上 下
94 / 338

91 イカゲソとイカ

しおりを挟む

 次のエリアに足を踏み入れた。≪輝きの大空洞03≫。
 そこはさっきまでよりも壁や天井の結晶体が多い。
 かなり明るくなっている。
 
 広い洞窟というのは変わっていない。
 見える範囲であの触手が二匹いる。
 地面から3m程の高さまで生えて、うねうね揺れている。

「触手狩りだー!」
「うおー! 狩るでゲソー!」

 いてもたってもいられない。
 素材を求めて駆け出した。
 タマもついてくる。
 ≪解放の左脚≫も活用して、触手は一瞬で目の前だ。

 触手の名前は≪古代異界烏賊エンシェントスピリットクラーケンの足≫となっている。
 つまりゲソだな。
 結晶みたいな質感だから分かりにくいけど、よく見ると吸盤のようなごつごつした部分もちゃんとある。
 そして足ということは本体がいるということだ。
 待ってろよ!

 足二本は俺とタマによって、一瞬で素材に換えられた。
 あえて通常攻撃で倒すのが楽しい。
 最近一撃ばかりだったから、剣で連続攻撃を当てるのがとても楽しい。

 触手の攻撃は触手自身を振り回したり、偶に結晶みたいなものを飛ばしてくる。
 Agiがとんでもない数字になってる俺達に当たるわけはなかったんだけどな。

 どんどん奥へ進んでいく。
 このエリアは触手とジュエルマンの白、黒、そして初登場の無しかいないようだ。
 無は白に似ているが、水晶のようでそんなにキラキラはしていない。

 白はダイヤなだけあってキラッキラしてるからな。
 さすが光属性担当。

 無は無属性の無で、周囲のモンスターに支援魔法をかけまくる上に水晶の塊を発射してくる。
 数が多いとそれなりに厄介だ。
 回復呪文は白の担当みたいだけど。

「お、足発見」
「ゲソー!」

 触手を見つけて狩ろうと思ったら、向こうもこっちに気付いたようだ。
 こっちに向かって来たんだが、おかしい。

 さっきの穴で見たように、穴からどんどん出てきて先端を伸ばしてくるのかと思ったら、なんと垂直に生えたままスライドするように移動してきた。
 地面の穴ごと移動してるように見える。

 さすがゲームだ。
 理屈が全く分からない。
 とりあえずさくっと両断してしまう。

 ≪古代異界烏賊の足≫のドロップは今のところ≪太古の結晶片≫と≪古代異界烏賊の吸盤≫と、何故か≪リンゴ≫。
 何故こいつがリンゴを?
 今度モグラにでも聞いてみよう。
 何か知っているかもしれない。

「この先に大きいのがいるよ!」

 どんどん進んでいると、タマが大物がいることを教えてくれた。
 本体に違いない。
 地面から生える巨大な結晶から覗き込むと、いた。
 大きな身体で、全身がクリスタルのような質感で周囲の明かりを反射して輝いている。
 良く見ると角度によって色んな色に見える。

 見えている部分は高さ10m程で、足の根本くらいから地面に埋まっている。
 二本程地面を這っているが、残りは埋まっているらしい。

 あれは足じゃなくて腕なんだっけ?
 ちなみに、周りにはさっきまで戦ってきた、縦のまま真っ直ぐ進んでくる触手が八体周囲をうろうろしている。
 あれが取り巻きってことなのかな。

 名前は≪古代異界烏賊エンシェントスピリットクラーケン≫。
 一つ気になるとすれば、身体の大部分が三角すいの貝の中に納まっていることだ。
 あれってアンモナイト? とかっていうんじゃなかったっけ。
 イカの仲間なのか?

 なんでもいいか。
 あれほどの大物ならきっとMVPボス。
 良い素材を落としてくれるに違いない。

「準備はいい?」
「おっけー!」
「大丈夫です」
「よし、それじゃあ各自バフをかけたら突撃しよう。タマは自由に動いていいぞ。魔法は多分通用しないから、物理で狙って」
「あいあいさー!」
「はい、了解です」

 まず俺は≪気功法≫を発動。
 ≪速度上昇≫と、≪無属性魔法≫のレベルが上がって習得した≪筋力上昇≫を全員が自身にかけた。
 準備は整った。
 いざ!

「とつげきー!」

 タマの姿が消えて、次の瞬間には本体を殴りつけていた。
 俺とミルキーも続く。
 とは言ってもあそこまで突貫はしないけど。
 まずは足をさっさと片付けてしまおう。

 古代異界烏賊はかなり強いみたいだが、俺達の方が強かった。
 触手は物理で殴れば簡単に木端微塵。
 本体も、HPがなんと驚きの1000万もあったがタマの怒涛の攻撃でごりごり削れていく。
 防御力も結構高いみたいなんだけどな。

 足は全滅させても、取り巻きを召喚されれば元通り。
 でも召喚するまで二十秒くらいは空くから、その間は三人で本体をひたすら攻撃する。

 HPバーが3割を割ったところで本体が地面から浮きあがった。
 いや、埋めていた足を抜いたようだ。
 直接触手をコントロールして更に赤いオーラに包まれた烏賊の攻撃は凄かった。

 が、やっぱり当たらない。
 Agiが高い上に瞬間移動も出来るからな。
 周辺を埋め尽くすような面の攻撃じゃなければ当たる気がしない。

 ミルキーはちょっとまだ不安だから、少し離れた位置で遠距離攻撃に徹してもらっている。
 スイッチが入ってからは取り巻きを召喚しなくなったからな。

 古代異界烏賊渾身の、光と結晶の混じったブレスも回避した。
 極太だし振り回すしで本来はかなり避けづらいんだろうけど、躱せてしまった。

 いっそ不憫になってくる。
 俺達の装備の為だから仕方ない。
 大事に使うから許してくれ。

「やー!」

 滅魔竜シリーズを利用した巨大な光の剣が叩きつけられた。
 堅そうな貝ごと真っ二つだ。
 真ん中から綺麗に左右に分かれた。
 古代異界烏賊のHPバーが消滅する。
 でもあれって魔法ダメージじゃないのか? もしかしてエフェクトの為だけに使ってるんじゃないよな。
 必殺技っぽいエフェクトが気に入ってるみたいだから有り得る。

「やったよモジャモジャー!」
「よーしよし、よくやったぞタマ」
「お疲れ様でした」

 強そうだった割にはあっさり倒せた。
 戦闘時間は多分一分くらい。
 俺達のステータスとスキルが異常なお陰だな。

 だけど、MVPの表示は出現しなかったうえにドロップもないようだ。
 あの強さでMVPじゃないなんてことあるのか?
 将軍クワガタよりも数倍強かったと思うんだけど。

「タマちゃんは本当に強いね」
「ふふーん、タマはさいきょーだからね!」

 とりあえずタマとミルキーのじゃれてる様子でも眺めてよう。
 そういえば、烏賊の死体が消えるの遅い気がするな。

 倒したモンスターの死体は段々と薄くなって消えて行く。
 完全に消えるまで大体十秒くらいだ。
 それがあの烏賊の死体はそろそろ二十秒経つのに薄くなってすらいない。
 おかしくないか?

 と思っていたら、やっぱりだった。
 烏賊の死体が少し浮いたと思ったらくっついて、再び地面に長い足を突き刺して埋まった。
 取り巻きが召喚されて二本の触腕と一緒に迫ってくる。
 HPバーも満タンだった。

「タマ、ミルキー、まだ倒せてなかった! もう一回倒すぞ!」
「もっかい倒せる! やったー!」
「はい!」

 タマが向かってくる触手を蹴散らすことで喜びを表現しながら本体の方へ向かっていく。
 間違いなく倒したと思ったのにな。
 もう一回倒せば倒せるのか? 

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた

甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。 降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。 森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。 その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。 協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。

システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。

大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった! でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、 他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう! 主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!? はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!? いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。 色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。 *** 作品について *** この作品は、真面目なチート物ではありません。 コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております 重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、 この作品をスルーして下さい。 *カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。

転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】

ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった 【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。 累計400万ポイント突破しました。 応援ありがとうございます。】 ツイッター始めました→ゼクト  @VEUu26CiB0OpjtL

天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生

西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。 彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。 精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。 晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。 死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。 「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」 晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。

バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました

福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。 現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。 「君、どうしたの?」 親切な女性、カルディナに助けてもらう。 カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。 正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。 カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。 『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。 ※のんびり進行です

異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~

モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎ 飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。 保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。 そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。 召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。 強制的に放り込まれた異世界。 知らない土地、知らない人、知らない世界。 不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。 そんなほのぼのとした物語。

異世界転移したので、のんびり楽しみます。

ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」 主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。

神に同情された転生者物語

チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。 すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。 悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。

処理中です...