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139 押しかけ王女とハーブ
しおりを挟むお隣にミゼルが引っ越してきていた。
突然すぎてびっくりする。
詳しい話を聞いてみると、俺との結婚を実現させるための作戦だそうだ。
積極的過ぎてやばい。
「我が王家は最前線で戦う使命があるので、王族には決断力と行動力が求められるのですわ」
とはミゼルの台詞だ。
なんかどこかで聞いた覚えがある。
これも言った覚えがあるが、それは他の機会に活かしてほしい。
嫌っていう訳じゃないけどびっくりするから。
それに、この件がパシオンの耳に入ればまたうるさくなりそうだ。
それに関しても、任せましたわ、なんて謎の信頼を置かれてしまった。
俺だってあのシスコンの相手をするのは大変なんだけどな。
今朝から引っ越し作業をしているようで、出汁巻やノーチェの他に何人かの騎士が出入りしていた。
ご苦労様です。
「オレも護衛として近くに住むんでよろしくっす」
「そうなんですか。よろしくお願いします。この家じゃないんですね」
「男なんで同じ建物は駄目っすよ。なんで、夜の間にミゼル様に何かあったらお願いします」
「間に合えばね」
日中は出汁巻玉子が護衛としてついて、夜の間は近くの宿に泊まるらしい。
大変だな。
でも城務めでパシオンについてるよりは楽かもしれない。
ミゼルが完全に一人になるかと言えば、そうでもないらしい。
ノーチェと、以前≪将軍クワガタ≫との決戦時に一緒に遊撃を担当したマフィーが護衛をするそうだ。
「この村は来たことあるんですか?」
「あるんすけど、騎士団に入ってからは全然っすね。ここは近くにダンジョンがあるんで、籠るのに便利なんすよ」
「ダンジョン。楽しそうですね」
「難易度的にはそこそこっすけど、素材がいい値段で売れるんすよ。製薬か何かに使うみたいっすね」
出汁巻にダンジョンも含めて周辺の情報をもらう。
為になるなぁ。
熟練のプレイヤーの経験や情報はすごく有難い。
引っ越しの途中らしいし邪魔するのも悪い。
出汁巻との話を切り上げる。
ミルキーは、ミゼルと楽しそうに話していた。
結構仲が良さそうだな。
「ミルキー、ちょっと畑の方を見てきても良い?」
「あっ、はい。じゃあ私も」
「ちょっと仕様を見てくるだけだし大丈夫だよ。ゆっくりしてて」
「ではお言葉に甘えます。いってらっしゃい」
「いってらっしゃいませ」
「いってきます」
「いってきまーす!」
ミルキーを残してミゼルの家を出た。
他の家への挨拶もついでに済ましてしまうか?
すぐに戻ってくるつもりだし、ミルキーも揃ってた方がいいか。
家と併せて買った畑へと向かう。
畑エリアはこの村の半分以上を占める。
広いな。だけど村が十分広いから、畑が多くても問題はないようだ。
その中でも俺達の畑は少し奥の方にあった。
看板が立っている。
≪ナガマサの畑≫と書かれている。好きに名前を変えられるらしい。
初期設定がプレイヤーネームになるんだな。
「モジャマサ、タマの好きに変えてもいい?」
「おお、いいぞ」
「やったー!」
タマが看板に向かって指を振るう。
入力が終わり看板が一瞬光って元通りになった。
≪モジャ畑≫。
なんか変な物生えてきそうだな。
畑は植えられるものを持ってきて登録すれば、畑に植えられるようだ。
植えられるものって、変な言い方だな。
基本的に地面に根付くものなら大体いけるっぽい。
純粋な野菜や植物じゃなくても、植物型モンスターもいけるみたいだな。
面白い。
土の状態なんかもいじれるみたいだ。
今は土レベル1で栄養状態は普通。
広さは10万cつぎ込んで2段階拡張してあるから、20m×30mの長方形だ。
こうして見てみると結構広い。
土を良くする為には肥料を混ぜたり、耕したりする必要がある。
植える物によってはなんか盛り上がってる部分――畝(うね)というらしい――を作ったりもしないといけない。
せっかく広げたんだから全部有効的に使いたい。
色々思い浮かんでは消えていく。
ああ、楽しみだな。
家に戻る途中にお店も覗いてみた。
畑に植える物が売ってないかどうか見たかった。
こじんまりとした商店がある。
中には愛想の良い笑顔のおじさんがいた。
「すみません」
「はいいらっしゃい。何をお求めかな?」
「昨日この村に越してきたんですけど、畑に植えられるようなものってありますか?」
「おお、それはそれは。バーリルへようこそ。それなら色々あるよ」
おじさんは色とりどりの植物を取り出した。
鉢植えに入っている植える用のものだ。
≪薬草≫に、緑色の≪グリーンハーブ≫、白色の≪ホワイトハーブ≫、青色の≪ブルーハーブ≫、赤色の≪レッドハーブ≫。
どれもポーションの素材になるらしい。
「どれも育てればうちでも買い取るし、どこでも売れると思うよ。ポーションは今のご時世、飛ぶように売れるからね」
「なるほど」
「ただ初めてなら、薬草とグリーンハーブとレッドハーブがおすすめだ。ホワイトハーブとブルーハーブは育成が難しい上に、品質が低いとろくなポーションが出来ないからね」
「丁寧にありがとうございます。じゃあその三つを十株ずつください」
「はいよ、毎度あり!」
いやぁ、良い買い物をしたな。
ミルキーと合流したら残りの挨拶を済ませてしまおう。
あとはお金稼ぎと、何か植えられそうなものも手に入れたい。
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