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39.引っ越すなら君を荷物に入れても絶対連れてく小話(創作BLワンライ/ワンドロ!様お題「荷物」)
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「お兄ちゃん、晴海くん来てるよ」
妹に教えてもらって自分の部屋を覗いてみると、幼なじみは頭まで湊の布団を被って丸くなっていた。
「……晴海?」
ベッドに歩み寄る。「こんもり」という表現がぴったりの、漫画みたいな丸まり方だ。
「おかえり」
布団のなかから声がした。没交渉ではないようだ。ただ、なんだか覇気がない。
「どうしたの。具合悪い?」
ベッドサイドに座る。晴海は「ちがくて」と否定した。
「僕、晴海を怒らせるようなことした?」
「そうでもなくて。……なんか、クラスのやつが引っ越すことになって」
「うん」
「箱崎家がこっから引っ越すことになったらどーしよって思ったら凹んだ……」
「うちはお父さんとお母さんの地元がこっちだし、職場もあるし、そうそう引っ越したりしないよ」
布団の丸みを撫でてやる。
「湊だけ出てくとかあるかもしんねーじゃん」
「えー。もしそうなったら僕、晴海も荷物に入れて持ってくもん」
湊は膝立ちになり、布団ごと晴海を抱き締めた。
「こうやってぎゅーって梱包する」
「オレ出荷されんの」
やっと晴海が布団から拗ねた顔を覗かせる。
「下積み厳禁天地無用だねえ。あとは」
湊は晴海の耳元で、内緒話のように囁いた。
「同居人として来てくれるのもアリ」
「あ! それ! それにする」
晴海は布団をはねのける。湊がいるところにいる、と晴海は言うけれど、湊だってそこを譲るつもりは全くないのだ。
(了)210720
妹に教えてもらって自分の部屋を覗いてみると、幼なじみは頭まで湊の布団を被って丸くなっていた。
「……晴海?」
ベッドに歩み寄る。「こんもり」という表現がぴったりの、漫画みたいな丸まり方だ。
「おかえり」
布団のなかから声がした。没交渉ではないようだ。ただ、なんだか覇気がない。
「どうしたの。具合悪い?」
ベッドサイドに座る。晴海は「ちがくて」と否定した。
「僕、晴海を怒らせるようなことした?」
「そうでもなくて。……なんか、クラスのやつが引っ越すことになって」
「うん」
「箱崎家がこっから引っ越すことになったらどーしよって思ったら凹んだ……」
「うちはお父さんとお母さんの地元がこっちだし、職場もあるし、そうそう引っ越したりしないよ」
布団の丸みを撫でてやる。
「湊だけ出てくとかあるかもしんねーじゃん」
「えー。もしそうなったら僕、晴海も荷物に入れて持ってくもん」
湊は膝立ちになり、布団ごと晴海を抱き締めた。
「こうやってぎゅーって梱包する」
「オレ出荷されんの」
やっと晴海が布団から拗ねた顔を覗かせる。
「下積み厳禁天地無用だねえ。あとは」
湊は晴海の耳元で、内緒話のように囁いた。
「同居人として来てくれるのもアリ」
「あ! それ! それにする」
晴海は布団をはねのける。湊がいるところにいる、と晴海は言うけれど、湊だってそこを譲るつもりは全くないのだ。
(了)210720
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