうかな」
「だって手紙って今時レアじゃん」
「でも中身がね」
「あ?」
 晴海は手紙の続きを読んで、「手紙っつーかメモじゃん、とっとくけど」と感想をのべた。その通り。わざわざ筆字で半紙に書いたのは「豚肉、玉ねぎ、ニンジン、ガラムマサラ、買いにいくから付き合って」。何しろ気持ちを伝えるための手紙は、言いたいことが多過ぎてまとまらなかったのだ。相手が晴海だからこそ容易ではない、もしかしたら一生ものの宿題である。



(了)210723
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