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14 マッスル☆タケダと初注文
しおりを挟む「転職おめでとうございます」
「ありがとうございます」
封印スキルのおかげで職業スキルがスルーされて、選択肢として唯一出た挑戦者(チャレンジャー)に転職した。
いつの間にか鎧と短剣の装備が外れている。
装備条件がノービスのみとなっているから、転職して強制解除されたっぽい。
受付のお姉さんのお祝いの言葉にとりあえず返す。
営業スマイルだって気にしない。
笑顔ってだけで有難いものなんだ。きっと。
タマも祝ってくれるかのように俺の周りをふよふよ漂う。
よしよし、ありがとな。
撫でておこう。
「通常転職された方は各職業のギルドに自動的に所属することになり、転職時にはお祝いがもらえるのですが……」
「挑戦者はギルドが存在しないので、先ほども申し上げたようにそういったサポートもございません」
お姉さんが言いにくそうにしたところで、支部長のフロンが続きを引き継いだ。
なるほど、そういうのもあるのか。
モグラが職業に応じた初期装備をくれるって言ってたのはこういうシステムなんだな。
もちろん、サポートが無いのが分かってて転職したんだから文句はない。
「大丈夫ですよ」
「代わりといってはなんですが、こちらを受け取ってください。我々からのお祝いです」
おお、と思った時には俺のストレージに何やら装備品が放り込まれていた。
強制取得っぽい。
粋なことしてくれるなぁ。
「ありがとうございます」
お礼を言って部屋を出る。
モグラも待たせてるし、色々報告しないといけない。
「お待たせしました」
「思ったより早かったね。何に転職するか迷わなかった?」
酒場スペースで一杯やっていたモグラに声をかけると、そんな風に返された。
支部長を呼ばれたりして時間かかったのかと思ってた。
けどそうか、普通はいくつも選択肢があって選ぶのに時間がかかるんだな。
だから質問とかに対応出来るよう、担当者がついてる訳か。なるほど。
とりあえず席について、ざっくりかいつまんで説明した。
挑戦者という珍しいっぽい職業に転職した、ってことくらいだけど。
条件に関しては一旦内緒にしておく。
話すのは簡単だけど、もしこの職業が苦行みたいな職業だった場合、後続で物珍しから真似した人がいたら可哀想なことになるからだ。
このゲームはゲームだけど、俺達にとっては 第二の人生そのもの。
取り返しのつかないことだってあるからな。
「それで、職業の補正とかはある?」
「補正?」
「ああ、説明してなかったっけ」
ノービス以外の職業は各種ステータスにボーナスがつくらしい。
魔術師ならIntに、剣士ならStrにといった具合だ。
大体は得意分野を伸ばしてくれる形だそうだけど、職業毎に様々らしい。
挑戦者はどうか。
名前:ナガマサ
種族:人
Lv:7
Str:7
Vit:4
Agi:10
Dex:20
Int:7
Luc:2
職業:挑戦者(チャレンジャー)
職業Lv:1
スキル
サバイバルの心構え Lv1(使用不能)
武器修練 Lv1(使用不能)
武器適正・片手剣 Lv1(使用不能)
リラックス Lv1(使用不能)
魔法適正 Lv1(使用不能)
属性適正・無 Lv1(使用不能)
フルスイング Lv1(使用不能)
目印 Lv1(使用不能)
応急手当 Lv1(使用不能)
我が道を行く Lv8
封印の左腕 Lv8
封印の右腕 Lv7(1↑)
封印の左脚 Lv7(1↑)
封印の右脚 Lv1
成長促進 Lv1(MAX)
取得経験値増加 Lv4(2↑)
補正がかかっていれば、数字の横に+1って感じで表示されるらしい。
うん、ないな。
とりあえずレベル1では補正がかからないらしい。
職業レベルが上がれば上がったり増えたりするらしいし期待しておこう。
ついでにスキルの方も戦闘をしていないのにレベルが上がっている。
封印スキルは封印してるだけで経験値入るからなぁ。
行動を封じるスキルの対象の行動を今も繰り返してたおかげだな。
二つのスキルの相乗効果でえげつないことになってるだろうし。
でも流石に疲れたから、今日はここまでにしておこう。
あまり無茶すると脳が死ぬかもしれない。
「補正はとりあえずないですね」
「なんか色々きつそうな職業だなぁ」
ほんとにね。
変に広まっても責任持てないから、迂闊に条件話せないぞ。
しばらくは様子見だ。
「じゃあお待ちかねの、装備を作りに行こうか。初期装備ももらえなかったみたいだし……丁度いいかもね」
今の俺の装備は支部長にもらった旅人の服だけ。
ただの服よりは防御力があるけど、流石にこれだけは怖い。
せめて皮鎧だけでも欲しいところだ。
あとは武器も今は装備出来るものがない。これも調達しないとまずいな。
ギルドを出た俺達は、モグラおススメというお店にやってきた。
お店とは言ってもここは道端だ。
いくつも並んでる露店の一つ。
その中でもプレイヤーがやってるお店だった。
「おすおす」
「おおモグラ。いらっしゃい」
おススメだけあって顔なじみらしい。
カーソルの横には『マッスル☆タケダ』と表示されている。
すごい名前だな。
芸人みたいだ。
短く刈りそろえた髪は、坊主に近い。
ガタイが良いからか、タンクトップが良く似合っている。
男らしさに溢れた人だ。
「今日はお客さんを連れてきたよ。装備を作って欲しいらしいんだ」
「初めまして、ナガマサです」
「はじめまして、マッスル☆タケダだ。気軽にタケダと呼んでくれ」
「よろしくおねがいします」
マッスル☆タケダはその名に相応しい、立派な筋肉を備えている。
キャラメイクとかはなかったし、きっとこの人はリアルでもこんな感じの体系なんだろう。
俺の場合リアルよりも少し肉がついてるけど。
「さて、素材は何だ?」
「オオカナヘビの皮なんですけど」
「なるほどなるほど。となると防具か。希望の部位はあるか?」
部位、部位か。少し悩む。
けどとりあえず一番大事なところからだな。
「鎧でお願いします」
「皮鎧だな、了解。ちなみにそこまで腕がいいわけじゃないから、そこは勘弁してくれよ。なにせまだ1月も経ってない駆け出しなんだからな」
タケダは困ったように笑いながら、最後にモグラに視線をやった。
何かまずかったんだろうか。
「まぁまぁ。オレみたいな戦闘職からすれば立派な腕だって。それに、顔見知りは多い方が素材とか持ち込んでもらう機会も増えるでしょ?」
「それはそうなんだけどな、まだ自信がないんだよ。売れ行きも微妙だし」
なるほど。あまりオーダーメイドはしてないらしい。
でも並べてある装備はどれも良さそうに見える。
「良さそうなものが出れば売りに来ますよ」
「だってさ」
「ったく、お前は。まぁナガマサさん、素材を出してくれ」
オオカナヘビの皮を預ける。あるだけ全部だ。
「これだけあれば他にも何か作れそうだな。何か希望はあるか?」
「あまりお金がないので、鎧の分の値段を聞いてからでもいいですか?」
「ふむ、予算は?」
「手持ちが1100cくらいなので、明日の宿代を考えると使えるのが1000cくらい? だけど片手剣も買おうと思うので700c以内だと有難いです」
とりあえず、明日の宿代さえ確保しておけばなんとかなるだろう。
武器の相場は分からないけど……露店に並んでる武器を見た感じ、700cあれば安いのは買えるはずだ。
一番安いのでも初心者用短剣と同じくらいの攻撃力はあったから、とりあえずそれで稼げばいい。
大事なのは防具だ。
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