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76 おねだりと資金繰り

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「こんなところに立派なモジャが! 朝ごはんに収穫しよう!」
「うう、おはようタマ。収穫しないでくれ」
「ぶちぶちぶちぃー!」
「ぎゃー!」

 タマの謎の小芝居で目が覚めた。
 俺の要望は無視されたらしい。
 えぐいな。
 もちろん髪の毛をわさわさされただけで、本当に引き抜かれてはいない。

「タマ、今日は朝ごはん食べたらミルキーさんと狩りだぞ」
「がんばるぞー!」
「程々にな」

 タマが張り切り過ぎるとMAPが更地になってもおかしくない。
 とりあえずミルキーにメッセージを送っておこう。
 今は8時か。
 集合時間は10時くらいでいいかな。
 場所は門の前で。
 送信完了。

「よーし、タマ、朝ごはん食べよう」
「おー! モジャはー?」

 再び俺の髪の毛をがっしりと掴む。
 どれだけ俺のモジャを収穫したいんだ。

「食べません」
「モジャモジャー」

 ご飯を食べ終わって準備も終わった。
 時間はまだ早いけど街に出るか。
 露店でも覗いてたら時間になるだろう。

「ちょっと早いけど出発しよう」
「あいさー!」

 宿屋を出発して大通りに出る。
 ここは相変わらず露店が沢山並んでるな。
 広い道の両脇にみっちりだ。
 建物と露店の間はちゃんと人が通れるスペースも空いてる。
 じゃないと後ろの店舗が迷惑だからな。

 露店ばかり目立つけど店舗も色々あるんだろうか。
 今度暇な時にじっくり見ておこうか。

 露店を出しているのはNPCばかりじゃない。
 プレイヤーもそれなりにいる。

 どれどれ、何か面白いものは無いかな。

 結構色んな物が売ってるから露店って面白い。
 この世界に来る前は、こうして歩きながら露店を眺めるなんて出来なかったからこれだけでも楽しい。
 装備やアイテム、素材まで色々ある。

 マッスル☆タケダみたいに装備の制作を受け付けているところも見かける。
 素材とお金に余裕があれば作成した方がいいのかな。

 でも金属製の剣とかは作るの大変そうだしな。
 ≪神滅魔王ドレッドエンド≫も装備品を落としたし、加工された後の装備もモンスターから落ちるっぽい。

 うーん、装備も揃えたいけど目ぼしいものがないな。
 急いでる訳じゃないから、適当なもので済ますよりはいい装備か素材が手に入るまでは我慢した方がいいか。

 歩き出そうとした時、裾が引っ張られた。
 タマか?

「モジャマサ、これかわいい!」
「うん?」
「いらっしゃい。お嬢ちゃん、いい目してるね。そいつは最近話題のアクセサリー職人≪牛丼食べたい≫の作品だよ」

 何か気になるものがあったらしい。
 タマが指してるのは小さい王冠みたいなものだった。
 トゲトゲしてなくて縦長で下が少し細くなってるカボチャみたいな形のやつだ。

 話題の職人?
 名前が完全にプレイヤーだな。
 この露店の店主はNPCだからこの人ではないみたいだ。

「見せてもらってもいいですか?」
「ああ、いいよ」

 許可をもらって手に取らせてもらう。
 どれどれ。

≪ミニクラウン≫
防具/帽子 レア度:C 品質:B
Def:+2 Mdef:+2 
王冠を模して作られたおしゃれ用の帽子。
高貴な可愛さを演出出来る。
牛丼食べたいの銘が入っている。

 なるほど。
 どっちかと言うと見た目重視の装備なんだな。
 タマはかなりいい鎧を装備してるし、頭防具は性能を気にしなくてもいいかもな。
 いつもお世話になってるしこのくらい買ってあげよう。

「これいくらですか?」
「10000cだよ」
「うっ」

 10000cか。
 意外と高い。
 手持ちだと足りないな。

「素材の買い取りってしてますか?」
「悪いな、装備ならともかく素材の買い取りはやってねぇんだわ」
「ぐぐぐ……、すみません。やめときます」
「そいつぁ残念。こいつは人気商品だからな、金が出来たら早めに来いよ」

 お金が無いのはどうしようもない。
 どこかで余ってる素材を売ってお金を用意してこないと。
 後に回したら買えない可能性があるから急ごう。

「すまんタマ、お金を用意して絶対買ってやるからな」
「お願いモジャモジャー」

 まだ待ち合わせには時間があるし、タケダにでも買い取ってもらおう。
 あーあ、こんなことなら小まめに売っておくんだった。
 パシオンの依頼で森についていった時の将軍クワガタ以外の素材は報酬としてもらってたんだよな。
 現金にしてもらっておけば良かった。
 他に現金でももらったけど、10000は無い。

 マッスル☆タケダがいつもいる場所に来た。
 タケダの姿は無い。
 昨日遅くまで飲んでてまだ起きてないなこれは。
 他に買い取ってくれそうなところを探さないと。

「あっ、すみません」
「いえ、こちらこそ。すみません、急いでいるのでこれで!」

 買い取りしてくれそうな露店を探して辺りを見ていると、後ろから誰かにぶつかられたようだ。
 白い髪の青年だった。
 アイコンは黄色。NPCだ。
 すごく急いでいる様子で走って行った。
 スリとかではないようだ。
 なんだったんだろう。

 今はそれどころじゃない。
 急げ急げ。

 買い取りをやってくれる露店を見つけた。
 ストーレの森04の素材は割と高く買い取ってくれて、全部で37291cになった。

 タマのストレージの中にあったもっと大量の素材や、昨日の魔王のMVP報酬らしい素材はとりあえず手をつけないでおいた。
 計算がもっと大変なことになりそうだからな。

 お金は用意出来た。
 さあさっきの露店に急ぐぞ。

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