53 / 338
52 一休みと突入
しおりを挟む「予定地点に到着!」
「「到着!」」
前の騎士達が止まった。
どうやら次のエリアの境界まで来たらしい。
ここまで快調だったな。
あんな重そうな装備でもあんなに足取りは軽いなんて、相当鍛えてるんだろうな。
実際はステータスの問題だから俺も余裕なんだろう。
でもあれだけごつい鎧はひょろひょろな俺には似合わなそうだ。
魔法職の人達も、デザインは違うが全身鎧だ。
役割が多少違うだけでStrにも振って、接近戦もそれなりに出来るようになってるのかな。
ミルキーみたいに。
「目標のいるエリアのすぐ手前に到着した。予定通り、これより三十分間の休憩を取る。この先は魔の森の深部だ、覚悟を決めておけ!」
「「「はっ!」」」
最後尾にいた出汁巻が前に出てきて騎士達に号令をかける。
この先はアクティブモンスターだらけだ。
その情報もしっかり伝えてあるから、ここで休憩をとってから突撃するそうだ。
というか騎士の人達に対しては威厳のある口調なんだな。
NPC相手だからか?
でもパシオンには丁寧だったから、部下相手にはってことかな。
「では休んでよし!」
騎士の人達は腰を下ろしたり、剣の手入れをしたりと、思い思いに動き出した。
良い意味で緊張はしていても、気負っている人はいないみたいだ。
流石精鋭。
俺だったら偉い人が見てる前で何かするなんて、多分色々耐えられない。
ろくに働いたこともないし、想像するだけでもダメだ。
出汁巻はしばらく周りの様子を見た後こっちへ来た。
パシオンに用事かな。
「ナガマサさん、もう一度この先のことについて確認したいんすけどいいすか?」
「あ、はい」
違った。
念を入れての最終確認だった。
モンスターの種類や行動パターン、攻撃手段等。
一度伝えてはいたがもう一度聞かれた。
別に苦ではないし答えていく。
情報があるのとないとじゃ大違いだしな。
それくらい、いくらでも協力する。
「出汁巻玉子よ、作戦はどうする?」
「オレそういうの得意じゃないんすけど……。とりあえずさっきまでと同じように三方を索敵しながら前進します。陣形もさっきまでと同じでパシオン様にも護衛を割り当てて、オレは最前列に出ようかと思うす」
「よし、好きにするが良い」
「うっす」
指揮は苦手だと言っていた出汁巻にパシオンは作戦を聞いた。
そしてそのまま採用された。
出汁巻を信頼してるのか、それとも苦手だなんて言い訳は聞かないということなのか。
ジャルージの後釜にしようと考えているのかもしれない。
さて、ここから先は危険な場所だ。
あくまでもサポートと言われてはいるけど、備えておくくらいはいいだろう。
「キュルッ!」
「おろし金ー! よーしよしよしよし」
「おお、これはなんだ?」
コインを放っておろし金を呼び出す。
タマがすかさず飛びついて盛大に可愛がり始めた。
周りがざわついてるが、仕方ないだろう。
おろし金は素材を食べると強くなる。
サイズも徐々に大きくなって、今は全長が5mないかな、くらいだ。
この辺にはいないモンスターだろうしどうしても目立つ。
「タマのペットのおろし金です。万が一に備えて控えておいてもらおうと思いまして」
「ほほう、立派な面構えをしているな」
パシオンは興味深そうにおろし金を眺めている。
なんたってタマのペットだからな。
タマ程じゃないけど中々すごいことになってるぞ。
さて、そろそろ三十分が経つ。
騎士達はみんな整列して出汁巻の言葉を待っている。
きっちりしてるなぁ。
タマもそろそろおろし金から降りてこっちに並んでくれ。
なんか無言の圧力を感じるから。
「休憩は終わりだ! いいか、これから先は油断したら死ぬ。そんなことは当たり前だ。油断するような奴は今ここで死ね! だが、貴様らが油断したら隣の仲間が死ぬと思え! 仲間を殺したくなければ生きろ!」
「「「はっ!」」」
出汁巻にさっきまでの気さくさは無い。
体育会系怖い。
言ってることは分かるんだけどもう気迫が怖い。体育会系怖い。
出汁巻の隣にいるものだから騎士の皆さんの気迫が思いっ切り飛んできて、余計に怖い。
整列の時は後ろにいたい。
騎士達は陣形を組んでいく。
それに習うように俺も、パシオンと一緒にさっきまでの位置につく。
「出汁巻は良い拾い者だった。ジャルージは近頃頭が固く、権力を笠に着るクズに成り下がってしまって困っていたのだ。我が騎士団の将来は安泰だな」
「権力を笠に着て好き放題やってたクズが、今目の前にいるような気がするんですが?」
「知らんな」
こいつもいい性格をしてる。
その分気が楽ではあるんだけど。
俺にとっては王族というよりただのバカのイメージが強い。
あとシスコン。
「前衛は後ろへの攻撃を絶対に通すな! 行くぞ!」
「とつげきー!」
斥候からの報告を受けて、出汁巻を先頭に騎士達が次のエリアへと向かっていく。
俺もパシオンと並んで歩き出す。
ストーレの森04へ。
なんかここ最近ここにばかり来てる気がする。
このクエストが終わったら新しい狩場を開拓してみるのもいいかもしれない。
ミルキーやモグラも誘ってみたりして。
最近知り合ったゴロウのところにも顔を出すだろうし、ついでに声を掛けてみようか。
おっと、いけない。
俺も何が起きてもいいように気を引き締めておかないと。
タマもおろし金に跨ってやる気充分だ。
俺達はよっぽどのことがないと手出し無用だからね。
蹂躙劇はまたの機会にしてくれよ。
0
お気に入りに追加
1,182
あなたにおすすめの小説
異世界転移したけど、果物食い続けてたら無敵になってた
甘党羊
ファンタジー
唐突に異世界に飛ばされてしまった主人公。
降り立った場所は周囲に生物の居ない不思議な森の中、訳がわからない状況で自身の能力などを確認していく。
森の中で引きこもりながら自身の持っていた能力と、周囲の環境を上手く利用してどんどん成長していく。
その中で試した能力により出会った最愛のわんこと共に、周囲に他の人間が居ない自分の住みやすい地を求めてボヤきながら異世界を旅していく物語。
協力関係となった者とバカをやったり、敵には情け容赦なく立ち回ったり、飯や甘い物に並々ならぬ情熱を見せたりしながら、ゆっくり進んでいきます。
システムバグで輪廻の輪から外れましたが、便利グッズ詰め合わせ付きで他の星に転生しました。
大国 鹿児
ファンタジー
輪廻転生のシステムのバグで輪廻の輪から外れちゃった!
でも神様から便利なチートグッズ(笑)の詰め合わせをもらって、
他の星に転生しました!特に使命も無いなら自由気ままに生きてみよう!
主人公はチート無双するのか!? それともハーレムか!?
はたまた、壮大なファンタジーが始まるのか!?
いえ、実は単なる趣味全開の主人公です。
色々な秘密がだんだん明らかになりますので、ゆっくりとお楽しみください。
*** 作品について ***
この作品は、真面目なチート物ではありません。
コメディーやギャグ要素やネタの多い作品となっております
重厚な世界観や派手な戦闘描写、ざまあ展開などをお求めの方は、
この作品をスルーして下さい。
*カクヨム様,小説家になろう様でも、別PNで先行して投稿しております。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
バイクごと異世界に転移したので美人店主と宅配弁当屋はじめました
福山陽士
ファンタジー
弁当屋でバイトをしていた大鳳正義《おおほうまさよし》は、突然宅配バイクごと異世界に転移してしまった。
現代日本とは何もかも違う世界に途方に暮れていた、その時。
「君、どうしたの?」
親切な女性、カルディナに助けてもらう。
カルディナは立地が悪すぎて今にも潰れそうになっている、定食屋の店主だった。
正義は助けてもらったお礼に「宅配をすればどう?」と提案。
カルディナの親友、魔法使いのララーベリントと共に店の再建に励むこととなったのだった。
『温かい料理を運ぶ』という概念がない世界で、みんなに美味しい料理を届けていく話。
※のんびり進行です
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。
異世界転移したので、のんびり楽しみます。
ゆーふー
ファンタジー
信号無視した車に轢かれ、命を落としたことをきっかけに異世界に転移することに。異世界で長生きするために主人公が望んだのは、「のんびり過ごせる力」
主人公は神様に貰った力でのんびり平和に長生きできるのか。
神に同情された転生者物語
チャチャ
ファンタジー
ブラック企業に勤めていた安田悠翔(やすだ はると)は、電車を待っていると後から背中を押されて電車に轢かれて死んでしまう。
すると、神様と名乗った青年にこれまでの人生を同情された異世界に転生してのんびりと過ごしてと言われる。
悠翔は、チート能力をもらって異世界を旅する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる