28 / 623
28.昼休みに他校の幼なじみの様子が気になる小話
しおりを挟む
休み時間にはまずスマートフォンを確認する。晴海が大抵なにかしらのアクションを起こしているからだ。携帯電話のころはメールだったし、最近はメッセージアプリで連絡がある。内容は学校のことや授業のことなど、他愛のないことがほとんどだ。湊もまめに返信している。
その日も晴海からアプリでメッセージが届いていた。
(……ふうん?)
内容は絵文字たったひとつきりだった。ドットで象られた顔が、涙を流して泣いている。何かあったのだろうか。気になって電話を掛けてみる。晴海は出ない。本当に緊急事態ならば詳細を綴るか電話連絡がきているだろうから、些細なことなのだろう。けれど。
ルルルン、という呼び出し音が止まり、留守番電話の案内が流れてくる。メッセージをどうぞ。
「晴海。泣いてるの?」
昼御飯を食べながら談笑していた周囲のクラスメイトが幾人か、湊の様子に気づいて不思議そうな顔をする。湊はただ微笑んだ。もっと大事な用がある。
「泣かないで。大好きだよ」
よく効く魔法の言葉だ。と、留守番電話の録音が途切れて電話が繋がった。
「湊」
「あ、出た。大丈夫?」
「いま大丈夫になった。湊不足極まってた」
「それは良かった」
午前中の授業にまつわるよしなしごとを喋り、また部活のあとにね、と約束して通話を切った。その頃には晴海の声も弾んでいた。どうやら午後の授業をサボらずに済みそうだった。
(了)210709
その日も晴海からアプリでメッセージが届いていた。
(……ふうん?)
内容は絵文字たったひとつきりだった。ドットで象られた顔が、涙を流して泣いている。何かあったのだろうか。気になって電話を掛けてみる。晴海は出ない。本当に緊急事態ならば詳細を綴るか電話連絡がきているだろうから、些細なことなのだろう。けれど。
ルルルン、という呼び出し音が止まり、留守番電話の案内が流れてくる。メッセージをどうぞ。
「晴海。泣いてるの?」
昼御飯を食べながら談笑していた周囲のクラスメイトが幾人か、湊の様子に気づいて不思議そうな顔をする。湊はただ微笑んだ。もっと大事な用がある。
「泣かないで。大好きだよ」
よく効く魔法の言葉だ。と、留守番電話の録音が途切れて電話が繋がった。
「湊」
「あ、出た。大丈夫?」
「いま大丈夫になった。湊不足極まってた」
「それは良かった」
午前中の授業にまつわるよしなしごとを喋り、また部活のあとにね、と約束して通話を切った。その頃には晴海の声も弾んでいた。どうやら午後の授業をサボらずに済みそうだった。
(了)210709
0
お気に入りに追加
88
あなたにおすすめの小説


塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。




怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる