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45 コインケースと激レアコイン
しおりを挟む「ではナガマサよ、頼んだぞ!」
「はい。それではまた」
「またねー!」
パシオンは颯爽と去って行った。
嵐みたいな奴だ。
「さて、なんだか大変なことになったみたいだな」
「さっきのはなんだったんですかね」
「さぁ? クエストが発生したんだと思うが、よく分からん」
クエストかぁ。
初めて数日の俺と、生産と商売で忙しいマッスル☆タケダ(本人談)じゃあ詳しいことは分かりそうにない。
モグラだったら何か知ってるかもしれないんだけど、今日はいない。
さっき解散してそのままどこかへ行った。
激しい狩りをしたし疲れて寝てるかもしれないな。
とりあえず今はパシオンが帰ったので二人で作戦会議中だ。
詳しいことは明日決めるらしいから相談出来ることは少ない。
それでも話はしておかないと不安になる。
「それにしても、NPCが絡んで来るくらい出来が良くてびっくりしましたよ。流石タケダさん」
「流石まっするのまっするー!」
「ははは、そうか? 俺でも驚くくらい会心の出来だからな! お互いに満足のいく品が出来て良かったぜ」
素材を渡した時は自信の無さで断ろうとしてたのに、やれば出来るんだな。
勿論タケダさんの頑張りの結果であるのは間違いない。
流石マッスル。
ポーズを決めたタケダの筋肉がピクピクと動いている。
見事な筋肉だ。ちょっと羨ましい。
そんな筋肉が作り上げたの鎧が――。
≪聖少女の鎧≫
防具/全身一式 レア度:A- 品質:B+
Def:300 Mdef:150
聖なる少女の為に作成された装備品一式。
魔を退ける素材に、更に洗礼を施して使用している為、魔法に対する高い抵抗力を持っている。
魔を滅する為の聖なる輝きは見る者の心を浄化するという。
光属性。
全ての魔法攻撃に対する耐性+30%。
闇属性モンスターに与えるダメージ+30%。
頭、アクセサリー以外の部位の防具を装備不可。
この性能だ。
一式装備だからとか素材がいいからとかの理由があるにしても、俺の≪オオトカゲの皮鎧≫の50倍の防御力って。
しかも魔法防御力もついてて30%の耐性までついてる。
普通に考えて強すぎる。
やっぱり素材がいいのか?
あと品質から考えて、タケダも相当頑張ってる。
グローブやブーツまで作りこむとは。
とりあえずは気になる事を聞いてみよう。
「タケダさん、MVPモンスターって何のことか知ってますか?」
「うん? ナガマサさん知らなかったのか」
「ええ、まぁ」
何故か驚かれてしまった。
そのMVPモンスターとやらを倒してるからなぁ。
知っててもおかしくないと思われてたみたいだ。
狩りをあんまりしないタケダですら知っていたっていうのも、理由の一つなんだろうけどね。
「MVPモンスターっていうのは、簡単に言うとボスモンスターの中でも特別レアな奴だな。アイテムや素材が強力だったりするし、倒せばボーナスもある。極一部を除いてほとんどがかなり強い。らしい」
「なるほど。らしい、っていうのはどういうことですか?」
「実際に確認されているMVPモンスターがそんなにいないからな。情報集めに精を出してるプレイヤーが、伝承や噂話なんかで聞いた話を統合させて出た推測に過ぎないっていうのが現時点での認識だ」
なるほど。
まだ憶測の域を出てない訳なのか。
「それに、見た目で判断がつかない上に強さもピンキリじゃないかって話だ。そのエリアのMVPじゃないボスより苦戦しないで倒した相手がMVPモンスターで驚いた、なんて話があるらしい」
「じゃあもしかしてストーレの森の将軍クワガタは……」
「MVPモンスターだと知ってる奴はいないか、そうでなくともその情報が売られたり流されたりしないくらい少ないんだろうな」
なるほどなぁ。
近くにごろごろしてるわけでもなさそうだし、初心者相手に教えるような情報でもないよな。
まさか数日であんな危険なMAPに突っ込んでいくとは思わないだろう。
モグラもストーレの森04に入るのは初めてだったらしいし。
あれ?
MVPに関連して何か忘れてるような気がする。
何だったっけ。
……そうだ!
将軍クワガタを倒した時に、タマが報酬でもらったアイテムがあったんだ。
相談してみよう。
「そういえばタケダさん、こんなアイテムがあるんですけどこれ何か分かりますか? タマがMVPボーナスでもらったらしいです」
「これは……! おいおいナガマサさん、運がいいな!」
「ええっ? これがどうかしたんですか?」
「はっはっはっはっは!」
「もっじゃっじゃっじゃっじゃ!」
≪古いコインケース≫をタケダに見せてみると、驚いた後突然笑い出した。
俺の肩をばっしんばっしん叩くご機嫌っぷりだ。
タマも謎の便乗をしている。
「これはな、使うと中から全種類のコインの中からランダムで1枚出てくる、らしい。さっき話したそんなに強くないMVPモンスターの報酬で入手したものを、高い金払って鑑定してもらったって話だから多分間違いないだろう」
全種類の中から1枚……。
確率的に言えば低いんだろうけど、超激レアコインが手に入る可能性があるってことか。
「しかもそのコインケース欲しさに何度も何度も倒しても、報酬は回復アイテムとか何かの素材ばかりで、同じプレイヤーがもう一度拾ったっていう報告は今のところ無いそうだ。隠してる奴は何人かいるだろうがな」
それは確かに運がいいかもしれない。
ギャンブルは得意じゃないけど、こういう夢のあるアイテムは好きだ。
「そのアイテムはプレイヤーNPC問わず大人気みたいだからな。高値で売れるぞ」
「うーん、どうしましょうね」
正直、チートじみた成長の仕方をしてるお蔭で戦力に不足はない。
でもあるに越したことはない。
お金に困ってるわけでもない。
ここは手に入れた人の判断に任せよう。
「タマ、コイン欲しいか?」
「コイン? きれーだから好き!」
「よし、開けよう」
「潔いな」
即決だ。
迷いなんかは無い。
タマが望むってことはそれが答えなんだ。
「それじゃあタマ、これ開けてみてもらってもいい?」
「らじゃー! 開けるぞー!」
≪古いコインケース≫をタマに手渡した。
タマが古いコインケースを開けると、ケース部分が光になって消えた。
そして残されたのは、一枚のコイン。
「はい!」
「ありがとう?」
手渡してくれたので一旦受け取る。
金色に光っていて綺麗だ。
どれどれ。
≪コイン:滅魔神竜コンヴィーク≫
部位:防具
魔力の封じられたコイン。
滅魔神竜コンヴィークが描かれている。
全ての属性に対する耐性+50%
全ての魔法攻撃に対する耐性+50%
全てのモンスターに与えるダメージ+100%
闇属性モンスターに与えるダメージ+100%
闇属性モンスターから受けるダメージ-50%
光属性の攻撃・スキルで与えるダメージ+100%
防具に光属性を付与する。
光属性の防具にセットした場合、全てのモンスターから受けるダメージ-20%
間違いない。
これはやばいやつだ。
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