お隣りのJKさんと料理下手くされ大学生のお裾分け晩御飯

muku

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037 増えていく楽しい思い出

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「仲良しの友達ができるっていいことですね。」

桃花が笑みを浮かべながらそういうと、「私たちも仲良しでしょっ!」と栞が桃花に抱き着いた。ソファに寝そべっていた沙織も、「あ~ずるいっ」と桃花に上から覆いかぶさった。

“カシャッ”

レトロな機械音が鳴り、三人はその音の方角を見つめた。

「あー、ごめん。なんか素敵だなって思って撮っちゃった。」

「うわー!カメラやん。なんかかっちょいーな!」

「これライカじゃないですか。貧乏学生だと思ってたのに、意外とお金持ちなんですか?」

双子はわいわいと翔の手のカメラを奪おうとしてきた。

「こらこら、大事なカメラなんだ。無理に奪おうとしないでくれ。」

「勝手に撮ったんだから、私たちにも撮らせてやー。」

沙織の言うことも一理ある。「丁寧に扱ってくれよ。」と前置きし、翔は沙織にカメラを手渡した。

「おっしゃ。何でも撮ったるでー。おっ、そこのカップル!一枚撮らせーやー。」

沙織の言葉に、栞が「ほらぁ。もっとくっ付かないと駄目ですよ。」と双子のコンビネーションを見せ、翔と桃花の腕を引いてぎゅっと肩をくっつけたさせた。

「はい、チーズ!」

“カシャッ”

後日現像すると、急なことに少しまぬけに口をあける翔と、恥ずかしそうに俯く桃花のツーショット写真が切り取られていた。

双子はそのあとしばらく翔のカメラで遊んだあとに帰宅し、トミーもハムナプトラが終わると、「あとは若いお二人でごゆっくり…」と意味深な言葉を残して帰宅した。

翔の部屋には、遠慮の塊として残った数貫のお寿司と、キッチンには散らかった食器類、祭りのあとの少し寂しいような静けさと、ちょこんと座布団に正座して座る女子高生一人が残っていた。

「今日は本当ありがとうございました。お皿洗って帰りますね。」

そう言って立ち上がろうとする桃花を、「いや、また洗っとくから大丈夫だよ」と翔は手で制しした。

「いえいえ、そういうわけには…ありゃ?」

正座から膝立ちの姿勢になった桃花は、自分の両脚がしびれて、全く操縦が利かなくなっていることに気が付いた。そのまま華奢な身体が前に倒れそうになるのを翔が受け止めた。

「おっと、大丈夫?」

「わっすみません。足が痺れちゃったみたいです。」

桃花はくるぶしまでの長さのくつ下を履いていた。それをじっと翔は見つめている。

「あの……翔さん?なんか…変なこと考えてません?」

「えいっ。」

翔は机の上の誰も使うことのなかった割りばしを手に取り、膝立ちになったまま動けない桃花の小さな足の裏をつっついいた。

「うにゃっあ!?何するんですか?」

「いや、足痺れた人見たらやりたくなるでしょ?」

桃花は体操座りで背中を見せる様にして、逃げるように翔から離れ、自分の足を隠した。

「もうっ。翔さんって意外とSですね…。」

半泣きで反抗心を持った目で桃花に見つめられ、翔はすごく悪いことをしている気分になった。

「ごめん、ごめん。悪かったよ。もうしないから。」

桃花は相変わらず、警戒心を持った様子でこちらを見ている。

「あっ、そうえば写真で思い出したけど、神戸まつりのときの写真。送るの忘れてたよね。どんな写真か見るかい?」

翔の提案に、桃花は恐る恐ると、未だ痺れる足をかばいながら近づいた。翔から慎重にスマホを受け取る。

「神戸まつりの写真の他にも、お泊り会の写真もあるよ。僕はその間にちょっとトイレ行ってくるかな。」

そう言って、膝立ちになったとき、「あれっ?」と、翔はすっとんきょんな声を出した。

足をかばうような動作を見せた翔に、桃花は「もしかして…。」と割りばしを手に取った。

「ちょっと、桃花ちゃん!?こらこら、そんな悪戯する子どものような顔をしてこっちに来ないでくれる?」

梅雨真っ只中の夜の空には、雨粒が静かに落ちる音が響き、どこか凛とした冷たい空気が漂っている。

しかし、翔の部屋には、今年で二十歳になった男性の情けない声と、幼い子供のような明るい笑い声が響き、どこか温かな空気が立ち込めていた。
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