大聖女様 世を謀る!

丁太郎。

文字の大きさ
72 / 84

70話 大賢者である私にはやっぱ攻めが似合う

しおりを挟む
 ん? よく考えたらポーションを全部、不思議な光の精霊モードのオトプレちゃんに運ばせれば職質なんて受けなかったんじゃね?
 と、思った。
 今更なんだけどね。
 
 私は回復班をサファたんに任せ、防壁の上に来ている。
 防陣の方はといえば、ジリジリと押し返している最中。
 オトプレちゃんの作った回復陣は、疲労も綺麗さっぱり回復してしまうからねー。
 それが判ったからか、疲れが溜まった人も回復に向かっている様だ。
 敵もだんだん強くなっているようだけど、こちらの殲滅速度も上がっている。
 理由は簡単、宰相のお爺さんと、クーンがえせ薬を飲んだかららだね。
 二人のところから大魔法がバンバン飛んでいく。
 出どころを知らないとはいえ、私の魔力を遠慮無く使うね、全く。
 まあ、あの程度の魔法なら1発あたり、私が1日に自然生成する魔力の1%くらいだけどね。
 現在の私の魔力ストックは毎日魔力を自然生成した量の15年分だ。
 だから、13人に魔力供与したところでビクともしませんよ。
 彼女達の使用する蛇口は口が小さいからね。

 そういえばさっきクーンの奇声が聞こえたけど、聞かなかったことにしておこう。
 私の為にも、彼女の為にも。
 これは封印されるべき記憶………のはず。

「聖女様」

 話掛けられた。
 この声は都市長さんかな?
 今、大事なところなんだけどな。

「都市長さん、こんにちは」

 顔が合うと都市長さんは少し困ったような表情をした。
 なんだろうね。

「回復班の様子を上から見ておりました。聖女様のお力で一気に押し返す事が出来ました。有難うございます」

 その声は嬉しそうだ。
 悪い気はしないんだけどさ。
 まだ先は長いよ?

「気を抜いちゃダメだよ。まだ始まったばかりだから」

「え…」

「忘れているの?まだ1個目のダンジョンだから4個分が残ってるよ?」

 その言葉に都市長の顔は一気に真っ青になった。

「地震が立て続けに起こったと聞いたから、ほぼほぼ同時にスタンピード起こすからね。一気に今の4倍くるよ」

 恐らく、そうなるだろう未来を話しておく。
 それが向こうの意図だろうからね。

「聖女様には勝算がお有りでしょうか?」
 
 恐る恐る都市長さんが聞いてきた。
 私に勝算を聞いてどうするの?
 指揮は将軍さんが採ってるんでしょうに。
 まぁ親切な私は考えの一部を話しておくことにしようか。
 逆に今は、それ以上の事は言えない。

「私が賭けに勝てば、かなぁ」

「掛け、ですか……」

「今は賭けに勝つことを祈っていて。あと今は大事なところだから少し集中させてね」

「判りました」

 都市長さんは私に期待をしているようだけど、期待する相手は私ではないよ。
 全ては彼女次第だ。 

 今の内にモンスターの群れの観察しておこう。
 ふむふむ、悪魔族はいない。
 やはり、悪魔族は魔王直属と見たほうがいいかな。
 となると、このダンジョンのラスボスでも出てこないだろう。
 このダンジョン本来のラスボスってなんだろうね。

 その時モンスター群れの中にトカゲぽいのがいることに気付いた。
 おや、あればヤバいヤツ、略してヤバツーだね。
 
『オトプレちゃん、魔法いくよー。こっそりねー』

『ふう、この面積やるつもり?』

『上端1.5mだけでいいよー』

 コレだけで意思疎通が成立するのは便利だね。
 やっぱ、回復ばっかじゃーね。
 私は攻める方が性に合ってるよ。
 
 そして案の定、奴らは来た。
 防陣側でも気づいたみたいだけど、気づくのが遅いよね。
 私がいなかったら詰んでたよ。
 モンスターが外壁を登らないとは限らないでしょうに。
 あと飛行、浮遊タイプもいるかも知れない。
 そっちの備えはオトプレちゃんがしてるし、そこの弓部隊もいるから心配してないけどね。
 幸い今回、飛んでくるのはいないようだ。
 しかしトカゲ達が防陣がない側の壁を登って来た。
 
 防陣の方でも騒いでいる。
 
 まぁ、乗り越えられたら終わりだからね。
 乗り越える事が出来た、ならね。

 トカゲ達の一匹が外壁上端に手をかけた瞬間、オトプレちゃんは魔法を発動させた。
 外壁上端1.5M区間に魔法陣が浮き出る。
 そして魔法陣から突風が吹き出す。
 トカゲなど一瞬で吹き飛ばす風力だ。
 意にも介さず乗り越えようとし、強制で吹き飛ばされて次々に背中から地面に落下していくトカゲ達。
 習性で動いているのでしょうがないけど、おバカさんだね。
 自ら進んで罠に飛び込んでいくのだ。

 トカゲの名前は正確にはイビルリザードだったかな。
 名前に反して3悪属性では無いけど、天井に張り付いて居ると気づかない事があるし、背後から音も無く襲って来る事もある。
 人間の手足なんか簡単に食いちぎる強靭な顎を持つ、素早くて割と危険な奴だ。
 
 哀れトカゲ達は地面や他のモンスターに当たり光の粒となって消えていく。

 オトプレちゃんが使ったのは、

防壁魔法『振り出しに戻る。いやむしろ地獄に進むかな?』

である。

 歓声が上がった。
 手を上げて応えておくことにしよう。
 オトプレちゃんの手柄は私の手柄、私の手柄は私の手柄なのだ。
 悪い気はしないけど、守りに専念してね。

 私は気を良くしつつ、遠くを見た。
 そして、モンスターの群れの最後端を確認した。
 
 お!もうちょっとでダンジョン1個目終わるね。
 他の階層のボスはクーンと宰相の魔法で殺ってしまってるのかな。
 そして群れの後端のその向こうに、大きなのがいるのが見えた。

『オトプレちゃんさぁ、あれ何だと思う?』

『マスターの大好きな奴ね』

『あ、やっぱそう見える?』

『ええ、それ以外には見えないわね』

 やっぱそうか。
 オトプレちゃんは私の大好きな奴と言ったけど、私が大好きなのは天然の方なのであって、ダンジョンモンスターの方じゃないけどね。
 ダンジョンモンスターって倒すと光の粒になって消えちゃうじゃないの。
 折角ドラゴンは素材の宝庫なんだからさぁ、素材が入らないドラゴンなんて意味無いよ。
 無駄にタフでメンドイだけじゃん。
ましてやドラゴンの中でも獰猛なレッドドラゴンなんて、なおさらメンドイだけだよね。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました

鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」 そう言ったのは、王太子アレス。 そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。 外交も財政も軍備も―― すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。 けれど功績はすべて王太子のもの。 感謝も敬意も、ただの一度もない。 そして迎えた舞踏会の夜。 「便利だったが、飾りには向かん」 公開婚約破棄。 それならば、とレイナは微笑む。 「では業務も終了でよろしいですね?」 王太子が望んだ通り、 彼女は“確認”をやめた。 保証を外し、責任を返し、 そして最後に―― 「ご確認を」と差し出した書類に、 彼は何も読まずに署名した。 国は契約で成り立っている。 確認しない者に、王の資格はない。 働きたくない公爵令嬢と、 責任を理解しなかった王太子。 静かな契約ざまぁ劇、開幕。 ---

五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~

放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」 大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。 生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。 しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。 「すまない。私は父としての責任を果たす」 かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。 だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。 これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】乙女ゲーム開始前に消える病弱モブ令嬢に転生しました

佐倉穂波
恋愛
 転生したルイシャは、自分が若くして死んでしまう乙女ゲームのモブ令嬢で事を知る。  確かに、まともに起き上がることすら困難なこの体は、いつ死んでもおかしくない状態だった。 (そんな……死にたくないっ!)  乙女ゲームの記憶が正しければ、あと数年で死んでしまうルイシャは、「生きる」ために努力することにした。 2023.9.3 投稿分の改稿終了。 2023.9.4 表紙を作ってみました。 2023.9.15 完結。 2023.9.23 後日談を投稿しました。

【完結】赤ちゃんが生まれたら殺されるようです

白崎りか
恋愛
もうすぐ赤ちゃんが生まれる。 ドレスの上から、ふくらんだお腹をなでる。 「はやく出ておいで。私の赤ちゃん」 ある日、アリシアは見てしまう。 夫が、ベッドの上で、メイドと口づけをしているのを! 「どうして、メイドのお腹にも、赤ちゃんがいるの?!」 「赤ちゃんが生まれたら、私は殺されるの?」 夫とメイドは、アリシアの殺害を計画していた。 自分たちの子供を跡継ぎにして、辺境伯家を乗っ取ろうとしているのだ。 ドラゴンの力で、前世の記憶を取り戻したアリシアは、自由を手に入れるために裁判で戦う。 ※1話と2話は短編版と内容は同じですが、設定を少し変えています。

処理中です...