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150 高価買取と無明の城

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 今日はこれから、騎士狩りの続きだ。
 家に帰るとミルキーが起きていた。
 朝はそんなに弱くないのかな。

「ただいまー」
「ただいま!」
「おかえりなさい。お出かけしてたんですか?」
「うん、畑の方にね。早速色々植えてきたよ」
「そうなんですね。今度からは私もお手伝いします」
「ありがとう。ご飯食べたら出掛ける準備するね」
「朝ごはん用意できてますよ」
「おお、すごいね。ありがとう」

 朝食はパンとサラダ。
 この世界では栄養は気にしなくても良い。
 脳が空腹状態を長く感じることが問題だから、満腹感さえ感じられたらそれで大丈夫だ。

 だけど村で買ったパンだけじゃなく、サラダまで用意してくれていた。
 色取りまで考えてあるのがすごい。
 俺も料理を覚えていこう。

 この野菜は少し前に、昭二や近所のお婆さんが持って来てくれたそうだ。
 何かお返しを考えておかないと。

「タマはおたまの守護者」

 朝食を食べ終えたタマがおたまを抱えて遊んでいた。
 よしよし、これ食べたらすぐ出かけるからな。
 ちょっと待っててくれ。

 食事が終われば、おろし金に乗ってストーレの街へ向かう。
 昨日拾ったアイテムの精算の為だ。

 城の訓練場に降りたが、パシオンの姿はない。
 静かで良いけど、ミゼルが隣の家に住んでるって知ったらどうなるんだろうか。
 とりあえず突撃してくるのは間違いないだろうな。

 今回はギルドでの買い取りをしてもらう。
 理由は、以前取った≪買い取り額増大≫もあるし、こっちの方が高くなるじゃないかと思ったからだ。
 宝石なんかはギルドの方でも割と高値だったし。

「冒険者ギルドへようこそ。ご用件をお伺いします」
「素材の買い取りをお願いします」
「買い取りですね。それでは買い取らせていただくものを選択してください」

 取引ウインドウにアイテムを放り込んでいく。
 一気に全部は売らずに、まずは半分の数を売る。

 全部で約1.3Mc。
 いきなりかなりの額になった。
 これは、≪買い取り額増大 Lv3≫の効果で+6%されるところが100倍されてこうなったらしい。
 つまりは+600%で、7倍。

 元の金額は19万くらいだな。
 高く売れそうな≪宝石の心臓≫は全部確保してあるから、実際はもっと稼げてる筈だ。

「この金額でよろしいですか?」
「大丈夫です」
「それでは買い取り致します。ありがとうございました」

 7倍されてて文句があるはずもない。
 承諾すると手持ちのお金が一気に増えた。
 買い取り額が増えるとギルドの支出的にどうなるかと思ったが、特に影響はないようだ。

 システム的に増えるだけで、ギルドの負担が増える訳じゃないんだな。
 その辺りはゲーム的だけど、そうじゃなかったらギルドの経営が破たんするか、物価がとんでもないことになりそうだからむしろ助かった。

 スキルレベルを確認すると、今ので≪買い取り額増大≫のレベルがMAXになっていた。
 よしよし。
 これで+2000%だ
 同じ流れでもう半分も売却する。
 買い取り金額は約4Mcにもなった。
 商人系スキルはとんでもなく便利だな。

 戦闘系のスキルは持て余してるし、やっぱり便利系のスキルを優先しよう。

 ミルキーと相談して、今回の儲けを分配した。
 5.3Mの内約半分の2.7Mを我が家の予算に。
 これは家や設備の拡張なんかの、必要経費に充てる。

 残りの2.6Mは更に半分にして俺とミルキーで分ける。
 これが個人的なお金になる。
 趣味のものや個人的なものは自分で負担するルールだからな。

 タマも入れて三等分で良いと言ってくれたが、タマは俺の相棒だし必要なお金は俺が出せば良い。
 そんなに物も欲しがらないしな。
 その代わりと言ってはなんだけど、畑に撒いた結晶の分はチャラにしてもらった。

 思ったよりもとんでもない金銭効率だった。
 便利だけど、ギルドばかりに売るんじゃなくてプレイヤーにも流して行きたいところだ。
 特にマッスル☆タケダやゴロウには色々お世話になってるからな。
 世の中お金だけど、全てがお金じゃない。
 個人的にお金より優先することはあるに決まってる。
 
 ついでに簡単なお買い物を済ませたら、いよいよ≪輝きの大空洞≫へ向けて出発だ。
 国王からお肉をもらってご機嫌なおろし金に乗って飛び立つ。
 目的地まではあっという間だ。

 特に障害も無く、≪ダイヤモンドクイーン≫の待つ謁見の間へとやってきた。

「おはようございます」
「モジャようございます!」
『遅かったのう。わらわは待ちかねたのじゃ』
「すみません、色々用事があったもので」

 畑仕事とか、昨日の精算とか。
 それにしても、口調があんまり昭二と変わらないな。
 女王キャラの喋り方と老人の喋り方って似てるみたいだ。

『まぁ、彼奴の討伐さえ成してくれれば良いのじゃ。早速向こうへ行くか?』
「はい、お願いします」
『くれぐれも、油断するでないぞ』
「はい」

 女王の激励の言葉を受けながら、俺達は≪無明の城≫へ飛ばされた。
 相変わらず暗い雰囲気の場所だ。
 今日も張り切って狩るぞ!

「よし、それじゃあ今日も三人で一緒に走り回ろう」
「いえっさー!」
「分かりました」

 ばらけるのも良いが、ここのモンスターは割と強いし多才だ。
 ほぼ一撃で倒せると言っても何が起こるか分からないし、一緒に行動した方がいいだろう。

 アイテムがばらけるから俺以外だと拾うのが面倒というのもある。
 拾う作業が地味に時間かかるからな。

 少しずつの時間でも合計したら馬鹿に出来ない。
 むしろ俺達の場合だと、戦闘時間より拾う時間の方が長くなってもおかしくない。

 通路の奥から宝石の騎士達が姿を現した。
 6体か。
 丁度一パーティーってところだな。
 鴨がネギと土鍋とカセットコンロ背負って来やがった!

「行けタマ! ミルキー! 騎士達を狩り尽くすぞ!」
「あいあい! 心臓寄越せー!」
「はい!」

 二人が蹴散らした後のアイテムを≪強欲(グリード)≫で回収する。
 そして走り出す。
 今日も俺はアイテム回収係だ。
 危なくなればいつでも介入出来るように気を付けてはいるけど、きっと出番はないだろう。

 戦闘に参加できなくても俺の中では収穫作業だし、問題ない。
 二人が刈り取って、俺が回収。
 見事な役割分担だ。
 合計500個まで何セットでいけるかな。

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