大聖女様 世を謀る!

丁太郎。

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74話 聖騎士である私の竜退治1

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 ミリーの奇跡によりイビルリザードを撃退してから皆の士気が上がっている。
 皆が勝てると思っている。
 かく言う私もその一人。
 疲労以上に高揚感が強く、剣がいつもより軽く感じる。

「皆!もう少し!もう少しで私達の勝ちよ!」

「「「「「おおーーー!」」」」」

 私の鼓舞に皆も応えてくれるのが気持ちいい。

 英雄の登場、それだけで戦況がひっくり返ることがある。
 王であるお父様から昔聞いた話だったか。
 そんな事が本当に起こるのね。
 英雄は言うまでもなくミリー。
 その力が大きければ大きいほど効果は大きく、味方の士気をあげると言う。

 ミリーが使った奇跡は味方の士気をどれだけ上げただろう?
 皆が聖紋の凄まじさを目の当たりにした。
 その威力に誰もがミリーを神の使いと思っただろう。
 この国に大聖女が降臨したと。

<ふふふ、ミリー、派手にやったわね。こんなに目撃者が居るのだもの。もう誤魔化す事は出来ないわ>

 私達はガンガン敵を狩っていった。
 そしてソレを誰かが発見した。
 誰かが、という表現はおかしいわね
 多くの者が見たのだろうから。

 今までの勝ち戦の雰囲気が消し飛んだのが判った。
 それはそうだ、遠目にもあれがドラゴンであると誰もがわかる大きさだ。
 しかも赤い。
 もっとも獰猛なレッドドラゴンなのは一目瞭然だった。
 灼熱のドラゴンブレスを食らったら人間なんて一溜りもない。

 <皆の前にたどり着く前に倒すしかないわ!>

 きっと、あのドラゴンがダンジョンの真のボス。
 あのドラゴンの向こうにはもうモンスターは居ない筈。
 どの道、アイツを倒すしか道はない。
 アイツ1匹で都市を蹂躙するのに何の問題は無い。

<ルキメデ達はドラゴンを狩った。彼らに出来て私達に出来ない筈はないわ。それがレッドドラゴンだったとしても>

 根拠があるわけでは無いけどやる気は出てきた。

 <アイツを倒す!>

「リリエナスタ様!」 

 決意を固めた時、私は誰かに呼び止められた。
 戦場なのに良く通る声。
 聞き覚えはない、と思う。

「此処よ!」

 私はとりあえず返事をした。

「私はミリー様の使いの投擲士です!ミリー様よりお預かりしたポーションを今より投げます。受け取って下さい!」

 声の直後、声の方向からポーションが飛んできた。
 私の声から位置を正確に把握し、私の取りやすい位置に投げてよこした腕前は大したもの。
 欲をいえば、コチラも戦闘中なのでタイミングは私主導にして欲しかった。
 カリスとプレゼがフォローしてくれたからいいけど。

「受け取ったわ!ありがとう!」

 ミリーの寄越したポーションを見た時、戦慄が走った。
 王家の保管庫にある物と全く同じだったからコレが何なのか直ぐに判った。

 『生命力エリクサー』

 間違いようもなく本物だった。
 ミリーがコレを寄越した意図は間違いなくアイツを狩れということだろう。

 私だけでなく、カリス、プレゼ、クーン、ミルファにもそれぞれ生命力エリクサーが投げて寄越された。

「皆、貰ったポーションを飲んで! 飲んだらアイツの元に突入するわ!クーン貫通系の魔法で道を作って!」

「判った!少し待って!」

 最初にクーンが生命力エリクサーを飲むと、そのまま魔法の詠唱を開始した。
 その間に私達はフォローし合いながら、生命力エリクサーを飲む。

「行くわよ!跳ね飛ばせ!『風の暴走輪』」

 その声と共に車輪が転がるかの様に縦回転の巨大な風の渦巻がモンスター達を跳ね飛ばしながら、ドラゴンに目掛けて転がっていく。

 風の車輪を追って、私達も続く。
 残念ながら、ドラゴンまでもう少しの所で風の車輪は消えてしまった。

「突破するわよ!」

 此処からはエリクサーの力を信じて無理押しするのみ。

「前を行くよ!」

 プレゼが金棒を振り回しながら突撃をかける。

「皆、先に行って殿を行くわ!」

 プレゼを先頭に突破を図る。
 敵の攻撃を禄に防御しないでエリクサーの回復力を頼りドラゴンを目指す。
 さすがエリクサー、攻撃を受けた瞬間こそ痛みはあるがすぐに回復してしまう。
 転倒や、即死だけ気をつければ良さそうね。

「マズイ、リリー! 気づかれた!」

 カリスの言葉の直後ドラゴンブレスが私達を襲った。
 視界が白で覆われる。ブレスに飲まれ何も見えない。

 ああ、こんな所で終わるなんて!
 お父様、ミリー!
 あとはお願い!

 私は死んだと思った。
 でも、それは思っただけだった。

 何故熱くないの?

 それに私まだ生きてる?

 死んだと思った瞬間に瞑ってしまった目を開く。
 私は生きていた。
 それどころかなんの怪我も火傷もしていない。

「ミリー!」

 直ぐに彼女の仕業だと思った。
 私達は蒼い光に包まれていた。
 その光の加護でドラゴンの灼熱のブレスを無効化していたのだった。
 そう言えば、昨日ミリーに背中を叩かれたけど、その時に聖紋の加護を授かったのね。

「皆!ミリーの加護を授かっているわね!」

 全員一様に蒼く光っていて炎を無効化していた。
 私達の周囲にいたモンスターはブレスの餌食になり、逆にドラゴンまでの道が開けていた。

「ミリーの加護があるわ!きっと倒せる!行くわよ!」

「応!」「ああ!」「ええ!」「はい!」

 それぞれが戦意を漲らせた返事を返してくれた。
 私達は再びドラゴンに向かう。

 私達を守ってくれた蒼い光が収まった時、私達の防具は青く輝く鎧に変わっていた。
 それはまるで私達のパーティー名『青薔薇の戦乙女』の様だった。
 ミリー、貴女これ狙ってやったわね。
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