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124 シスコンと説得
しおりを挟むがっつりしっかり稼ぎたいということで、俺達は飛んで行く為に城へやって来た。
歩いてもいいんだけど、普通に歩いて行くとゲームなのに数時間は確実にかかるからな。
野営したり、近くの町や村に寄るのが普通らしい。
日帰りで行ってたのは普通じゃなかったのか。
城へ到着した。門では少し待ったが、モグラとゴロウも入ることが出来た。
モグラが言うには≪王家の紋章≫が無くても入ること自体は出来るらしい。
ただ、結構待たされる上に移動はかなり制限されるとかで驚いている。
「良く来たな、ナガマサよ。今日も北の山脈か?」
「おはようございます。ええ、仲間と一緒に行こうと思います」
「おはよーぱしおうじ!」
「おはようございます」
「モグラです」
「ゴロウとにゃーこです」
「にゃあ」
城内にはいつも通りパシオンがいた。
紹介しながら後ろを見ると、モグラとゴロウが挨拶をした。
ゴロウはにゃーこの脇を抱えて、いつものぶら下がり状態で見せつけている。
これでも一応王族なんだけど失礼にあたらないのか?
「そうか。タマも元気なのは良いが、≪ぱしおうじ≫とはまた変な呼び方だな」
「えー、それじゃあばもがもがが」
「お気になさらず」
タマがまたバカ王子と言いそうになるのを阻止した。別に言ってもいいけど変に機嫌を損ねても面倒なんだよな。
ただでさえミゼルの件でいつ絡んで来てもおかしくないのに。
「……まぁ良い。しかしこれはまた見事な毛だな。ははは、カーペットよりも良い手触りだ」
意外なことに、パシオンはにゃーこを撫でてご満悦だ。
動物好きなのか?
確かにあの手触りは良いけど、パシオンがそういうの好きだとは思わなかった。
「自慢の毛玉です。はいどうぞ」
「にゃあ」
「ううむ、もふもふであるな」
「にゃーこさんはもっふもふだからね!」
「うむ」
ゴロウがにゃーこをパシオンに押し付けた。
にゃーこはゴロウが毛玉と呼ぶくらいにモコモコで、身体自体も大きい。
そんな毛玉を押し付けられたパシオンの顔は、嫌そうじゃなかった。
むしろ嬉しそうだな。
何故か自慢げなタマと通じ合っている。
カオスな空間だ。
「さて、貴様に言わねばならんことがある」
パシオンはしばらくにゃーこの毛に顔をうずめて満喫した後、突然真面目な顔で話しかけてきた。
そんな顔をするならとりあえず、抱っこしてるにゃーこを下ろせ。
気に入ってるんじゃない。
「ミゼルと結婚しないでくれて、ありがとう。本当に、ありがとう……!! もし結婚していたら、私の全てを賭けて貴様を討たねばならぬところだった」
「えぇ……。王様はまだ諦めていないのでは?」
「そのようだな。だが、なんとしてでも阻止するつもりだ」
やけに大人しいと思ったら、俺が結婚を断ったから安心してたんだな。
しかもやけに物騒なこと言ってるし。
可能性が0になったわけじゃないんだけど、今それを言っても良いことはなさそうだ。
「もしも、もしもなんですけど、ミゼル様が結婚したいという相手を連れてきたらどうするんですか?」
「無論始末する」
「ですよねー」
「話に聞いてた通りやばいやつだね」
「こわやこわや」
パシオンの発想は分かりやすい。
分かりやすいシスコンだ。いき過ぎてる気もするけどな。
後ろではモグラとゴロウが何か言ってる。
絶対面白がってるだろ。
「そんなことしたらミゼル様に嫌われませんか?」
「ミゼルに嫌われてでも、守らなければいけないのだ。それがミゼルの為である」
「……それって、パシオン様の自己満足ですよね」
「ほほう? 何が言いたい?」
この面倒な奴をどうしようかなと思っていたら、まさかのミルキーが割り込んできた。
明らかな正論に、パシオンの顔色が変わった。
だけどにゃーこを撫でているせいであまり迫力がない。
にゃーこは目がクリクリでおっとりしてる、癒し系にゃんこだからな。
「ミゼル様の幸せを望むなら、ミゼル様の意思を尊重してあげないといけないんじゃないかと思うだけです」
「ミゼルは優しいのだ。王女という身分だからと、政略結婚の道具として自分を差し出すに決まっている。それならば私が選んだ相手の方が良いに決まっている」
「それは政略結婚と何が違うんですか?」
「私が選んだ相手なら間違いなどない!」
「それが自己満足だと言ってるんです! どんな理由であれ、本人が結婚したい相手がいるならそれを応援してあげるのが兄じゃないんですか?」
「ぐぬぬ」
というようなやり取りの末、ミルキーが押し切った。
あのパシオンをやり込めるなんてすごいなぁ。
最終的な結論としては、ミゼルに結婚したい相手が出来たら、その相手をパシオンが試すということで落ち着いた。
シスコンなのは変わってないが、常識的なところだろう、多分。
「では気を付けて行って来い。可能ならば夕食は城で食って帰ると、ミゼルも喜ぶだろう。ミルキーも、ミゼルと仲良くしてやってくれ」
「分かりました。ご馳走になります」
「はい!」
訓練場でおろし金が崇められてる間に、パシオンと挨拶を交わした。
ミルキーへの好感度が上がったようで名指しでお願いされていた。
モグラとゴロウは空気だったが、訓練場にやって来た出汁巻玉子と再会して改めてお礼を言ったりしてたようだ。
「それじゃあ行こうか」
「キュルル」
「あれ、ナガマサさん達は乗らないの?」
「大丈夫ですよ」
「しゅっぱーつ!」
ミルキー、ゴロウ、モグラを乗せたおろし金がゆっくりと飛び上がった。
おろし金はスリムな上に突起が多いから、5人も乗ろうと思うとかなり端の方による必要があって危ない。
だから俺とタマはおろし金には乗らずに行くことにしたわけだ。
さて、俺達も行こう。
おろし金を追いかけるように空中を蹴って行く。
「うおっ、飛んだ! タマちゃんも飛べるの!? ああ、相棒だから≪飛翔≫スキル取ってるのか!」
「ええ、まあ」
「うわっ、たかっ」
「落ちないように気を付けてくださいね。タマちゃんも、ぶつからないようにね」
「あいあい!」
タマは普通に飛べるから、くるくる回りながらおろし金の周囲を飛んでモグラ達を驚かせていた。
このまま目的地まで直行だ!
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