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46 激レアコインの使い道
しおりを挟むこのコインはやばい。
ゲームにあまり詳しくない俺でも一目で分かるくらいやばい。
まず見た目からして違う。
オオカナヘビのコインは茶色だった。
年期の入った10円玉みたいな色だ。
裏面には星のマーク。
このコインは、金色だ。
裏にはMVPと彫ってある。
とても分かりやすい。
次に、効果を見てみよう。
盛り沢山だ。
これでもかというくらい効果が盛り付けてある。
いつかVR雑誌で見た、五千円くらいするパフェくらい盛ってある。
しかも一つ一つが強力、だと思う。
これだけ効果があって一つもマイナス効果がない。
光属性を付与する効果は、光属性の防具には無意味で勿体なく感じる。
だけど元々光属性だった場合には更なるボーナスがある。
フォローまで完璧だ。
タマの新しい鎧に付けろと言わんばかりだ。
まさかここまでレアそうなコインを引き当てるとは……。
基本的にタマは引きが強い気がする。
武者クワガタのコインも拾ってたし。
コインのドロップ率はかなり低いって聞いたんだけどな。
この≪滅魔神竜コンヴィーク≫なんて聞いたこともないモンスターは、普通のゲームなら廃人の方々が大規模パーティーを組んでしつこく粘るようなボスなんだと思う。
コンビーフなんて仇名を付けられて、レアアイテム狩りの標的にされるんだ。
そんな感じのレアアイテムを引き当てるとは。
「どうだったんだ?」
「ええっとですね、こんなの出ました」
興味を抑えきれなかったのか、マッスル☆タケダが聞いてきた。
聞かれたからには答えるしかない。
軽くショートしそうなこの頭じゃ上手く誤魔化せる気がしない。
いっそ巻き込んでしまおう。
「うわ、なんだこれは! えげつねぇもん引き当てたな!」
コインを見せると、詳細を読んだらしいタケダの表情が変わった。
引き当てたのタマだから!
「やっぱりレアに見えます?」
「見えるも何も相当なもんだろこれは。一体どうするんだ?」
どうする?
本当にどうしようか。
選択肢はいくつかある。
一、装備にセットする。
部位は防具ならなんでもいいらしい。
幸いピッタリな防具がある。
タマの鎧だ。
効果もかなり噛みあうし、良い案に思える。
二、おろし金に食べさせる。
これもありだと思う。
戦力的に言えば俺とタマより低い位置にいるから、増強出来るだろう。
でもあの愛くるしいカナヘビの姿とはお別れになってしまう可能性も高い気がする。
そのまんまドラゴンになってもおかしくない。
三、売る。
お金に困ってないし、これはないな。
四、保留。
突然始まったクエストのこともあるし一旦置いておく。
そうだな、これが一番な気がする。
「一旦保留にしようかと思います」
「そうか。確かにそれがいいかもな。ちなみに、売るならどこか他所へ持ち込んでくれよ。こんな激レア買い取る程の金なんか、ウチには無ぇからな!」
タケダは笑っている。
いいのかそれで。
商人なのにお金がないから買い取り拒否とは、この人もある意味潔いな。
「あっ。そういえば鎧の分の代金はいくらになりました?」
「おお、そうだったな。忘れるところだった。ええっと」
タケダには昨日の狩りの分の精算とタマの装備の作成費用の計算を纏めてお願いしてあった。
買い取り分の代金から装備の料金を引いた分が儲けになるわけだが、余るかな。
あの気合いの入りっぷりを見るにオーバーしてても不思議じゃない。
追加で払うことになっても惜しくはない。
それぐらいいい出来だ。
「そうだな……。ちょっと布地の素材や装甲部分の加工に拘り過ぎて足が出たんだが、構わないか?」
「勿論構わないですよ。お陰ですごくいい装備を作って貰えたんですから」
「そう言ってもらえると助かる。んじゃあ追加で1000c頼む」
1000cか。
今日即席の剣が2000cで売れたし、全然問題ない値段だ。
「じゃあはい、1000cです」
「毎度あり。それじゃあこいつはおまけみたいなもんだ。受け取ってくれ」
取引ウインドウで1000cを渡すと、タケダの方からもアイテムを差し出された。
装備品のようだ。
一体なんだろうか。
≪将軍クワガタのアームガード≫
防具/手甲 レア度:B+ 品質:D+
Def:42 Mdef:18
魔の森の暴れん坊として恐れられる将軍クワガタの甲殻を使用して作られたアームガード。
非常に硬く、かつ、しなやかで非常に丈夫。
その装甲は魔法に対しても高い防御力を誇る。
Atk+5
Matk+5
マッスル☆タケダの銘が入っている。
「あの、これは何ですか?」
「おまけだよ。余った装備で練習も兼ねて作ったんだ。性能はかなりいいから勝手に素材を使ったのは許してくれ」
どうせ少し素材が余ったところで俺に使い道はない。
防具にしてくれるなんて、願ってもないことだ。
有難くもらうことにしよう。
「ありがとうございます。大事に活用させてもらいます」
「おう、ナガマサさんのもんなんだから好きに使ってくれ。プレゼントにもぴったりだと思うぜ」
プレゼントか。
これだけ高性能な装備なら誰にあげても喜んでくれそうな気がする。
むしろ高性能過ぎて遠慮されるかもしれないな。
まぁそこはミルキーにでも押し付けてみてもいいだろう。
俺が自分で使うのは、なんか装備が勿体ない気がしていけない。
誰かにあげたい。
「それじゃあ今日はこれで。明日は朝10時に集合でしたよね」
「おう、お疲れさん。ああ、ここで待っておけとパシオンが言ってたぞ」
「はい。ではまた」
「またなまっするー!」
「おう、二人とも、また明日な!」
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