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二学期 五章 文化祭準備

026 新生徒会役員ども

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 文化祭において雑用係の俺は、伊達丸尾の広報業務を手伝うことになった。

 卒業生たち後援会からの支援を募ったり、協賛してくれる地元のお店や地域への挨拶まわりなど、やることは山積みらしい。

「すまないな。助かるよ。」

 作業を始めた時、丸尾は案外素直に感謝の礼を俺に告げた。

「なんだ、お前って意外と素直なんだな。氷菓とも上手くやってるみたいだし。」

 氷菓と丸尾は元生徒会長選挙の対立候補同士だったが、今は次期生徒会長、次期副会長という間柄になっている。

「素直さは大きな美徳の一つだ。それと、私が氷菓次期生徒会長に忠誠を誓うのは当然だろう。私が副会長に就任できたのも、氷菓殿のおかげだ。」

「ふーん。」

 伊達丸尾――リア充しねしね団ならぬ組織の創始者である彼だが、今ではすっかり氷菓の傘下に入っている。

「丸尾は、氷菓のこと好きなの?」

「……っはぁ!?」

 俺の言葉に、丸尾は明らかな動揺を示した。

「ば、ばかを言うなよっ。そ、そんな恐れ多いことを考えるわけがないだろう!」

「まぁそうか。氷菓に恋愛感情を持って、ロリコン認定されたくないもんな。」

「――なんで私に恋愛感情をもったら、ロリコン認定されるのかしら?」

 背後から、少しだけ姉貴に似てきた冷たい声音のロリボイスが聞こえてきた。

「あら……氷菓次期生徒会長……。これはほんの冗談でして……」

 俺のタイミングの悪さは折り紙つきである。いつの間に現れたのだろうか。

「雪のピッ―――(非人道的言葉)!」

 氷菓はそう言って俺の脛にローキックを入れてきた。

「いってっー!!」

 これほどの凄みを出せるようになるとは、姉貴にはまだ及ばないが大きな成長を感じる。以前やった俺の特訓の成果というか、影響は少しはあったようだ。

「ったく、おい氷菓。いきなり現れるなよ。」

「さっきからいたけど、あんたたちが気づかなかっただけよ。」

「すまんな、小さいから視界に入らなかったわ。」

 再び氷菓から、超ローキックがとんできた。しかし今度は見切って、俺は氷菓のキックを避けた。

「あぶねっ。ってか、氷菓は何しに来たの?」

「何しにって、雪と同じよ。丸尾くんが大変そうだから手伝いにきたの。」

 氷菓のその言葉に、丸尾は深く頭を下げた。

「あっ、ありがとうございます。氷菓殿。」

「新生徒会のメンバーとして、私達は助け合うのが当然だよ。みんなで協力して、まずは文化祭を成功させないとね。」

 氷菓は姉貴とは違うが、彼女の良さを持って素敵な生徒会長になるだろう。
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