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一学期 四章 球技大会の打ち上げ

033 球技大会で活躍した青葉は、クラスの男からもてる。

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「私ちょっと他の子とも話しに行ってくるわ~」
「っじゃあ私も~」

 ある程度食べた頃に、クラス委員長とその取り巻きは、ふらっと席をたって隣の席へと移動した。

 え? 席移動ルールとかそんなんあったの? だったら最初から俺も移動してるんだけど。

 何とも言えない微妙な顔をしていると、バスケ部の真野が話しかけてきた。

「にしても、今日は青葉のおかげで楽しかった。サンキューな」
「いや、こちらこそ」

「男子で青葉と話したい奴らがいるみたいだから、なぁ松坂……、俺らもちょっと移動するか」
「おう、そうだな」

 そういうと、真野は松坂を連れ立って行ってしまった。

 あれ……おい! ちょっと、俺を一人にしないでくれない……? ボックス席に俺一人だけって、なんかすっごい寂しい奴みたいじゃないか。

 しかし、そんな不安はすぐに解消された。

「青葉! 今日はお疲れさん。」

 陸上部短距離の鈴木と長距離の藤田が、俺のいる席へと飲み物を持って腰かけた。

「おう、おつかれ」

 彼らはスクールカースト“普通”にランクインする男子であり、俺でも特に気負わなく話せる。というか、男子ならカースト上位でもなんとか大丈夫だ。

 カースト上位陣の女子の前だと、借りてきた猫のように、どこかよそよそしい感じになるけど……、これってあるあるだよね? 

「青葉が一人ひとりに役割くれたから、なんかやる気でたわ」
「うん、団結したって感じしたな」

 鈴木と藤田はそう言って笑った。

「いや、二人とも今日はよく走ってくれてありがとうな。鈴木は速攻で攻撃の起点になってくれたし、藤田はずっと走り続けて相手にプレッシャーをかけてくれた。二人の貢献はでかいよ」

「そ……そうかな?///」
「なんか、サッカー部から褒められると、やっぱ嬉しいな///」

 俺の言葉に、二人はどこか照れくさそうな顔をした。おいおい、男とラブコメ展開とかいらんから。

「お疲れさん!」

 俺のいる席に、さらに男どもが流れて来た。まぁそれもそうだろう。だって俺の周りにいたカースト上位陣がみんな他の席にいったってことは、彼らに自分の席を奪われた悲しい男どもが、こちらの空いている席に押し寄せることになる。

 まぁ一人よりはましだが……。

 このままビュッフェの料理を山盛り取ってきたり、ジュースを混ぜて一番まずいの作れた人が勝ちというゲームをしたり、そんな寂しい男たちだけの宴が始まってしまう雰囲気である。まぁそれはそれで楽しいんだけどね。

「おう、高木に沼田! ナイスヘディングに、ナイスキーパー! っじゃあ俺はジュースくんで来るわ」

 ここは一度体勢を整え、戦略を練るのが無難である。どうすれば男たちの狂宴から逃れることができるだろうか。

「……無理だな。諦めよう。」

 結局この場の打開策を思いつかず、メロンソーダをくみ終わって席に戻ると、俺が座っていた席には帰宅部の田中が座っていた。

「あっ、青葉くん。今日はありがとう」

 田中はそう言ってほほ笑んだ。田中は前髪が長く、黒縁眼鏡をかけたひょろっとした男である。今までその存在を気にしたこともなかったが(クラスでは神崎さん以外の人間を特に気にしてないのだが)、よく見ると田中はかなり整った顔立ちをしている。そう思うほどに、田中のほほ笑んだ顔は可愛らしい少年という感じだった。

「いや、こちらこそ。最後は田中のファインプレーだった。田中がディフェンスに定評のある池上を抑えてくれたから勝てたんだ」
「そっ、そんなことないよ。青葉くんがアドバイスしてくれたおかげだ」

「それを実行できたのがすごいんだ。パスコースもばっちりだったし、その後剛田とやりあってるときも、池上を田中が止めてくれてたからシュートまでいけた」
「そんな褒められると、ちょっと照れるな……///」

 あーれー? なんでさっきからうちの男子たち揃って頬そめんの? 球技大会で活躍したらモテるって、男子にモテるってこと? いやいや、おかしいだろ。あれってそんなホモホモしい噂だったの?

「あっ、ごめん。勝手に青葉君の席座っちゃってて。委員長たちが来たから、ちょっと居心地悪くてこっちに来ちゃった」

 おい田中、こいつ大人しそうに見えて、結構ひどいこと言うな。俺でももう少しオブラートに包むぞ。

 しかし、これはチャンスである……。

「いや、そのままでいいよ。っじゃあしばらく俺が田中の席座っててもいいか?」
「うん、もちろん」

 よっしゃあ! 何という神の恵みだろう。田中が座っていた席は、神崎さんの正面というプラチナシートなのである。
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