上 下
130 / 338

126 沈黙と支援剥がし

しおりを挟む

 ジュエルマン狩りは順調だ。
 あっちへうろうろ、こっちへうろうろしながらジュエルマン達を粉砕していく。
 女神のエフェクトが花火をバックに踊る場面を見たくらい、レベルもぽんぽん上がっている。

「ナガマサさん達がとんでもないのは知ってたけど、支援までとんでもないとは思わなかったよ」
「色々ありまして」
「深くは聞かないよ。あんまり詮索するのはマナー違反だし」
「ありがとうございます」

 二層では時々触手も混じる。
 俺達が相手をすれば余裕だけど、せっかくだしモグラ達にも戦ってもらうことにする。
 支援もあるし、ダメージは俺が肩代わりするし大丈夫だろう。

「モジャー、ゲソが向こうにいるよー」
「ありがとうタマ」
「わーい!」

 タマが≪古代異界烏賊の足≫の存在を教えてくれた。
 索敵に引っかかったらしいな。
 撫でてやると両手を挙げて喜んでいる。
 モグラもゴロウも、丁度相手していたジュエルマンを片づけたところで、準備は出来ているようだ。

「モグラさん、ゴロウさん、話してた足がその先にいるそうなので心の準備をお願いします」
「オッケー、いつでもいいよ」
「任せとけい。にゃーこは後方支援だ」
「にゃあ」

 にゃーこが一声鳴いたらゴロウの武器がダークなエフェクトに包まれる。
 なんとこのにゃーこ、支援型の相棒らしい。
 ステータスアップや、属性を武器に乗せる≪属性付与≫のスキルを持っていて、各種属性をつけられる。
 勿論ノーコストというわけではないから、一つの属性で苦手な相手がいない狩場でならすごく便利だ。
 今は足に与えるダメージを稼ぐ為に闇属性を付与したみたいだ。

「それじゃあ行こうか。強敵だと思うとわくわくしてくるね」
「危なくなったらすぐ介入しますから」
「うん、その時はお願いね。頑張ろうゴロウちゃん」
「おうさ」

 慎重に先に進むと、いた。
 先端へいく程細くなっているが、太いところは50cmくらいはありそうだ。少しだけ平べったい。
 地面から3m程生えてうねうねしている。
 結晶で覆われていて、触手の片側には吸盤のようなぼこぼこが確認できる。
 周囲には何体かのジュエルマンもうろついている。

「あれかぁ。見たまんまゲソだね。クリスタル製だけど」
「スルメ食べたい」
「にゃあ」

 モグラ達は初めて≪古代異界烏賊≫を見て、呑気なコメントをしている。
 ゴロウの言葉ににゃーこが返事しているようだが、にゃーこもスルメを食べたいんだろうか。

「タマ、ゲソを連れてきてくれ。それ以外は片づけていいぞ」
「らじゃー! しゅばっ!」

 タマへ指示を出すと、擬音を口にして飛び出していった。
 ≪五体解放≫の瞬間移動と遠距離攻撃を駆使して、周囲のジュエルマンは一瞬で木端微塵だ。
 ドロップアイテムは後で回収しよう。

 タマは触手が動き出した瞬間に俺達との間に移動した。
 触手がある程度近づくのを待ってから俺の後ろに跳ぶ。
 これで触手はこっちへ突っ込んでくる。

 自己バフを終えたモグラ達が前へ出れば、そのまま戦闘が開始出来る手筈だ。

「やっべー、すごい迫力!」
「こわっ! なんか超昔の怪獣映画であんな動き見たことある!」

 地面に空いた穴から縦に直立したまま迫ってくる謎移動に、モグラもゴロウも大興奮だ。
 二人が前に出たところで、支援と≪誇りの献身≫を掛け直しておく。
 万が一戦闘中に効果時間が切れたら大変だからな。

「来てる来てる! 行くよゴロウちゃん! テンペストスマむぐ!?」
「威圧感やべぇ! ユニオもごご!?」
「あれ」

 触手が近接スキルの射程に入ったらしい。
 二人がスキルを発動しようとした瞬間、触手が光った。
 そんなに激しい光でもない。
 ピカッとだ。

 モグラとゴロウの言葉が、まるで口を塞がれたように途中で途切れる。
 何が起きた? 

「多分沈黙の状態異常ですね」
「あ、ほんとだ。何か変な吹き出しが二人から出てる」

 ミルキーが教えてくれたところで、そのまま戦闘が始まった。
 触手はそれ以上穴から出てくることはないが、3mもあればその身体をしならせて振り回すだけで攻撃になる。
 攻撃は激しいが、今の二人はAgiが1000も上がっている。回避に専念すれば余裕はありそうだ。
 時々掠ったりしたダメージが俺の方へ流れてくる。
 このスキルはとっておいて正解だった。

 モグラが回避の合間に緑色の液体を取り出して飲んだ。
 あれは確か、状態異常回復のポーションだったな。

「ぷはっ、まさかいきなり沈黙とはむごご!」
「むぐぐ」
「もご」

 喋り出したと思ったらまた沈黙になった。
 二人と一匹の頭上には≪・・・≫が書かれた小さな吹き出しが浮かんでいる。
 あれが沈黙を示すアイコンなんだろう。分かりやすい。
 にゃーこも沈黙になるんだな。

 沈黙を解除するのは諦めて通常攻撃で倒すことにしたらしく、二人は剣での攻撃を繰り出していく。
 こうして見てると、やっぱりモグラの動きはいい。
 ステータス的に大差ないはずのゴロウばかりが攻撃を受けている。

 この辺りはVRゲームだからこそだよな。
 ステータスが全てじゃないっていう。

「……おっ、自然に解除された。この調子ならいけそもごごごご」
「むぐぐ」
「もご」

 モグラの沈黙が解けたと思ったら、また沈黙にかかっていた。
 沈黙を発生させるスキルはかなり短い間隔で発動しているらしいな。
 今までかかったことがなかったから、気付かなかった。

「もごっ!?」
「もごご!!」

 触手の先端が怪しく光ったと思ったら、モグラとゴロウの動きが急に止まった。
 何かに驚いているような顔をしている。
 そんなゴロウ目掛けて、触手が迫る。
 直撃コースだけどダメージは俺が引き受けられるし大丈夫だろう。
 ――紐が消えてる!?

「えいっ!」
「――!!」

 俺がスキルを掛け直したのと、タマが結晶剣で触手をぶった切り、ミルキーが≪裂空指弾≫でぶち抜いたのはほぼ同時だった。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました

福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。 現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。 「君、どうしたの?」 親切な女性、カルディナに助けてもらう。 カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。 正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。 カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。 『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。 ※のんびり進行です

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...