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一章 借金勇者の旅立ち
008 頬の十字傷は男のロマン
しおりを挟むしばらくそのまま待っていると、廃教会の床が“ギシッ”と軋む音がした。おそるおそる覗くと、マスクを被った男二人組が、大きな黒いカバンを抱えている。
「へっへ、かつては勇者に邪魔をされたが、まさか再びあの貴族の娘を攫うことができるとはな…。」
「今回こそは、たんまり身代金を頂くぜ!」
見るからに小物そうな誘拐犯二人は、黒いカバンのチャックをさげた。すると、縄で身体を縛られ、猿轡を口にはめられて声を出せないリーシャが姿を現した。
「傷つけんなよ。大事な金の成る実だぜ。」
男はリーシャをカバンから出して担ぎ上げ、領主の到着を待った。
「おっと…、領主様の登場だぜ。」
廃教会の入り口の前には、領主がシルバーのジェラルミンケースを携えて立っていた。
「娘を…私の愛する娘を返してもらおう…。」
「へっ、金が先だ。そのカバンを渡しな。」
「ぐぬっ…。ほら、受け取るがいい。」
領主はジュラルミンケースを誘拐犯たちへと放り投げた。誘拐犯の一人はそのジェラルミンケースを受け取り、中身の金を確かめてから肩に担いだ。
「早く娘を解放してくれ…。」
領主の懇願するのを、誘拐犯はあざ笑うかのように言った。
「はっ、馬鹿野郎が。どうせ、そこの藪に憲兵やらが待機してんだろ?安全が確保された場所に着いたら、この娘を解放してやるよ。」
誘拐犯の言う通り、万が一に備えて憲兵は藪の中で待機していた。しかし、人質であるリーシャが解放されないため、彼らは身動きができずにいた。
「っじゃあな。有り難く金だけ受け取っていくぜ。」
強盗犯たちが立ち去ろうとしたとき、彼らの後ろにさっそうと黒い影が現れた。
「約束はちゃんと守らなきゃいけないって、親に教えてもらわなかったかい?」
見かけホームレスの勇者ワタルは、誘拐犯たちの後頭部に銅の剣で会心の一撃を見舞い、誘拐犯からリーシャを奪い去った。誘拐犯二人は意識を失い、その場にへたりと倒れて伸びている。
「まぁ、僕の親はそんなこと、全く教えてくれなかったけれどね…。」
ワタルは縛られたリーシャを腕に抱えて、彼女を縛る拘束具を外してやった。
「大丈夫かい?」
「あ…ありがとう。」
「君が無事でよかったよ。」
リーシャはワタルの気遣う言葉に、少し恥ずかしそうに頬を赤らめた。
領主が駆け寄り、娘の安全を確かめた。強く抱きしめてから、ワタルに向かって深々と頭を下げた。
「ありがとう。なんとお礼を言えばいいだろうか。」
誘拐犯たちは憲兵に連行されていった。
「いえいえ、そんな大したことじゃないですよ。」
「本当にありがとう…。以前にも、勇者さまに娘を助けてもらったことがありましてね…。」
「あぁ、そんな話も聞きましたね。」
「その時は、頬に十字の傷がある勇者が助けてくださった…。どことなく、君にも似ていた気がするな。」
領主はワタルの顔をまじまじと見ながら言った。
「あぁ…それ、多分僕の兄です。」
ワタルは苦い記憶を思い出すかのように、顔をしかめた。
「えぇっ!?」
「僕の兄は、僕がまだ小さい頃に、ある日突然、『俺は勇者になる!』って言って出て行って以来音信不通です。ちなみに、頬の十字傷は緋村抜〇斎に憧れた兄が、自分でつけた傷です…。」
「……そうか。」
「はい…。」
ワタルの兄については、これ以上ワタルは何も話さなかったし、領主も尋ねようとはしなかった。
タグ:るろうに剣心 飛天御剣流
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