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腕力がものを言う世界から転生したお嬢様の独白

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私の名前はスベルニール。フェンデルワース・デュ・スベルニール。私にはちょっと言えない秘密があります。それは私が前世の記憶を持っているということ。前世の私は今世の私と同じく貴族の娘でした。前世の私がいた世界では魔法よりも腕力が物を言う世界でした。しかし私、魔法は人並み以上に使えましたが腕力はからっきしで、両親からは見放され、最期は馬車に轢かれて死にました。その際に来世では今世よりも強い腕力を持って生まれたいと願いました。

今世では同じ轍を踏まないように生きていこうと思っていたら、この世界は腕力よりも魔法が物を言う世界であるのにもかかわらず、私はなぜか殿方よりも強い腕力を持って生まれました。

また必要な能力が欠けて生まれてしまった私は捨てられてしまうのかと思いましたが、お父様とお母様は私を大切に育ててくれました。しかし私は、前世では使えていた魔法が今世では全く使えないという劣等感に苛まれていました。

そんなある日、女神様の使いである、望結と名乗る方が、お父様の持つ『真理の魔道具』を通して私を女神様の神託を受けるという栄誉を授けてくださいました。私は魔法が使えませんが神託を受けるには関係ないと言うことなので引き受けることにしました。

その三日後、突然、お父様から私に預けられた『真理の魔道具』が奇怪な音を立てて震え出しました。私は少々驚きましたが、望結様からこの魔道具の使い方を聞いていたので、慌てながらも、なんとか神託を受けるための準備を行なうことが出来ました。

『突然ですが神託を授けます。今現在、エブリミス王が何者かによって捕らえられています。急ぎ、アウディベル子爵の私兵を集めなさい。』

与えられた神託は予想外のもので、私は一大事と思い、すぐにお父様に知らせました。

私の話を聞いたお父様は慌てて私兵のいる兵舎へと使いの者を飛ばし、そうして集まったのが30人ほどのお父様の私兵。私としてはもっと人数がいても良いのではないかと思うのですが、あまりにも大人数で行くと怪しまれるとのことなのでこの人数にしたそうです。しかし、人数は少ないですが全員がお父様の目利きにかなった精鋭達です。

ラケシス様に兵を集めたと伝えると、声を大にし、驚くべき事を話し始めました。

『皆さんよく聞いてください。おそらく・・・いや、確実にあなた方が王城に行った際、エブリミス王があなた方を出迎えるでしょう。』

兵達がどよめく。お父様も同じように狼狽えている。何で王が捕らえられているのに王が出迎えるのでしょう。

と思っていたら次のラケシス様の言葉でさらに響めきは大きくなる。

『しかしそれはエブリミス国王の姿のみを真似た偽物。本物の国王は城の地下にある牢屋にて幽閉されています。』

「そ、それは本当なのですか。何かの間違いでは」

お父様が狼狽えながらもラケシス様に意見する。それを見たラケシス様は真面目な顔で頷く。

『ええ、間違いありません。その証拠に私達の使いである望結さんが、出迎えた国王が偽物だと見抜いた瞬間に捕らえられ、エブリミス国王の居る牢屋へと幽閉されました。』

なんということでしょう!女神様の使いの望結様が牢屋へと入れられてしまうなんて!こうしていられません!この世界では役に立たない能力を持った私に栄誉ある役目を与えてくれたあの方に報いるため、たとえお父様に反対されたとしても王城へ望結様を救いに行こう!と意気込んでいると

『ああそれと、スベルニールさんの力が無くては牢屋の檻を破ることは出来ないので』

私はラケシス様のお言葉で歓喜しました。国王エブリミス様と望結様を救い出す手助けが出来る。という栄誉を得られる喜び。そして

「も、もしかして私でなくては解けない魔法があるとか?!」

もしかしたら私だけが扱える魔法があるのではないか、それで牢屋からエブリミス王と望結様を救うのではないかと、期待に胸を膨らませましたが

『いえ、魔法でも破壊するのが困難なので、貴方の腕力で破壊して欲しいのです。』

その期待は空しくも儚く散りました。
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