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17 ≪魅力≫は全てを突破する?
しおりを挟む観光ついでに街中に転がっているであろうクエストを消化しに、スターレの街を彷徨っていた。
そんな時、厳ついおじさんからはポーションと経験値をもらった。
何もしていない。
肩がぶつかって、会話が始まったと思ったら終わった。
次に見つけたのは、泣いている幼女。
茶色いおさげがなんとも可愛らしいが、その泣き声は凶悪だった。
しかし、こちらも話しかけた瞬間に満開の笑顔となり、またしてもアイテムと経験値をもらった。
なんだこれ。
多分、これが≪CPO≫の当たり前なんだな。
もしくは街中でのクエスト関係を担当した人が、水増しの為に適当なクエストを用意したに違いない。
話しかけた瞬間に終わるクエストなんて、普通じゃ考えられないからな。
きっとそうだ。
水増しクエストであれば、あとどれだけこのボーナスステージがあるか分からない。
今の時点でこの街に転がってるものは全て消化してしまいたいところだ。
まあ、焦らずのんびりいこう。
こんな簡単なクエストで大したものがもらえるわけでもないだろうし。
そうして探索を続けたところ、同じようなことが何度もあった。
「はっ、こいつをくれてやる。持っていきな」
歴戦の猛者感バリバリのお爺さんからは大剣を。
「君と出会えた奇跡に、我が家に伝わる宝を授けよう」
貴族っぽいおじさんからは多めのお金とネックレスを。
「闇が、貴方を呼んでいる」
美人なお姉さんに変装していた暗殺者っぽい人からは、二振りの短剣を。
その他、一般人のような人達からは、回復アイテムなんかの消耗品やお金を細々もらった。
ついでに言うと、大小の差はあれど全てに経験値もついていた。
お陰でレベルが1上がった程だ。
これって本当に手抜きの水増しクエストなんだろうか?
装備品に関しては性能がかなり良さそうに見えるんだけど、このカテゴリの初心者用装備の水準だとそうでもないのかな?
▽
「それ、明らかに普通じゃないですよ!」
「そうなの?」
「そうですよ! ≪初心者用大剣≫の攻撃力なんて、せいぜい20なのに、この大剣100もあるじゃないですか! 五倍ですよ五倍!」
「こちらの短剣も、拙者の≪初心者用短剣≫とは比べるべくもないでござるなぁ」
「なるほど」
リリィがハイテンションで興奮し、サンゾウが興味深そうに短剣を見つめる。
そんな二人を眺めながら、音を立てないように紅茶をいただく。
おお、美味しい。
今どういう状況なのか、順を追って説明しよう。
観光がてらにクエストを消化して回った後。
俺は一度ログアウトして、散歩を兼ねた買い出しへ出掛けた。
義務じゃない外出はそれなりに気分がいいが、やはりファンタジーな街並みに比べるとワクワクが無い。
空気も不味く感じてしまう。
帰った後は軽く仮眠して、適当な夕食。
ついでにお風呂も済ませてしまった。
そして再びログイン!
さあ何をしようかな、と思ったところでリリィからメッセージが届いた。
このゲーム、フレンドがログインするとログに表示するよう設定できる。
それで捕捉されたようだ。
『こんばんは!お姉様、もしよければご一緒しませんか!?』
メッセージですらテンションが高い。
一緒に遊んでくれるのは願っても無いことなので、快諾した。
そして、待ち合わせ場所に向かう間にサンゾウからも連絡が来たので、リリィに確認した上で、待ち合わせ場所を伝えた。
待ち合わせたのは、酒場風のカフェ。
異世界情緒を味わいながらスイーツが楽しめるらしい。
中へ入ると、オープンな席の奥の方にリリィがいた。
元気よく手を振っている。
その向かいには既にサンゾウも座っていた。
リリィの隣に座って、皆でメニューを眺める。
それなりに値段がする。
しかし、今の俺はクエストのお陰で懐が温かい。
これくらいなら問題ない。
よし、安定のイチゴタルトに決定だ。
お供は紅茶で。
試しにこのニルギリという奴にしてみよう。
思い思いに注文した後は、これからどこへ行くかの相談を始めた。
が、注文したものが届くと同時に中断。
せっかくなのでそのタイミングで、さっきの話をした。
その結果が、さっきの反応だ。
どうやら、簡単お手軽手抜きクエストなんて存在していないらしい。
「お姉様、私このゲームのことは結構調べてますけど、そんなクエスト聞いたことないです。皆それなりに苦労してクエストをクリアしてる報告ばかりです」
「拙者も、聞いたことないでござるな。実際に遭遇したクエストも聞いたこともないアイテムを要求されて、放置してるでござる」
「そうなんですね……」
二人によれば≪CPO≫におけるクエストも他のゲームと変わらないらしい。
つまり、街中を駆け回るお使いクエストだったり、要求されたアイテムを持って行ったり、指定されたモンスターを倒したり。
そういったことを要求されて、解決することでクエストクリアとなる。
じゃあ、あれはなんだったんだ?
俺は何もしていない。
挨拶をしたり、声をかけただけだ。
たったそれだけで、始まったと思ったクエストが終わった。
「きっと、お姉様の魅力でNPCがひれ伏したんですよ!」
「なるほど、それはしかり、でござるな!」
「あはは……」
普通なら否定したいところだけど、多分正解だ。
ばっちり心当たりがある。
俺のステータスとスキル。
多分、≪魅力≫を上げることでクエストやイベントをクリアする裏ルートがあるんだ。
それを偶然突破した。多分そういう事だ。
もしかしたら、≪種族スキル≫の≪魅惑≫が持つ低確率でのランダムボーナス効果も発揮していた可能性もある。
おお、初めて≪魅力≫の存在感を認識した気がする。
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