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126 沈黙と支援剥がし
しおりを挟むジュエルマン狩りは順調だ。
あっちへうろうろ、こっちへうろうろしながらジュエルマン達を粉砕していく。
女神のエフェクトが花火をバックに踊る場面を見たくらい、レベルもぽんぽん上がっている。
「ナガマサさん達がとんでもないのは知ってたけど、支援までとんでもないとは思わなかったよ」
「色々ありまして」
「深くは聞かないよ。あんまり詮索するのはマナー違反だし」
「ありがとうございます」
二層では時々触手も混じる。
俺達が相手をすれば余裕だけど、せっかくだしモグラ達にも戦ってもらうことにする。
支援もあるし、ダメージは俺が肩代わりするし大丈夫だろう。
「モジャー、ゲソが向こうにいるよー」
「ありがとうタマ」
「わーい!」
タマが≪古代異界烏賊の足≫の存在を教えてくれた。
索敵に引っかかったらしいな。
撫でてやると両手を挙げて喜んでいる。
モグラもゴロウも、丁度相手していたジュエルマンを片づけたところで、準備は出来ているようだ。
「モグラさん、ゴロウさん、話してた足がその先にいるそうなので心の準備をお願いします」
「オッケー、いつでもいいよ」
「任せとけい。にゃーこは後方支援だ」
「にゃあ」
にゃーこが一声鳴いたらゴロウの武器がダークなエフェクトに包まれる。
なんとこのにゃーこ、支援型の相棒らしい。
ステータスアップや、属性を武器に乗せる≪属性付与≫のスキルを持っていて、各種属性をつけられる。
勿論ノーコストというわけではないから、一つの属性で苦手な相手がいない狩場でならすごく便利だ。
今は足に与えるダメージを稼ぐ為に闇属性を付与したみたいだ。
「それじゃあ行こうか。強敵だと思うとわくわくしてくるね」
「危なくなったらすぐ介入しますから」
「うん、その時はお願いね。頑張ろうゴロウちゃん」
「おうさ」
慎重に先に進むと、いた。
先端へいく程細くなっているが、太いところは50cmくらいはありそうだ。少しだけ平べったい。
地面から3m程生えてうねうねしている。
結晶で覆われていて、触手の片側には吸盤のようなぼこぼこが確認できる。
周囲には何体かのジュエルマンもうろついている。
「あれかぁ。見たまんまゲソだね。クリスタル製だけど」
「スルメ食べたい」
「にゃあ」
モグラ達は初めて≪古代異界烏賊≫を見て、呑気なコメントをしている。
ゴロウの言葉ににゃーこが返事しているようだが、にゃーこもスルメを食べたいんだろうか。
「タマ、ゲソを連れてきてくれ。それ以外は片づけていいぞ」
「らじゃー! しゅばっ!」
タマへ指示を出すと、擬音を口にして飛び出していった。
≪五体解放≫の瞬間移動と遠距離攻撃を駆使して、周囲のジュエルマンは一瞬で木端微塵だ。
ドロップアイテムは後で回収しよう。
タマは触手が動き出した瞬間に俺達との間に移動した。
触手がある程度近づくのを待ってから俺の後ろに跳ぶ。
これで触手はこっちへ突っ込んでくる。
自己バフを終えたモグラ達が前へ出れば、そのまま戦闘が開始出来る手筈だ。
「やっべー、すごい迫力!」
「こわっ! なんか超昔の怪獣映画であんな動き見たことある!」
地面に空いた穴から縦に直立したまま迫ってくる謎移動に、モグラもゴロウも大興奮だ。
二人が前に出たところで、支援と≪誇りの献身≫を掛け直しておく。
万が一戦闘中に効果時間が切れたら大変だからな。
「来てる来てる! 行くよゴロウちゃん! テンペストスマむぐ!?」
「威圧感やべぇ! ユニオもごご!?」
「あれ」
触手が近接スキルの射程に入ったらしい。
二人がスキルを発動しようとした瞬間、触手が光った。
そんなに激しい光でもない。
ピカッとだ。
モグラとゴロウの言葉が、まるで口を塞がれたように途中で途切れる。
何が起きた?
「多分沈黙の状態異常ですね」
「あ、ほんとだ。何か変な吹き出しが二人から出てる」
ミルキーが教えてくれたところで、そのまま戦闘が始まった。
触手はそれ以上穴から出てくることはないが、3mもあればその身体をしならせて振り回すだけで攻撃になる。
攻撃は激しいが、今の二人はAgiが1000も上がっている。回避に専念すれば余裕はありそうだ。
時々掠ったりしたダメージが俺の方へ流れてくる。
このスキルはとっておいて正解だった。
モグラが回避の合間に緑色の液体を取り出して飲んだ。
あれは確か、状態異常回復のポーションだったな。
「ぷはっ、まさかいきなり沈黙とはむごご!」
「むぐぐ」
「もご」
喋り出したと思ったらまた沈黙になった。
二人と一匹の頭上には≪・・・≫が書かれた小さな吹き出しが浮かんでいる。
あれが沈黙を示すアイコンなんだろう。分かりやすい。
にゃーこも沈黙になるんだな。
沈黙を解除するのは諦めて通常攻撃で倒すことにしたらしく、二人は剣での攻撃を繰り出していく。
こうして見てると、やっぱりモグラの動きはいい。
ステータス的に大差ないはずのゴロウばかりが攻撃を受けている。
この辺りはVRゲームだからこそだよな。
ステータスが全てじゃないっていう。
「……おっ、自然に解除された。この調子ならいけそもごごごご」
「むぐぐ」
「もご」
モグラの沈黙が解けたと思ったら、また沈黙にかかっていた。
沈黙を発生させるスキルはかなり短い間隔で発動しているらしいな。
今までかかったことがなかったから、気付かなかった。
「もごっ!?」
「もごご!!」
触手の先端が怪しく光ったと思ったら、モグラとゴロウの動きが急に止まった。
何かに驚いているような顔をしている。
そんなゴロウ目掛けて、触手が迫る。
直撃コースだけどダメージは俺が引き受けられるし大丈夫だろう。
――紐が消えてる!?
「えいっ!」
「――!!」
俺がスキルを掛け直したのと、タマが結晶剣で触手をぶった切り、ミルキーが≪裂空指弾≫でぶち抜いたのはほぼ同時だった。
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