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暴走の謎

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・・・?

今、何か悲鳴のようなものが聞こえたような・・・いや、空耳だ。

とりあえずもうすぐ非戦闘員の避難は終わる。幼女(妖精)によると木崎はもうすぐそこまで来ているということでもう行ってしまった。

木崎がすぐ近くにいるということは氷室とはもう会って戦っているだろう。できれば無茶はしてほしくないけど・・・

まあいい。氷室には風間が付いている。万が一のことがあったとしても大丈夫だろう。

私の横を微かに鉄のにおいがする生暖かい風が吹いた気がした。

・・・・・

・・・

「ぐっ・・・」

噴水のように血が噴き出す左腕を抑えながら氷室は苦悶の表情を浮かべる。見ると、左腕が半ばから食いちぎられたかのようになくなっている。

そんな氷室の目の前には嬉々として食いちぎったであろう腕を食む木崎がいた。その表情はいまにも吐き出しそうな。しかしながら大好物を食べているかのような嬉々とした表情を浮かべている。

「うぇ・・・おぇえ・・・クヒヒ・・・」

「・・・・っ!」

それを見て顔を引きつらせる氷室。かつての同級生のこのような姿は見るに堪えないのだろう。絵好きながら自分の腕をむさぼる木崎から目をそらす。

そして、覚悟を決めたかのように木崎へと向き直す。

「・・・ふんっ!」

氷室左腕に力を入れる。その瞬間流れでいた血はまるで水道の蛇口を占めたかのようにその流れを止めた。左腕の筋肉を膨張させることによって血管を圧迫し止血することに成功した。

「これくらい・・・どうってことねぇ・・・!」

不本意ながらやくざの跡取りであった氷室は、喧嘩をするということは日常茶飯事であり、そのため相手から大けがを負わせられるということもしばしばあった。さすがに腕を食いちぎられるという経験は初めてであったが、仲間を裏切り瀕死の重傷を負わせた木崎への怒りが氷室を不退転の覚悟を否応なしにさせる。

「がぎゅあぁぁぁ!!ヨコセエエエ!!」

次の瞬間、木崎はわけのわからない叫び声をあげながら氷室へと文字通り牙をむく。氷室はその場を動かない。そして次の瞬間。

「ガボッ・・・」

木崎が氷室の首元に噛みつこうとした瞬間、氷室は無い腕で木崎の顔面を思い切り殴った。

折れた歯や血しぶきをまき散らしながら吹き飛ぶ木崎。

「へっざまあ見やがれ。」

・・・・・

・・・

そんな氷室の戦いの様子を風間は離れたところから見ていた。

(左腕が食われたときは焦ったが、一応まだ戦えるみたいだな。ほんとチートスキル様様だね。)

氷室の様子を注視しながら二人の戦いを見る風間。今のところは重傷を負いつつも氷室が圧倒している。だが、戦いを見ている中である一つの疑問が浮かぶ。

(・・・木崎の奴さっきから氷室の打撃をまともに受けているのになぜ毎度立ち上がれる?)

怪我が治っていないことから回復魔法などの類を使用していないのは明白である。

(というより、様々なスキルを獲得しているくせに噛みつきなどという肉弾戦にこだわっているんだ?暴走のせいといえば片付くのだろうが、魔神の力を獲得して暴走したのであれば、普通魔法を周囲に放つような暴走をするものだと思っていたが…)

そんな疑問を浮かべる風間をよそに二人の決着がつこうとしていた


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