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41 ゴロウとモグラ
しおりを挟むしばらくゴロウの戦いを見守って、今は休憩中だ。
タマはおろし金に乗って森の奥へと突き進んでいった。
おろし金を召喚した時に驚かれたけど、タマのコインを合成したらこうなったと説明したら納得してくれた。
「冒険者楽しいな。商売よりこっちの方を頑張ろうかな」
座って駄弁っていると、ゴロウがこんなことを言いだした。
冒険者をやるのに前向きになってくれたなら良かった。
「良かった、これでゴロウちゃんの下手くそな商売につき合わされなくて済むよ」
「下手くそとは失礼な」
「じゃあ稼げてるの?」
「素寒貧カーニバルですわ」
「でしょ」
モグラもどこかホッとしたような表情だ。
話を聞く限りでは、ほんとに商売とか向いて無さそうだもんな。
俺も商売のことは全くわからないけど、それでもダメそうに聞こえるって相当だと思う。
「モグラさん、ゴロウさんは冒険者としてやっていけそうですか?」
「うーん……」
本人がやる気になっても向いてなければ意味が無い。
そこは商売でも何でも一緒だ。
モンスターのいる街の外に出て生計を立てる分、冒険者の方が取り返しがつかない。
商人はお金を失うだけで済んでも冒険者はミスがそのまま死に繋がる。
「動きとかは悪くないし大丈夫だと思うよ。むしろ商人よりもよっぽど向いてる気がする」
「いえーい」
「なんか腹立つんだけど」
「まあまあ」
余計な心配だったらしい。
実際見てても危なくなるような場面も無かったし、モグラの言う通りなんだろう。
「じゃあ後は装備を整えるだけですね」
「そうだね。そしてそこでさっきとったユニークスキルの出番だ! モグラさん、この短剣買い取っても良い?」
「オッケー。使い古しだし100cでいいよ」
ゴロウは突然張り切りだした。
そして何故かモグラから短剣を買い取っている。
一体何が起きるんだ?
「この短剣に、さっき拾った足軽クワガタのアゴをくっつける」
ゴロウが両手を合わせる。
手に持っていた二つのものが触れ合った瞬間、光を放った。
その光はすぐに収まった。
コインを合成したりした時の光景によく似ている。
「出来あがり!」
ゴロウの手には一振りのナイフが収まっていた。
その刀身は黒っぽくてくの字に折れ曲がっている。
先端部分が少し太くなっている。
こういうのをククリ刀っていうんだっけ。
「これ何?」
「え、ククリ刀」
「いやそうじゃなくて、今合成した? 何かのスキル?」
「そうそう。さっきとったユニークスキルだよ。色んなアイテムを合成出来るらしい」
「すごいですね」
ほんとにすごい。
合成するだけで楽しいに違いない。
装備とか、合成後のデザインをある程度調整出来るらしいし。
少し見せてもらったけど、この≪足軽クワガタのククリナイフ≫は元の短剣よりも結構強化されている。
便利過ぎじゃない?
俺もそんなスキルが欲しい。
「これで装備は一通り揃えられるはず」
「流石ゴロウちゃん。滅茶苦茶なやつだなぁ」
「合成師の職業も活かせそうだし良かった良かった。成功率10%が成功したのもラッキーだった」
「ちょっと、ここにもう一人チャレンジャーがいるんだけど」
合成師の職業スキルは文字通り≪合成≫をする為にあるようなものだ。
目玉の≪合成≫スキルと、その補助スキルで固めてあるらしい。
合成スキルは使わなくなってもその他の補助スキルは一層活躍するだろう。
モグラさん、俺と同類みたいに言わないでください。
その手のチャレンジは俺はしません。
「ただいまー!」
「キュルル」
「おかえり」
「おかー」
「おかえりタマちゃん!」
おろし金に乗ったタマが帰還してきた。
俺達の場所は何で分かったんだろうか。
匂いかな?
「たくさん狩ってきた!」
「どれどれ」
タマのストレージを確認してみる。
確かにたくさん狩ってきたようで、山のように素材がある。
ちょっと将軍クワガタの素材を期待してたけど、そもそもまだ倒したばかりだった。
将軍クワガタはリポップするのに時間がかかるらしいからな。
そうだ、ちょっといいこと思いついた。
「タマ、この中からちょっと素材もらってもいいか?」
「いいよ!」
「ゴロウさん、ちょっとお願いがあるんですけど」
「手伝ってもらったし出来ることならなんでもしますぜ」
「これとこれで武器を作って欲しいんですけど」
「ほほう? 成功するかは分からないけどやってみます!」
差し出したのは壊れた剣とソードビートルの剣角。
もしかしたら復活出来るかもしれない。
「ではいきます」
「がんばれゴロー!」
「出来ました」
「でかしたゴロー!」
「へへへ」
早かった。
ゴローから完成した剣を受け取る。
ソードビートルの角をそのまま剣にしたような黒い片手剣だ。
≪ソードビートルの合成直剣≫
武器/片手剣 レア度:D+ 品質:C-
Atk:+65 Matk:+0
森の弾丸として恐れられるソードビートルの角を活かして作られた直剣。
通常の製法と異なり、金属と合成して作られている為その強度は高い。
刺突属性の攻撃の際、対象の防御力を20%無視する。
出来栄えはかなり良さそうに見える。
合成した分色々上乗せされているんだろうか。
「ちょっと見せてもらってもいい?」
「どうぞ」
「うわなんだこれ、つよ!」
モグラに手渡してみると大興奮だ。
かなり強いらしい。
それは良かった。
「モグラさんその剣欲しかったりします?」
「え? 欲しい欲しい。今使ってる剣がAtk40だし、この剣追加効果まであるし」
「いくらだったら買いますか?」
別にタダであげてもいい。
モグラに買ってもらった剣と、すぐそこで拾える素材だし。
でも今回はちょっと我慢だ。
恩返しは別の機会に、別の形でしよう。
「うーん……手持ち的に5000cが限界かな。この性能なら5000cでも安いくらいなんだけど」
「なるほど。じゃあゴロウさん、この剣2000cで売ります」
「え、そんなの買ったらお金無くなっちゃうよ」
理解してもらえてなかった。
説明とか特にしてないのがいけなかったか。
モグラもずっこけてるってことは俺の意図が伝わってたんだろうけど。
「2000cで買った後、またすぐに売ればいいんですよ。そこに欲しいってる人がいるんですから」
「なるほど。じゃあ買うよ!」
ゴロウに剣を渡して2000cを受け取る。
ゴロウの技術力あってのことだし、これくらい安く売ってもいいはずだ。
素材だけならもっと安かっただろうし。
「モグラさん」
「何?」
「今ならなんと! この剣を! 4000cでお売りいたします!」
「買った!」
「毎度あり!」
2秒で商談が成立した。
「っていうかなんで4000なの? 5000でもすぐ売れるくらいの性能だと思うよ」
「いやぁなんていうか、勢い?」
「懲りてないなぁ。5000で買おうか?」
「一度言った値段を取り消すことなんて、商人のプライドが許さないね」
「変な所で頑固なんだから。まぁこっちは安い方が有難いし、今回はゴロウちゃんも得してるしいっか」
二人のそんなやりとりをタマとおろし金を撫でて眺めていた。
4000cで売ったのはゴロウなりの感謝の気持ちなんだろうか。
やっぱり仲がいい。
俺も信頼できる仲間とか友達が欲しい。
ちょっと二人が羨ましいな。
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