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268 滑り込みと独演会
しおりを挟む「ただいまー」
「たっだいまー!」
今日は珍しく玄関から帰宅する。
おろし金に乗らずに、自力で空を全力疾走して帰って来た結果だ。
一歩ごとに瞬間移動をしたお陰で、なんとか12時までに間に合った。
街中で空に駆け上がったせいで目立ってたけど、それは仕方がない。
12時までに帰宅するのが最優先だったからな。
玄関のすぐ向こうにはリビングが広がっている。
そこにはミルキーもミゼルも葵も、皆揃っていて出迎えてくれる。
石華やおろし金も、思い思いに寛いでいる。
何でもない事だろうけど、ただいまを言っておかえりなさいが返って来るのは、なんというか……いい。
たったそれだけのことで幸せな気分になる。
「時間ギリギリでしたね。何かあったんですか?」
「色々あってね。タマが大活躍だったよ」
「タマちゃんが活躍するようなことって、ほんとに何があったんですか?」
ざっくりと説明すると、ミルキーが微妙な顔で喰いついた。
今度は何に巻き込まれたのか、と顔に書いてある。
「私も是非聞きたいですわ」
「私も、聞きたい……!」
「タマはさいきょーだからね! 話してあげる!」
ミゼルと葵まで興味津々だ。
こっちの二人はすごいワクワクした顔をしている。
純粋に楽しい話を期待している感じかな。
『おっ、それは楽しみじゃな。タマは嘘偽り無く最強に相応しいからの、さぞ爽快な話なんじゃろう。の、おろし金先輩よ』
「キュル!」
石華はおろし金を撫でながらのんびりと耳を傾けている。
先輩って、確かにうちのペットだとおろし金が一番の古株だけど。
女王だった割に腰が低い。
女王だったからこそ、器がでかいのかもしれないが。
「でねでね、急にシクラメンがモグラにがっとやろうとしたからタマがシュバッ、バキッ!! ってやって、シャー! って威嚇したの!」
タマが元気よくみんなに説明する。
相変わらず勢いがすごい。
俺は見てたから大体は理解出来るけど、みんなは分かるんだろうか。
なんて心配になったものの、皆楽しんで聞いているようだ。
「タマちゃん、すごいですわ!」
「えっへん!」
ミゼルなんかは相変わらず目をキラキラさせている。
特にタマが増殖した辺りでは、大興奮だった。
「凄すぎ……! 私にも出来ないかな」
「うん、やっぱりとんでもないですね」
『はっは、やはり期待通りじゃったな。のう、おろし金先輩』
「キュルル!」
ミゼル以外はなんだろう。
葵は対抗意識に燃えてる? ミルキーは呆れてる。
石華は笑ってるし、おろし金は多分尊敬してる。
聞いた感じでは、タマは≪滅魔双竜法≫で大量増殖したようだ。
あのスキルの効果は二人に増える。
効果が1000倍されれば、二千人まで増殖出来ることになる。
なにそれ怖い。
増えた分、能力値も全て分割される。
が、たったそれだけだ。
2000分の1されたところで、その辺の奴らのステータスより遙かに高い。
数も多い上に強さも段違い。
やっぱりうちのタマは最強だな。
間違いない。
ただ、ユニークスキルは割と自由度が高いのも分かってる。
俺くらいぶっ飛んでるのがあってもおかしくないし、油断は出来ない。
防御力が高いほど与えるダメージが増加する武器も純白猫が作ってたから、あれで殴られたら下手したら死ぬ可能性もある。
タマの話を聞きながら、良さそうなスキルをいくつか取得しておく。
生憎≪創造者≫にはほとんど無かったが、その前の≪異端者≫には豊富だ。
今すぐ欲しいユニークスキルも少ないし、貯めておいた基本ポイントをいくつか割いておく。
ついでにユニークスキルも取っておくか。
半透明のウインドウをつつく。
効果の少ないパッシブスキルが取得可能一覧に沢山出ていた。
最近ユニークのスキルリストあまり開いてなかったからなぁ。
……よし、いいのがとれた。
パッシブスキルは俺の持つユニークスキルと相性がいい。
ステータスのおかしな数値も、その辺りの相乗効果の結果だ。
例えば今取得した≪ナガマサ流防御術≫は、受ける物理ダメージを-5%する効果を持つ。
これが100倍されれば、-500%される。
多分最低保障の1は受けるだろうけど、たったの1。
純白猫が葵用に作ってくれた≪裂断≫でもダメージを受けない。
どれだけダメージが増えようが、最終的な数値から-500%されれば1だ。
これで物理も魔法も1しか受けない。
スキルを共有してる俺とタマとミルキーは、ほぼ無敵に近い。
心配ではあるが、葵はムッキーもいるし実力もついた。
独り立ち出来るように応援してあげないといけない。
過保護は良くないと、ミルキーにも怒られたことがある。
けど、ミゼルのことは、ちゃんと守りたい。
今日で少しレベルを上げただろうけど、家族の中では多分一番か弱い。
常に一緒にいられたらそれが一番だけど、そうもいかない。
四六時中は張り付いてるのは、ミゼルだって嫌がることもあるだろうからな。
一番いいのは、俺とミルキーを繋いでいるこの指輪と同じものを、ミゼルにも贈ることだ。
結婚も決まったわけだし、タイミング的にも丁度良い。
一体何の素材を使ったんだっけ……?
確か、ゴロウに作ってもらった筈だ。
なるべく早めに思い出して、用意しないと。
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