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新たな始まり

プロローグ

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 目の前の箱を開ける。
 待ちに待ったこの瞬間が来た。

 小さな箱の中には、更に小さな、ソフト。
 小さな見た目とは裏腹に、広大な世界へ俺を誘ってくれる、夢の世界への切符。
 そう、ゲームソフトだ!

「念願のVRゲームを手に入れたぞ!!!」

 どれだけ、どれだけこの時を待ち望んだことか。
 タイトルは≪カスタムパートナーオンライン≫。
 ある意味伝説のゲームだ。

 それには、悲しい理由がある。
 これは、俺が中学生くらいの時に作られたゲームだ。
 当時から既にVRゲームにハマっていた俺は、発売を待っていた。

 それまでのVRゲームが紙芝居に思える程の、圧倒的クオリティ。
 これを遊ぶためだけに俺はこの時代に生まれてきたんだと、そう思い込んでしまう程にすごかった。

 しかし、突然会社が倒産した。
 色々理由はあったと思うが、もう忘れてしまった。
 ゲームも当然お蔵入り。
 期待していただけに、絶望も大きかった。

 しかし、しかししかし!
 終わりが突然なら復活もまた突然に、再開発の報が知らされた。
 しかも同時に、βテスト参加者の募集まで!

 それはもう心が躍ったね。
 それから数年、こうして俺の元に届いたというわけだ。

 ああ、待ち遠しい。
 早くプレイしたい!

 逸る気持ちを抑えて、ソフトを箱に戻す。
 ソフトが届いただけで、まだ遊べるわけではない。
 サービス開始は明日の正午。
 慌てても時間の進みは早まらない。
 それまでに万全の用意をしておかないといけない。

「……光莉ちゃんも、プレイしたかっただろうな」

 ふと、思い出してしまった。
 中学時代からの、数少ないゲーム友達。
 よく遊び、よく喧嘩し、よく遊んだ。
 一緒にCPOの発売を待ち望み、絶望した。

 そんな彼女はもうこの世にいない。
 何年か前に、事故で死んでしまった。
 
 その時には俺は遠くに引っ越していたから、あまり現実感はなかった。
 オンラインゲームで仲良かった奴が突然来なくなったような、そんな感じだ。
 それでも、悲しかったのは間違いない。
 出来れば、CPOも一緒にプレイしたかった。

「……明日に備えて今日は寝よう」

 箱を机の上に置き、ベッドへ潜り込む。
 あの子の分まで楽しもう。
 きっと、悲しんでゲームに手がつかなかったら怒るだろうからな。

 
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