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第5章
9. 朱璃と愉快な仲間たち(最終回)
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紅葉も色づき始めた秦家の庭園で、ささやかな茶会という名の祝勝会が開かれた。
先日行われた武道会で、朱璃は弓術の部で見事優勝し、武修院への入隊を許可されたのだ。武修院で半年訓練を受けた後、武官として何処かに配属される。
入隊は来春になるが、今から準備に追われ忙しくなるだろう。
朝廷に戻った面々も忙しい日々を過ごしていて、束の間の休息だった。
食事も酒も随分と入ってきた頃、桃弥が情けない声を上げた。
「もう、わかりませーーん! 教えてくださいっ」
「ほんとに分かんねーのか? 二人とも頭が固いんだよ。若いくせに」
「いたたたたーーっ。すみませんって、いたいいたい」
鉄拳で桃弥の頭をグリグリする泉李はえらくうれしそうだった。
「ヒントをください……」
もうかれこれ3ヶ月は考えているのだ。景雪一行を通天で先回りできた理由を。
彼らの王都に向かう道順の法則がどんなに考えても分からない。
「答えは、とっても大事な教訓になりますよ」
「そーそーお前ら難しく考え過ぎ。景雪はな、紙一重なんだよ」
「……まさか地名の一番上の文字を繋げるとか、そう言うんじゃないですよねーー」
「ふふふっ」
嫌な予感がして、二人は頭の中で8カ所を思い浮かべた。
「けぼなるくていつ」
長い長い沈黙の後、燃えつきた二人に莉己はにっこり微笑んで言った。
「ね。色々教訓になったでしよう?」
2人は素直にうなずき、少し離れた紅葉の下でゴロンと横になっている景雪を見つめ、ため息をついた。
もう、忘れよう
時間の無駄だったなど考える時間が無駄だ。
未来を大切にしよう。
ひとまず、喉を潤しながら朱璃の寝顔で癒されよう。
そんな二人の耳にとんでもない言葉がとびこんできた。(おそらくわざと)
「そういえば、朱璃が求婚した男って見つかりました?」
「いや。まぁ、目星は付いたが 」
「はあ!?」
「……!?」
一瞬で覚醒し、食い付いてきた二人に莉己が笑った。
「武道会の日に、朱璃が理想の男性に出会ったんですよ。舞い上がって求婚したら、一瞬でふられたらしいんですけどね」
「琉晟いわく、嫁になって下さいって叫んだらしい。相手は大人の貫禄で、もう少し大きくなったらおいでとあしらったそうだが」
「それが悔しくて、胸を大きくする体操に勤しんでると言ってましたよ。どんな体操なんでしょうね。くすくすっ」
「ていうかさ、胸が大きくなったらって言う
か? 言わねーだろ普通。どうせ15、6才だと思われたんだろ」
「さあ? 胸を大きくするのにはいい方法があるんですけどね。いつでも手を貸すと言っておいてくださいね。うふっ」
「………」
間一髪でお茶を吹き出しそうになったのを止めたせいで鼻奥のツンツンに悶える桜雅を横目に桃弥は気持ち良さそうに爆睡中の朱璃を見た。色々おかしすぎるだろ。
「なにやってくれてんの、こいつ」
「ふふっ。本当に飽きませんね」
「俺は、ちょっと心配になってきた」
武修院の入隊に関しての対策を考え中だが泉李の悩みが増えそうだ。
「きゅうこん……」
祇国の片隅で起こった小さなつむじ風
優しいそよ風のように、人々の心を通り抜け、小さな種を運んできた。
心にまかれた種は、まだ小さな芽をつけたばかり。
どんな花が咲かせてくれるのだろうと、あたたかく見守る優しい瞳は、やがて美しい花と共に、心地よい風に包まれることになるだろう。
大地を護る母のような風に……。
先日行われた武道会で、朱璃は弓術の部で見事優勝し、武修院への入隊を許可されたのだ。武修院で半年訓練を受けた後、武官として何処かに配属される。
入隊は来春になるが、今から準備に追われ忙しくなるだろう。
朝廷に戻った面々も忙しい日々を過ごしていて、束の間の休息だった。
食事も酒も随分と入ってきた頃、桃弥が情けない声を上げた。
「もう、わかりませーーん! 教えてくださいっ」
「ほんとに分かんねーのか? 二人とも頭が固いんだよ。若いくせに」
「いたたたたーーっ。すみませんって、いたいいたい」
鉄拳で桃弥の頭をグリグリする泉李はえらくうれしそうだった。
「ヒントをください……」
もうかれこれ3ヶ月は考えているのだ。景雪一行を通天で先回りできた理由を。
彼らの王都に向かう道順の法則がどんなに考えても分からない。
「答えは、とっても大事な教訓になりますよ」
「そーそーお前ら難しく考え過ぎ。景雪はな、紙一重なんだよ」
「……まさか地名の一番上の文字を繋げるとか、そう言うんじゃないですよねーー」
「ふふふっ」
嫌な予感がして、二人は頭の中で8カ所を思い浮かべた。
「けぼなるくていつ」
長い長い沈黙の後、燃えつきた二人に莉己はにっこり微笑んで言った。
「ね。色々教訓になったでしよう?」
2人は素直にうなずき、少し離れた紅葉の下でゴロンと横になっている景雪を見つめ、ため息をついた。
もう、忘れよう
時間の無駄だったなど考える時間が無駄だ。
未来を大切にしよう。
ひとまず、喉を潤しながら朱璃の寝顔で癒されよう。
そんな二人の耳にとんでもない言葉がとびこんできた。(おそらくわざと)
「そういえば、朱璃が求婚した男って見つかりました?」
「いや。まぁ、目星は付いたが 」
「はあ!?」
「……!?」
一瞬で覚醒し、食い付いてきた二人に莉己が笑った。
「武道会の日に、朱璃が理想の男性に出会ったんですよ。舞い上がって求婚したら、一瞬でふられたらしいんですけどね」
「琉晟いわく、嫁になって下さいって叫んだらしい。相手は大人の貫禄で、もう少し大きくなったらおいでとあしらったそうだが」
「それが悔しくて、胸を大きくする体操に勤しんでると言ってましたよ。どんな体操なんでしょうね。くすくすっ」
「ていうかさ、胸が大きくなったらって言う
か? 言わねーだろ普通。どうせ15、6才だと思われたんだろ」
「さあ? 胸を大きくするのにはいい方法があるんですけどね。いつでも手を貸すと言っておいてくださいね。うふっ」
「………」
間一髪でお茶を吹き出しそうになったのを止めたせいで鼻奥のツンツンに悶える桜雅を横目に桃弥は気持ち良さそうに爆睡中の朱璃を見た。色々おかしすぎるだろ。
「なにやってくれてんの、こいつ」
「ふふっ。本当に飽きませんね」
「俺は、ちょっと心配になってきた」
武修院の入隊に関しての対策を考え中だが泉李の悩みが増えそうだ。
「きゅうこん……」
祇国の片隅で起こった小さなつむじ風
優しいそよ風のように、人々の心を通り抜け、小さな種を運んできた。
心にまかれた種は、まだ小さな芽をつけたばかり。
どんな花が咲かせてくれるのだろうと、あたたかく見守る優しい瞳は、やがて美しい花と共に、心地よい風に包まれることになるだろう。
大地を護る母のような風に……。
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