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二話 恐ろし気な怪異城の噂
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神戸という町は、異国情緒あふれた美しいオシャレシティである……というイメージを神戸市民はアピールしたいのだが、その実はかなり胡散臭いもので満ちた町である。
神戸港周辺のハーバーランド周辺は、風光明媚なまさにオシャレスポットだが、そこから少し歩けば、古い日本の老舗が集まる元町商店街があり、またその通りを一本横に道をそれたら、南京町という中華街が存在しており、一子相伝の中国拳法が今なお伝授されているとか、若返りや不老不死の秘術を隠しもっているだとか、上海マフィアがあたりを仕切っているとかの噂もある。
北側には、西洋建築が立ち並ぶ北野坂があり、さらに北へと六甲山を隔てた先には、かの豊臣秀吉が愛した名湯である有馬温泉がある。金泉、銀泉を目当てに多くの観光客が訪れる温泉街の奥深くには、太閤秀吉が作らせたという、浴槽から壁一面にかけて全て純金でできた、黄金の湯があるとかないとか。
和洋中、世界の多様な文化・風土が集合し、カオスとも言える場所は、かなり胡散臭いものも多く作り出した。
その一つとして、東門街の路地裏には、神戸市灘区の誇る銘酒を使った、日本酒のカクテル専門に提供する店“ミックス呪酒”(みっくすじゅーしゅ)というスナックがある。
その名の通り、酒をミックスしてカクテルを提供する店で、店主がシェイカーを振るう動作が、どこかの民族の呪いの儀式に見える事から、この名前が付いたのだともっぱらの噂である。
「せっかく異国の文化溢れる神戸なんだから、日本酒も海外の酒と混ぜるべきでしょ?」
ミックス呪酒の店主は、みなからはマスターと呼ばれており、日本を代表する酒どころの一つ、灘五郷(なだ ごごう)から秘蔵酒を仕入れ、それをそのまま飲めばよいものを、カクテルとして提供することにこだわっている。
本当にそんなカクテルが存在するのか、と疑わざるを得ない胡散臭い酒がメニューに並んでおり、そんな胡散臭い場所には、もちろん胡散臭い者が集い、やはり胡散臭い情報もまた集積して混沌なる溜まり場となっている。そして僕自身もまた、若くして執事になりたいとのたまう胡散臭い人間であった。
「あら、久しぶりじゃない」
ミックス呪酒のマスターは、店に入った僕を見て声をかけてきた。
「どうも、あいかわらず奇抜な恰好ですね」
マスターは、まさにカオスを体現する人である。日本らしい和服に、西洋感ある偉大な音楽家っぽい白髪のズラを被り、中国感ある龍の描かれた扇子を持っている40代くらいの男だ。
「褒め言葉として受け取っておくわ」
見た目はただのオッサンだが、言葉は女言葉である。やはり色々混ざり過ぎていて、何度か店に足を運んだ今でもまだ慣れない。
なぜここに足を運んだかというと、彼は神戸の胡散臭い情報なら、だいたい網羅しているというほどに情報通であるからだ。古今東西のありとあらゆる胡散臭い者たちが、この胡散臭い店に足しげく通い、酒をかっくらいながらマスターに様々な情報をこぼしている。
「ちょっと知りたい事があるんですけど、聞いてもいいですか?」
まだ夕方なので、店内に客は少なかった。カウンター席に腰かけ、さっそく今日見かけた執事の求人に関する情報を尋ねようとした。
「その前に、とりあえずなんか一杯注文しなさいよ」
「あっ、そうですね。失礼しました。っでは、清流を一杯お願いします」
清流とは、日本酒にブルーキュラソーとレモン果汁、ライムシロップ等を混ぜた日本酒カクテルである。その名の通り、飲みやすい爽やかな味わいも好きだが、何といってもその色鮮やかな見た目が好きだ。昔からかき氷はブルーハワイ、戦隊シリーズの好きなキャラは青である僕にとって、タヒチの美しい透きとおった海を思わせるカクテルの色がお気に入りだった。
「はい、お待たせ」
「ありがとうございます」
美しい絶景を眺めるようにじっと見つめた後、僕は清流を少しずつ口に含んだ。謎の執事の求人を見つけ、その羊皮紙を失くして一喜一憂した一日だったが、こうして胡散臭い店で酒を飲んでいると、全て夢幻だったのではないかとすら思えてくる。
一通り日本酒カクテルを味わったところで、マスターから先ほどの質問について尋ねられた。
「っで、何について聞きたいの?」
「それなんですが、北野坂周辺で、旧ゴットフリート邸に似た名前の家は知りませんか?」
「ゴットフリート邸って言ったら、あの風見鶏の館よね」
「えぇ……。それに限りなく似てるんですけど、少し違った名前です。それで、そこの家が執事を募集しているという情報を知りまして」
そう伝えると、マスターは少し考えた後に、何か思い当たった表情に変わった
「執事……そうねぇ。多分だけど、旧ゴッドフリーク邸じゃないかしら」
「あぁっ! それですっ! 確かその名前だった」
「あそこの執事になりたいの?」
「ええ。今の日本では、執事の求人なんて皆無に等しいですからね。古代遺跡発掘の仕事と同じくらい就職は困難ですよ」
「ロマンある仕事は、簡単にはなれないからこそ、ロマンがあるのかもね」
マスターは、六甲の雫という大吟醸の酒を、トマトジュースで割りながらそう言った。とてももったいない気分になったが、レッドサンというれっきとしたカクテルらしい。
「旧ゴッドフリーク邸の主人は、うちの店にもよく飲みに来るわよ」
「そうなんですか。それなら、ぜひとも執事として働きたいという若い男がいると、ご伝達御願いできないでしょうか」
マスターは血のような赤い日本酒カクテルを、グラスに口づけするようにして飲んだ。見た目はオッサンなのに、妙に色っぽく飲むものだ。
「まぁいいけど、あそこの屋敷で働くのは結構大変かもよ」
「大変……? それはどういう事ですか?」
「あんまりお客さんの事をペラペラ話すのは気が進まないんだけどね……。三宮界隈では、“怪異城”って呼ばれてるのよ」
「怪異城……ですか」
なんだか聞くからに恐ろし気な名称である。怪異と聞けば魑魅魍魎のイメージが真っ先に思い浮かんだが、北野坂のお屋敷ということは、西洋妖怪が住む屋敷といったイメージだろうか。
「何でもね、これまでも色々な資産家がその屋敷に住んだのだけれど、およそ口では言えないような不幸が相次いで、すぐに退居してしまうのよ。あのお屋敷は、普通の人間には手の負えない屋敷だとか、魔が住んでいるだとか言われているわ」
「そうなんですね。今のお住まいの主人は、その怪異城に移り住んでから長いのですか?」
「そうねぇ、もうすぐで一年になると思うわ。現在の屋敷の主人は、この界隈では伯爵と呼ばれてる有名人よ」
「伯爵……」
その言葉からは、どうしてもヴァンパイア的な何かを連想されてしまう。
「まぁどんな人かは会ってみたらわかるわ。……どう? ここまで話を聞いても、やはり執事としてそこで働きたいわけ?」
「はい、もちろんです」
間髪なくそう答えた僕を見て、マスターは物好きな人間もいるもんだと眉をひそめた。
「わかったわ。伯爵には私から連絡を入れて置いてあげる。あんたも連絡先を教えなさい」
「お手数をおかけしてすみません。ありがとうございます」
グラスに残っている美しいターコイズブルーのカクテルを飲み干し、僕はマスターに礼を言ってから店を出た。
ミックス呪酒のマスターから連絡が来たのは、それから三日がたった火曜日の夜であった。
実家のリビングで、P.G.ウッドハウスの『比類なきジーヴス』を読んでいた時である。有能な執事のジーヴスが、主人が巻き込まれるトラブルを見事に解決するという小説で、エリザベス皇太后や、アガサ・クリスティーも愛読した小説だ。
執事のジーブスが主人の注文したシャツを、ご主人様には似合わないと言って送り返すシーンを読んでいた時に、スマホに着信が入った。
「はい、もしもし」
着信の相手は、ミックス呪酒のマスターであった。酒やけしたざらついた声が、電子音となって余計に強調されてスマホから聞こえてきた。
「前に話した旧ゴッドフリーク邸の件だけど、伯爵と連絡ついたわよ」
「本当ですか! ありがとうございます」
「それでなんだけど、とりあえず面接をして決めたいって事だから、今週末の土曜日は空いてるかしら?」
「はい、大丈夫です」
「っじゃあ、土曜日の午前10時に、旧ゴッドフリーク邸……。現在のドラクリヤ邸に来てくれとのことだわ」
「ドラクリヤ? それって、ドラキュラの元ネタになった人の名前じゃないですか」
「それが伯爵のファミリーネームよ。怖くなって、やっぱり行きたくなくなったかしら?」
「少し驚いただけですよ。なるほど、わかりました。ドラクリヤ邸までの行き方がわからないのですが、ご存じでしょうか」
「そうね。土曜の朝なら、私が近くまで一緒に行って案内してあげるわよ」
「さすがにそこまでしていただくのは、申し訳ないのですが」
「まぁ本当は情報料なりもらいたいところだけど、若人の輝かしい未来を願って、今後もミックス呪酒を贔屓にしてもらうってことで今回はいいわよ」
「すみません。ありがとうございます」
「っじゃあ、今度の土曜日にね。アディオス!」
マスターとの通話が途切れた後、なんとも不思議な気分になった。半ば諦めていた執事という仕事に就けるかもしれないという興奮と、伯爵とかいう人の悪ふざけではないかと疑う気持ちの両方が入り混じっていた。
ドラクリヤを名乗る伯爵が住む怪異城、改めて考えるとひどい胡散臭さだ。一体どんな人物が住んでいて、どんな屋敷なのだろうか。
とても気になるところだが、これから忠義を尽くすべきご主人になるかもしれない人に、あれこれ先入観を持つのもよろしくないだろう。
散髪に行き、身なりをしっかりと整えて、約束の面接の日に向けて念入りに心身の準備を整えた。
神戸港周辺のハーバーランド周辺は、風光明媚なまさにオシャレスポットだが、そこから少し歩けば、古い日本の老舗が集まる元町商店街があり、またその通りを一本横に道をそれたら、南京町という中華街が存在しており、一子相伝の中国拳法が今なお伝授されているとか、若返りや不老不死の秘術を隠しもっているだとか、上海マフィアがあたりを仕切っているとかの噂もある。
北側には、西洋建築が立ち並ぶ北野坂があり、さらに北へと六甲山を隔てた先には、かの豊臣秀吉が愛した名湯である有馬温泉がある。金泉、銀泉を目当てに多くの観光客が訪れる温泉街の奥深くには、太閤秀吉が作らせたという、浴槽から壁一面にかけて全て純金でできた、黄金の湯があるとかないとか。
和洋中、世界の多様な文化・風土が集合し、カオスとも言える場所は、かなり胡散臭いものも多く作り出した。
その一つとして、東門街の路地裏には、神戸市灘区の誇る銘酒を使った、日本酒のカクテル専門に提供する店“ミックス呪酒”(みっくすじゅーしゅ)というスナックがある。
その名の通り、酒をミックスしてカクテルを提供する店で、店主がシェイカーを振るう動作が、どこかの民族の呪いの儀式に見える事から、この名前が付いたのだともっぱらの噂である。
「せっかく異国の文化溢れる神戸なんだから、日本酒も海外の酒と混ぜるべきでしょ?」
ミックス呪酒の店主は、みなからはマスターと呼ばれており、日本を代表する酒どころの一つ、灘五郷(なだ ごごう)から秘蔵酒を仕入れ、それをそのまま飲めばよいものを、カクテルとして提供することにこだわっている。
本当にそんなカクテルが存在するのか、と疑わざるを得ない胡散臭い酒がメニューに並んでおり、そんな胡散臭い場所には、もちろん胡散臭い者が集い、やはり胡散臭い情報もまた集積して混沌なる溜まり場となっている。そして僕自身もまた、若くして執事になりたいとのたまう胡散臭い人間であった。
「あら、久しぶりじゃない」
ミックス呪酒のマスターは、店に入った僕を見て声をかけてきた。
「どうも、あいかわらず奇抜な恰好ですね」
マスターは、まさにカオスを体現する人である。日本らしい和服に、西洋感ある偉大な音楽家っぽい白髪のズラを被り、中国感ある龍の描かれた扇子を持っている40代くらいの男だ。
「褒め言葉として受け取っておくわ」
見た目はただのオッサンだが、言葉は女言葉である。やはり色々混ざり過ぎていて、何度か店に足を運んだ今でもまだ慣れない。
なぜここに足を運んだかというと、彼は神戸の胡散臭い情報なら、だいたい網羅しているというほどに情報通であるからだ。古今東西のありとあらゆる胡散臭い者たちが、この胡散臭い店に足しげく通い、酒をかっくらいながらマスターに様々な情報をこぼしている。
「ちょっと知りたい事があるんですけど、聞いてもいいですか?」
まだ夕方なので、店内に客は少なかった。カウンター席に腰かけ、さっそく今日見かけた執事の求人に関する情報を尋ねようとした。
「その前に、とりあえずなんか一杯注文しなさいよ」
「あっ、そうですね。失礼しました。っでは、清流を一杯お願いします」
清流とは、日本酒にブルーキュラソーとレモン果汁、ライムシロップ等を混ぜた日本酒カクテルである。その名の通り、飲みやすい爽やかな味わいも好きだが、何といってもその色鮮やかな見た目が好きだ。昔からかき氷はブルーハワイ、戦隊シリーズの好きなキャラは青である僕にとって、タヒチの美しい透きとおった海を思わせるカクテルの色がお気に入りだった。
「はい、お待たせ」
「ありがとうございます」
美しい絶景を眺めるようにじっと見つめた後、僕は清流を少しずつ口に含んだ。謎の執事の求人を見つけ、その羊皮紙を失くして一喜一憂した一日だったが、こうして胡散臭い店で酒を飲んでいると、全て夢幻だったのではないかとすら思えてくる。
一通り日本酒カクテルを味わったところで、マスターから先ほどの質問について尋ねられた。
「っで、何について聞きたいの?」
「それなんですが、北野坂周辺で、旧ゴットフリート邸に似た名前の家は知りませんか?」
「ゴットフリート邸って言ったら、あの風見鶏の館よね」
「えぇ……。それに限りなく似てるんですけど、少し違った名前です。それで、そこの家が執事を募集しているという情報を知りまして」
そう伝えると、マスターは少し考えた後に、何か思い当たった表情に変わった
「執事……そうねぇ。多分だけど、旧ゴッドフリーク邸じゃないかしら」
「あぁっ! それですっ! 確かその名前だった」
「あそこの執事になりたいの?」
「ええ。今の日本では、執事の求人なんて皆無に等しいですからね。古代遺跡発掘の仕事と同じくらい就職は困難ですよ」
「ロマンある仕事は、簡単にはなれないからこそ、ロマンがあるのかもね」
マスターは、六甲の雫という大吟醸の酒を、トマトジュースで割りながらそう言った。とてももったいない気分になったが、レッドサンというれっきとしたカクテルらしい。
「旧ゴッドフリーク邸の主人は、うちの店にもよく飲みに来るわよ」
「そうなんですか。それなら、ぜひとも執事として働きたいという若い男がいると、ご伝達御願いできないでしょうか」
マスターは血のような赤い日本酒カクテルを、グラスに口づけするようにして飲んだ。見た目はオッサンなのに、妙に色っぽく飲むものだ。
「まぁいいけど、あそこの屋敷で働くのは結構大変かもよ」
「大変……? それはどういう事ですか?」
「あんまりお客さんの事をペラペラ話すのは気が進まないんだけどね……。三宮界隈では、“怪異城”って呼ばれてるのよ」
「怪異城……ですか」
なんだか聞くからに恐ろし気な名称である。怪異と聞けば魑魅魍魎のイメージが真っ先に思い浮かんだが、北野坂のお屋敷ということは、西洋妖怪が住む屋敷といったイメージだろうか。
「何でもね、これまでも色々な資産家がその屋敷に住んだのだけれど、およそ口では言えないような不幸が相次いで、すぐに退居してしまうのよ。あのお屋敷は、普通の人間には手の負えない屋敷だとか、魔が住んでいるだとか言われているわ」
「そうなんですね。今のお住まいの主人は、その怪異城に移り住んでから長いのですか?」
「そうねぇ、もうすぐで一年になると思うわ。現在の屋敷の主人は、この界隈では伯爵と呼ばれてる有名人よ」
「伯爵……」
その言葉からは、どうしてもヴァンパイア的な何かを連想されてしまう。
「まぁどんな人かは会ってみたらわかるわ。……どう? ここまで話を聞いても、やはり執事としてそこで働きたいわけ?」
「はい、もちろんです」
間髪なくそう答えた僕を見て、マスターは物好きな人間もいるもんだと眉をひそめた。
「わかったわ。伯爵には私から連絡を入れて置いてあげる。あんたも連絡先を教えなさい」
「お手数をおかけしてすみません。ありがとうございます」
グラスに残っている美しいターコイズブルーのカクテルを飲み干し、僕はマスターに礼を言ってから店を出た。
ミックス呪酒のマスターから連絡が来たのは、それから三日がたった火曜日の夜であった。
実家のリビングで、P.G.ウッドハウスの『比類なきジーヴス』を読んでいた時である。有能な執事のジーヴスが、主人が巻き込まれるトラブルを見事に解決するという小説で、エリザベス皇太后や、アガサ・クリスティーも愛読した小説だ。
執事のジーブスが主人の注文したシャツを、ご主人様には似合わないと言って送り返すシーンを読んでいた時に、スマホに着信が入った。
「はい、もしもし」
着信の相手は、ミックス呪酒のマスターであった。酒やけしたざらついた声が、電子音となって余計に強調されてスマホから聞こえてきた。
「前に話した旧ゴッドフリーク邸の件だけど、伯爵と連絡ついたわよ」
「本当ですか! ありがとうございます」
「それでなんだけど、とりあえず面接をして決めたいって事だから、今週末の土曜日は空いてるかしら?」
「はい、大丈夫です」
「っじゃあ、土曜日の午前10時に、旧ゴッドフリーク邸……。現在のドラクリヤ邸に来てくれとのことだわ」
「ドラクリヤ? それって、ドラキュラの元ネタになった人の名前じゃないですか」
「それが伯爵のファミリーネームよ。怖くなって、やっぱり行きたくなくなったかしら?」
「少し驚いただけですよ。なるほど、わかりました。ドラクリヤ邸までの行き方がわからないのですが、ご存じでしょうか」
「そうね。土曜の朝なら、私が近くまで一緒に行って案内してあげるわよ」
「さすがにそこまでしていただくのは、申し訳ないのですが」
「まぁ本当は情報料なりもらいたいところだけど、若人の輝かしい未来を願って、今後もミックス呪酒を贔屓にしてもらうってことで今回はいいわよ」
「すみません。ありがとうございます」
「っじゃあ、今度の土曜日にね。アディオス!」
マスターとの通話が途切れた後、なんとも不思議な気分になった。半ば諦めていた執事という仕事に就けるかもしれないという興奮と、伯爵とかいう人の悪ふざけではないかと疑う気持ちの両方が入り混じっていた。
ドラクリヤを名乗る伯爵が住む怪異城、改めて考えるとひどい胡散臭さだ。一体どんな人物が住んでいて、どんな屋敷なのだろうか。
とても気になるところだが、これから忠義を尽くすべきご主人になるかもしれない人に、あれこれ先入観を持つのもよろしくないだろう。
散髪に行き、身なりをしっかりと整えて、約束の面接の日に向けて念入りに心身の準備を整えた。
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