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156 収穫物と二度寝

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 昭二は笑って帰って行った。
 いつもすみませんほんとに。
 この場に残っているのは俺、タマ、ミルキー、モグラ、金剛、タマだ。

「すごいお城だねー。流石ナガマサさん、家を買ったと思ったらもうお城かぁ」
「私もびっくりです。でも、今回は石華さんですから……連れてきたのはナガマサさんですけど」
「ですよねー」

 ――あれ、今タマが二人いなかったか?
 何度か瞬きをしてからよく見てみる。
 俺、タマ、ミルキー、モグラ、金剛。おかしくないな。
 見間違いか? 

『騒がせてしまったようじゃのう。すまぬな』
「いや、放牧スペースは好きにしてもらって良いつもりだったから、俺が周りに説明してなかったのがいけなかったんだ。責任者は俺なんだし、石華は気にしなくて良いよ」
「ダメなモジャはモジャ毟りの刑に処すモジャ」
「やめてくださいモジャ」

 石華に申し訳なさそうな顔をさせてしまった。
 石華を連れてきたのも、この村で過ごすように決めたのも俺だ。
 きちんと気を回していなかった俺が悪い。
 今度からはちゃんと気を付けるからモジャは毟らないでくれ。

『では散って行ったご主人様のモジャに感謝するとしよう』
「散ってないから。あとご主人様はやめよう」

 この女王様は器が大きいだけじゃなくノリもいい。
 タマがテイムのことをペットになることだと言った時から、ずっとご主人様呼びだしな。
 今まで女王様として君臨してたら、そんな扱い耐えられないんじゃないのか?

 まったく、ペットなんて人聞きの悪い。
 おろし金みたいな完全な動物だったら気にならないが、金剛は女性型のモンスターだ。
 かなり危ない。
 テイムのシステム的な説明としては間違ってないけど、テイムした意味とか考慮したら語弊しかないからな!
 
『さて、ご主人様、これは今日の分じゃ』
「今日の分? これは何?」

 金剛が宝石みたいなものを差し出してきた。
 今日の分って何のことだ?
 何故これを俺に差し出してるのかが分からない。

『しゅうかくぶつ(?)という奴じゃな。ご主人様がこの地をわらわの領地として指定した時に、この収穫物を毎日献上するよう、使命をこの地より授かったのじゃ』
「領地? ――ああ」

 昨日の夜に金剛が放牧スペースに戻る時に、機能を試した。
 放牧スペースの機能は、コインを登録してそのモンスターを飼育出来る。
 飼育しているモンスターからは毎日素材が収穫出来る。

 あとは俺がコインを管理しなくても、許可した範囲で自由に行動できるらしいからそうしたんだよな。
 知能の高さによって幅は変わるけど、放牧スペースの管理もある程度任せられるって説明に書いてあったし。

 そうか、収穫物か。
 羊のモンスターでも飼おうと思ってたのはそれがあったからなんだよな。
 石華が人型だから完全に忘れてた。
 モンスター側からはそんな風に解釈されるんだな。

 自分から収穫物を渡してくれるモンスターっていうのもなんか珍しい気がする。

「それじゃあ有難くもらうね」
『うむ、わらわの収穫物じゃからのう、大事に使うがよいぞ』
「女王様の収穫物……ゴクリ」
「意味深。っていうかゴロウちゃん、いつからいたの」
「今だよ。おはおはよー」

 いつの間にか混じっていたゴロウが何かに反応していた。
 なんだその反応は。
 みんなに挨拶をして回っている。

「金剛さんのどこから収穫されたのか、っていうのはちょっと気にはなるね」
「サモ・アリーナン」
「誰ですか、それ。変な事言ってないで、モグラさんは服着てくださいよ、もう!」
「あはは、ごめんごめん」

 モグラとゴロウは変な会話をしていたところをミルキーに怒られていた。
 モグラは辛うじて下着姿だからな。
 寝る前に履いてたみたいで良かったよ。

 それにしても、どこから収穫されたか、か。
 そう考えると手の中のこれが、なんか物凄く生々しく感じてくる。

『ご主人様も、わらわのどこから収穫されたか気になるかのう?』
「なっ――!?」
「ナガマサさん、どうかしました?」
「いや、なんでもないよ」
『フフッ』

 金剛は妖しく笑っている。
 この反応、俺にだけ聞こえるように言ったな。
 悔しい、でも少し気になってしまうのは仕方のない事だと、弁明したい。
 させてほしい。

『なんてのう。起きたら寝床に落ちておったわ。わらわの身体から剥がれ落ちたりしたものではないから安心するのじゃな』
「はいはい、ありがとうな」

 器は広いけど、どうやら悪戯心もそれなりにあるらしいな。
 ドキッとするから止めてほしい。
 さぁ二度寝だ二度寝!

 二度寝して起きたら12時を回っていた。
 寝過ぎた気もする。
 昨日はしゃぎすぎた影響かな。

 俺が起きた時にはみんな起きていて、リビングで和やかに談笑していた。
 こうしてみると男共は普通だ。
 とても昨日全裸で村の中を疾走してた奴らとは思えないな。
 お酒って怖い。
 
 ミルキーの作ってくれたスープとパンを食べた。
 美味しかった。

 さて、マッスル☆タケダとゴロウに素材を買い取ってもらわないとな。

 二人に素材を見せると、大興奮で喰いついてきた。
 前回の宝石で結構儲けたみたいだな。
 全部ではないが、かなりの量買い取ってくれた。

 これで素材だけじゃなくて、強い武器や防具が市場に流れる。
 そうしたら二人の懐は潤うし、プレイヤー達は強くなる。
 いいことずくめだ。
 PKまで強化されるかもしれないが、そこはそれ。
 二人なら変な相手に武器は売らないだろう。

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