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43話 私は本当の気持ちに気付いてしまう
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思わず部屋から出てきてしまったけど、兄様が決闘申し込んでたりしないかしら。
部屋を出る前の兄様の声のトーンからすると大丈夫だとは思うけど。
自室に戻る途中でも気になるのは兄様の事だった。
コアトレーニン様は兄様のご親友。
今回の件で一番ショックを受けたのは間違いなく兄様。
思わず怒ってしまったけど、本当はコアトレーニン様を責める資格など私には無い。
今回の件で私はコアトレーニン様に少しも心惹かれていない事がハッキリと理解ってしまった。
いえ、最初から理解っていたはず。
それなのに自らの打算でプロポーズに応じた。
コアトレーニン様の気持ちを知っていて利用してしまった。
私が最初から断っていれば、この様な事にはならなかった。
兄様を傷つける事は無かった。
私が兄様とコアトレーニン様の仲を裂いてしまった。
自室に戻ると窓辺に置いた椅子に腰を掛け、兄様の事を考えながら外を眺めていたら馬車が出ていくのが見えた。
コアトレーニン様はお帰りになられた様ね。
何事も起きなかった様で安心した。
それにしても疲れてしまったわ。
怒るって結構エネルギー使うのね。
その日の夕食時、兄様は終始無言だった。
私も話掛ける事が出来なかった。
夕食後はいつもどおりお風呂に入り自室に戻った。
本来ならここからは私のアイリタイムが始まる。
脳内アイリとおしゃべりを2時間程して、アイリの曲の脳内再生、アイリボイスの連続再生などなど夜の楽しみはいっぱい有る。
リアルアイリの為にアロマも作りたいけどそれは自室では出来ない。
現在開発中のアイリの為のお姉ちゃん印、特製ソープとか、なにげに今まで作って来なかったのが悔やまれる。
しかし、今日はアイリの事を考えられなかった。
考えてしまうのは兄様の事。
兄様が心配だった。
コアトレーニン様については申し訳ないと思う反面、見損なった感もあり、別に心に刺さらない。
兄様は食事はほとんど手をつけなかった。
きっと今頃お酒を飲んでいるだろう。
どうして兄様のことばかり考えてしまうのだろう?
どうして兄様に会いたいと思ってしまうのだろう?
先程まで一緒にいたのに。
私は居ても立っても居られず、せっかく着替えたネグリジェからメイド服に着替え直し、厨房に向かった。
そこでおつまみを作った私は、カートを使って兄様の寝室まで運ぶ。
そういえば此処に来るのは初めてだ。
兄様とはいえ、男性の寝室に嫁入り前の娘が入るなど、はしたない行動なのは判っている。
でも、兄様に咎めらたとしても兄様の事が心配でお仕掛けてしまった。
その為に久しぶりにメイド服に着替えたのだ。
今、目の前には兄様の寝室のドアがある。
この扉の向こうには兄様がいる。
どうしよう。
でも此処まできて帰るわけには……
勇気を出してノックしてみる。
返事はない。
力を使い気配を探ると、やはり兄様は中にいる様だ。
ドアノブに手を掛ける。
鍵は掛けられておらず、ドアが開いた。
テーブルに置かれたランプのみに照らされて、兄様は静かにお酒を飲んでいた。
「兄様……今日は有り難うございました。おつまみを持ってきたので食べませんか?」
「リリー有難う。でも身内とは言え、男の寝室に入ってくるものじゃない」
兄様のお咎めの言葉はとても静かで寂しげに感じた。
「もう入ってしまいました。私のお手製おつまみを食べられる機会なんてそうそうありませんよ」
テーブルを見るとすでに数本の空き瓶が置いてある。
相変わらずの蟒蛇ね。
こんなに部屋を暗くして飲んでいたなんて。
こうも暗くては気分が余計滅入ってしまうわ。
私は有無を言わせず、部屋中のランプに明かりを灯していく。
「リリー、一人にしてくれないか」
「ダメです。私が兄様と一緒に居たいんです」
「えっ?」
兄様が驚いた声をあげる。
今の驚き、ちょっと可愛かった。
兄様は不思議そうな表情で私を見つめいている。
「取り敢えず、自信作ですから食べて下さい。兄様の為だけに作ったんですよ」
私は兄様にそう言って微笑んでみた。
兄様は立ち上がると私の方に歩いてきた。
そして私の手を取ると跪き、手の甲にキスをした。
「あっ、兄様?」
「リリー有難う。リリーの事なのに当事者のリリーに気を遣わせてしまうなんて兄失格だね」
「兄様そんな。立って下さい」
兄様の手を引っ張り、立ち上がらせようとした。
単純に恥ずかしかったからだった。
「きゃ」
兄様を立ち上がらせようとしたのだけど非力な私の手がすっぽ抜けて私が転びそうになってしまった。
結果から言えば転ぶことは無かった。
立ち上がった兄様に抱きしめられ、支えられたから。
私を抱きしめる兄様の力が強くなる。
私はその行為を受け入れ、兄様の胸に顔を埋めた。
兄様の込める力が更に強くなった。
「あんっ」
それは私があげた喜びの声だった。
その瞬間、私は……わかってしまった。
私の本当の気持ちが。
私の居たい場所は此処なのだと。
「リ、リリー?」
恐る恐る兄様が私の名を呼ぶ。
「兄様。妹分の補給の日では無いですけど、嬉しいです……」
私は静かに兄様に答え、そして兄様の背に私も手を回し兄様を抱きしめる。
「兄様が可愛かったから今日は特別です」
「僕が……可愛い……?」
「はい。とっても」
兄様の腕に更に力が入った。
「ん」
心地よい苦しさと幸せを暫く感じていた。
不思議だと思う。
幼少期は望んで妹分の補給に付き合っていた訳じゃない。
でも今はこうされる事を望み、喜び、幸せを感じている。
答えは一つ。
でも恥ずかしくて直接私からは言えない。
「リリー、僕は……」
私は顔をあげ、兄様の顔を見た。
素直に愛おしいと思った。
兄なのに。
兄以上の感情を持ってる自覚がある。
「その潤んだ目は反則だ」
兄様が講義の声を上げた。
「うふふ。兄様が私の虜になったらいいなと思って。そしたら一生兄様に養ってもらえるでしょう」
「リリー……」
「私は今日の事で私の本当の気持ちに気付いてしまいました。私は他家に嫁ぎたくありません。私はここにいたい。この胸に顔を埋めて抱きしめられていたいです」
「……」
「……兄様のお気持ちをお聞きしたいです。兄様が望まれないなら」
私は言葉を遮られた。
兄様の口が私の口を塞いだから。
私はその行為も受け入れて目を閉じた。
どれくらいそうしていたのか、判らないけど兄様が私の口を開放した時、私は真っ赤になっていたと思う。
「望まない訳がない。可愛いよリリー」
「兄様は意地悪です」
「ははは、済まない。リリーが可愛いからつい」
気持ちが通じ合っていると思った。
抱きしめ会いながらの会話の内容は、もはや兄妹のものでは無いとも思った。
その事がとても嬉しい。
「もう、ちゃんと聞かせて下さい」
私の言葉に兄様の表情は真剣そのものになる。
その凛々しい顔にドキッとした。
「僕はリリーが好きだ、愛している。妹としても。女性としても。だからもう離さない」
あ、今胸がキュンとした。
私の心が完全に堕ちたと思った。
「ダン兄様。お慕い申し上げます。兄としても男性としても……」
私達は再び口づけを交わした。
「お酒の味がしました」
「飲んでいたからね。でも酔ってはいないから」
「はい……あの、余り見つめられると恥ずかしいです」
「僕もだよ。でも、リリーをずっと見ていたいんだ」
2度目のキスが終わった後、私は恥ずかしさのあまり抗議した。
兄様は私を抱きしめたまま離してくれない。
「妹のファーストキスとセカンドキスを奪ったんですから責任とって下さいね」
「妹のファーストキスとセカンドキス……イイ!」
あ、いつもの変態シスコン兄様に戻った。
でもそんな兄様が愛おしい自分も変態なんだろう。
「兄様の変態」
「はう、その視線もイイ」
もう、恥ずかしい。
私はまた兄様の胸に顔を埋める。
「僕はリリーを離さない。一生僕がリリーを養うよ」
「私も兄様の側から離れません」
2人の誓いの言葉。
自然と3度目の口付けになりそうになって……でもならなかった。
兄様のお腹の虫が鳴ったからだ。
「うふふ。おつまみ食べて下さいね」
「はは、有難う。」
この日私は兄様の恋人になった。
部屋を出る前の兄様の声のトーンからすると大丈夫だとは思うけど。
自室に戻る途中でも気になるのは兄様の事だった。
コアトレーニン様は兄様のご親友。
今回の件で一番ショックを受けたのは間違いなく兄様。
思わず怒ってしまったけど、本当はコアトレーニン様を責める資格など私には無い。
今回の件で私はコアトレーニン様に少しも心惹かれていない事がハッキリと理解ってしまった。
いえ、最初から理解っていたはず。
それなのに自らの打算でプロポーズに応じた。
コアトレーニン様の気持ちを知っていて利用してしまった。
私が最初から断っていれば、この様な事にはならなかった。
兄様を傷つける事は無かった。
私が兄様とコアトレーニン様の仲を裂いてしまった。
自室に戻ると窓辺に置いた椅子に腰を掛け、兄様の事を考えながら外を眺めていたら馬車が出ていくのが見えた。
コアトレーニン様はお帰りになられた様ね。
何事も起きなかった様で安心した。
それにしても疲れてしまったわ。
怒るって結構エネルギー使うのね。
その日の夕食時、兄様は終始無言だった。
私も話掛ける事が出来なかった。
夕食後はいつもどおりお風呂に入り自室に戻った。
本来ならここからは私のアイリタイムが始まる。
脳内アイリとおしゃべりを2時間程して、アイリの曲の脳内再生、アイリボイスの連続再生などなど夜の楽しみはいっぱい有る。
リアルアイリの為にアロマも作りたいけどそれは自室では出来ない。
現在開発中のアイリの為のお姉ちゃん印、特製ソープとか、なにげに今まで作って来なかったのが悔やまれる。
しかし、今日はアイリの事を考えられなかった。
考えてしまうのは兄様の事。
兄様が心配だった。
コアトレーニン様については申し訳ないと思う反面、見損なった感もあり、別に心に刺さらない。
兄様は食事はほとんど手をつけなかった。
きっと今頃お酒を飲んでいるだろう。
どうして兄様のことばかり考えてしまうのだろう?
どうして兄様に会いたいと思ってしまうのだろう?
先程まで一緒にいたのに。
私は居ても立っても居られず、せっかく着替えたネグリジェからメイド服に着替え直し、厨房に向かった。
そこでおつまみを作った私は、カートを使って兄様の寝室まで運ぶ。
そういえば此処に来るのは初めてだ。
兄様とはいえ、男性の寝室に嫁入り前の娘が入るなど、はしたない行動なのは判っている。
でも、兄様に咎めらたとしても兄様の事が心配でお仕掛けてしまった。
その為に久しぶりにメイド服に着替えたのだ。
今、目の前には兄様の寝室のドアがある。
この扉の向こうには兄様がいる。
どうしよう。
でも此処まできて帰るわけには……
勇気を出してノックしてみる。
返事はない。
力を使い気配を探ると、やはり兄様は中にいる様だ。
ドアノブに手を掛ける。
鍵は掛けられておらず、ドアが開いた。
テーブルに置かれたランプのみに照らされて、兄様は静かにお酒を飲んでいた。
「兄様……今日は有り難うございました。おつまみを持ってきたので食べませんか?」
「リリー有難う。でも身内とは言え、男の寝室に入ってくるものじゃない」
兄様のお咎めの言葉はとても静かで寂しげに感じた。
「もう入ってしまいました。私のお手製おつまみを食べられる機会なんてそうそうありませんよ」
テーブルを見るとすでに数本の空き瓶が置いてある。
相変わらずの蟒蛇ね。
こんなに部屋を暗くして飲んでいたなんて。
こうも暗くては気分が余計滅入ってしまうわ。
私は有無を言わせず、部屋中のランプに明かりを灯していく。
「リリー、一人にしてくれないか」
「ダメです。私が兄様と一緒に居たいんです」
「えっ?」
兄様が驚いた声をあげる。
今の驚き、ちょっと可愛かった。
兄様は不思議そうな表情で私を見つめいている。
「取り敢えず、自信作ですから食べて下さい。兄様の為だけに作ったんですよ」
私は兄様にそう言って微笑んでみた。
兄様は立ち上がると私の方に歩いてきた。
そして私の手を取ると跪き、手の甲にキスをした。
「あっ、兄様?」
「リリー有難う。リリーの事なのに当事者のリリーに気を遣わせてしまうなんて兄失格だね」
「兄様そんな。立って下さい」
兄様の手を引っ張り、立ち上がらせようとした。
単純に恥ずかしかったからだった。
「きゃ」
兄様を立ち上がらせようとしたのだけど非力な私の手がすっぽ抜けて私が転びそうになってしまった。
結果から言えば転ぶことは無かった。
立ち上がった兄様に抱きしめられ、支えられたから。
私を抱きしめる兄様の力が強くなる。
私はその行為を受け入れ、兄様の胸に顔を埋めた。
兄様の込める力が更に強くなった。
「あんっ」
それは私があげた喜びの声だった。
その瞬間、私は……わかってしまった。
私の本当の気持ちが。
私の居たい場所は此処なのだと。
「リ、リリー?」
恐る恐る兄様が私の名を呼ぶ。
「兄様。妹分の補給の日では無いですけど、嬉しいです……」
私は静かに兄様に答え、そして兄様の背に私も手を回し兄様を抱きしめる。
「兄様が可愛かったから今日は特別です」
「僕が……可愛い……?」
「はい。とっても」
兄様の腕に更に力が入った。
「ん」
心地よい苦しさと幸せを暫く感じていた。
不思議だと思う。
幼少期は望んで妹分の補給に付き合っていた訳じゃない。
でも今はこうされる事を望み、喜び、幸せを感じている。
答えは一つ。
でも恥ずかしくて直接私からは言えない。
「リリー、僕は……」
私は顔をあげ、兄様の顔を見た。
素直に愛おしいと思った。
兄なのに。
兄以上の感情を持ってる自覚がある。
「その潤んだ目は反則だ」
兄様が講義の声を上げた。
「うふふ。兄様が私の虜になったらいいなと思って。そしたら一生兄様に養ってもらえるでしょう」
「リリー……」
「私は今日の事で私の本当の気持ちに気付いてしまいました。私は他家に嫁ぎたくありません。私はここにいたい。この胸に顔を埋めて抱きしめられていたいです」
「……」
「……兄様のお気持ちをお聞きしたいです。兄様が望まれないなら」
私は言葉を遮られた。
兄様の口が私の口を塞いだから。
私はその行為も受け入れて目を閉じた。
どれくらいそうしていたのか、判らないけど兄様が私の口を開放した時、私は真っ赤になっていたと思う。
「望まない訳がない。可愛いよリリー」
「兄様は意地悪です」
「ははは、済まない。リリーが可愛いからつい」
気持ちが通じ合っていると思った。
抱きしめ会いながらの会話の内容は、もはや兄妹のものでは無いとも思った。
その事がとても嬉しい。
「もう、ちゃんと聞かせて下さい」
私の言葉に兄様の表情は真剣そのものになる。
その凛々しい顔にドキッとした。
「僕はリリーが好きだ、愛している。妹としても。女性としても。だからもう離さない」
あ、今胸がキュンとした。
私の心が完全に堕ちたと思った。
「ダン兄様。お慕い申し上げます。兄としても男性としても……」
私達は再び口づけを交わした。
「お酒の味がしました」
「飲んでいたからね。でも酔ってはいないから」
「はい……あの、余り見つめられると恥ずかしいです」
「僕もだよ。でも、リリーをずっと見ていたいんだ」
2度目のキスが終わった後、私は恥ずかしさのあまり抗議した。
兄様は私を抱きしめたまま離してくれない。
「妹のファーストキスとセカンドキスを奪ったんですから責任とって下さいね」
「妹のファーストキスとセカンドキス……イイ!」
あ、いつもの変態シスコン兄様に戻った。
でもそんな兄様が愛おしい自分も変態なんだろう。
「兄様の変態」
「はう、その視線もイイ」
もう、恥ずかしい。
私はまた兄様の胸に顔を埋める。
「僕はリリーを離さない。一生僕がリリーを養うよ」
「私も兄様の側から離れません」
2人の誓いの言葉。
自然と3度目の口付けになりそうになって……でもならなかった。
兄様のお腹の虫が鳴ったからだ。
「うふふ。おつまみ食べて下さいね」
「はは、有難う。」
この日私は兄様の恋人になった。
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