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二学期 三章 青春大運動会

014 『借り人競争』で誘拐されるロリ副会長

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 昼食休憩を挟んで、午後の部一発目は『借り人競争』であった。

「続いての種目の『借り人競争』では、紙に書かれている内容に該当する人物を探して、その人物とともにゴールする順位を競います。」

「なるほど~。わかりみのある説明ありがとうございます。」

「解説コメンテーターの風花さん、紙に書かれている内容はどのような物が予測されるでしょうか?」

 風花のやつ、いつの間にか解説に抜擢されてやがる……。

「そうですねぇ、個人的にはやはり……『この人なら、まぁぎりぎり付き合ってあげてもいいかなってレベルの人』とかってお題があれば、テンションあげみざわですね。この競技にもお姉ちゃんが一枚噛んでるそうなので、ワンチャンそれよりもっと厳しいお題が入ってるかもです。」

「それはなかなか難しいお題がありそうですね。競技終了後、会場が微妙な空気で包まれる事が予測されます。」

”パンッ!”

 号砲が鳴るとともに、出場選手たちが一斉にお題が書かれた紙を掴んだ。そしてお題に書かれた特徴に該当するパートナーを探しに、観覧席へと潜っていった。

「ちょっと! 絶対嫌よっ! ふざけんなぁ!」

 どこからか、まだ変声期の訪れていない舌っ足らずな女の子の声が聞こえてきた。

「おや、解説の風花さん? 何やら向こうでもめ事が起こっているようですよ。」

「本当ですね。あのちびっ子はこの学校の生徒さんなのですか? 小学五年生とかではなく?」

 放送アナウンスでちびっ子呼ばわりされた事に、彼女は激怒した。

「誰がちびっ子ですって!? 私はこの学校の副会長なのよ! 吹雪さまの次に偉いのにっ!」

 騒動の渦中には、我が校のちびっこ副会長……永森氷菓の姿があった。お題の紙を持ったゴリラに似ている女子生徒から腕を引っ張られていることから、氷菓はどうやらお題に該当する人物のようだ。

「あの女子生徒、どっかで見た事あるなぁ。」

 あっ――思い出した。球技大会でちろるんと試合してた奴だ。波動球打ってた子だ。

「断固拒否します!……きゃっ!」

 頑なに断り続けられ、業を煮やしたゴリラ似の女子生徒は、氷菓の身体を軽々と担いでゴールへと走っていった。

「解説の風花さん、また随分と衝撃映像が飛び出しましたね。」

「なんか、誘拐の現場を目撃してしまったような気分……。」

 第一走の全員がゴールし、それぞれ引いたお題の発表がされた。

「それでは、お題にあった人物かどうか確認していきます。」

 順々にお題が発表されていき、そして氷菓を拉致したゴリラ似の女子生徒の引いたお題が発表された。

「彼女が引いたお題は……『合法ロリ』というお題でした。お見事、お題にあった人物を連れてくることができましたね。」

「っはぁ!? ふざけんな! ロリじゃないし、そもそもJKは合法じゃないでしょっ!」

 審判員たちの審議の結果、氷菓はJKにも関わらず、小学生のようなその見た目から、将来的には合法ロリになることが確実である。よって問題なしと認められた。

「問題しかないでしょっ! 納得いかない、どうかしてるわよ! 来年私が生徒会長になった時は覚えてなさい!」

 競技から戻ってきた氷菓は不満たらたらの様子である。

「おい氷菓、まぁ落ち着けよ。子どもが駄々をこねてるように見られるぞ?」

「雪! 誰が子供ですって!? 私が生徒会長になった時、覚えてなさいよっ!」

「おっと、職権乱用はよくないぞ。私情を挟むのは、独裁政治への第一歩だ。」

「独裁政治が悪だと決めつけるのも早計だわ。与党と野党の知能指数低そうな討論みてたらわかるでしょ。」

「そこは否定しないが、俺は学校という場での独裁は賛同しない。生徒会みたいな短すぎる任期じゃ、ろくでもない人間がトップになる可能性が高まる。それにそもそも、まだ未熟な学生が独裁統治するのも危ない。」

「ぐぬぬ……」

 俺と氷菓が話している最中に、放送アナウンスの風花の声が聞こえてきた。どうも借り人競争の第二回戦が始まったようだ。
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