世界最強の魔女は争い事に巻き込まれたくないので!邪竜と無自覚に英雄を育てながらひっそりと暮らしたい

赤羽夕夜

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喧嘩両成敗!

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「おい、ガキども!喧嘩をやめろ。怪我をしようが構わんがエミリアに叱られるぞ。それにしようのない喧嘩で家の前を汚すな。......せっかくいい天気だから外で酒でも飲もうとおもったのに......ったく」

「離せよ、ファフニール!」

「そうだ!こいつをもう何発か殴らないと俺の気が収まらない!」

なんか庭の方が騒がしいと思って様子を見てみると、まるで猫の首を掴むような感じでアースとアールの首根っこを掴んでいるファフくん。



なに、何事?喧嘩?そういえば、アールとアースの頬に殴ったような後がある。ファフくんが殴るとあれだけじゃすまないし、お互いが殴り合ったのだろう。



「どうしたの。暴力はいかんじゃろ~」



永い時を生きた賢者のような口調で3人に駆け寄る。私に気づいたファフくんは、空中にぶら下げていた二人から手を話すと、どすんと尻から盛大落ちる。



アースとアールは尻をさすりながら互いが威嚇し合うように立ち上がった。



最初にアールが口を開いた。

「だってさぁ~アースのやつが急に殴ったから殴り返したんだよ!そしたらアースのやつがキレ始めやがって!考え方が暴力的なやつってホント手がつけられないよな~」

「んだとッ!もっぺん行ってみろよ!次は歯折れるまで殴ってやるからよ」

「......話が見えて来ないんだけど。私が聞きたいのは殴りたい理由ではなくて、なんで喧嘩が起こったのかが聞きたいの。正当性のある殴り合いならそのまま続けていいけど。それじゃあ、話が先に進まないでしょ?」



そう諭すと両者の気持ちが幾分んか和らいだようで、怒りでこわばった肩の力が抜けたようだった。肩を落とした両者。



「で、話を聞くけど。まずどっちが先に殴ったの」

「......アースがさぁ――」

「はい、待って。先に殴った方の話が聞きたいから。言い分はその後に聞くよ。......で、アースはなんでアールを殴ったの?」

「......こいつが畑で成長魔法の練習をしていたレイナの邪魔をした。育てている植物をかたっぱしから成長を阻害する魔法を掛けてた。一生懸命やってるやつの邪魔をするのが許せなくて......!この馬鹿は拳じゃないとわからないんだ!」

「だからって殴ることないだろう!口で言えばいいじゃんか!」

「口でいっても懲りないだろ!これで何回目だよ!レイナを虐めるのもいい加減にしろよ!あいつ、泣いてたんだからな!」



話を聞く限りではアールの方が悪いような気がするけど。一応彼の言い分も聞いてみよう。

「アールの言い分は?レイナの邪魔をしたの?」

「......授業が終るといっつも畑の方にいって俺らと話する機会も減ったから......面白半分で......魔法は使いました」



まぁ、これはアールが悪いな。アースも過剰に暴力をし過ぎだけど、嫌がっている女の子に嫌がらせをするのはさすがにない。



年頃の男の子だし、同世代の異性に構ってもらえなくて嫌がらせしたのだろうか。アールはちょっと調子に乗りすぎるところがあるからな~。



顔を下に向けて目を合わせないアールの前にしゃがんで、視線を合わせる。そっと、アールは顔をあげた。いつも調子のいい言葉を並べる口は泣きそうにへの字に曲がっていた。



「それはいいことだと思ってる?」

「......駄目なこと、です」

「自分がやられたらどう思う?」

「......ムカつくし、嫌だ」

「それを他人にやっちゃ駄目でしょ。誰かの努力を踏みにじったり、それを嘲笑う行為は人して絶対にしてはいけないこと。その行動をして、相手がどう思うかまで考えないと駄目よ。わかった?」

「ごめんなさい」

「......それはきちんとレイナに謝ること。いいね?」



ぶわり、と大粒の涙が零れる。普段叱ることとかあまりないから怖かったのだろうか。その涙には偽りがなかったから、これ以上はなにも言うことはない。



続いてアースの方に向き直った。怒られるのだろうかと、緊張した様子で居住まいを正した。



「アースも。過剰な暴力は疑われる元。......これは私がいえた義理ではないけど。まずはトラブルが起きたら体を先に動かすのではなく、頭を動かしなさい。まずは対話する。対話をしてダメであれば暴力ではなく、行動で正義を示すの」

「俺も過剰に反応しすぎた。......ごめん、アール」



意外に素直に聞き入れてもらえて拍子抜けしたけど、これで一件落着かな。後はアールがレイナに謝罪すれば完全解決だ。



「身内だからこれだけで済んだけど、これを知らない人や外の世界でやらないようにね。外の世界の人間は身内のようにあなたたちのことを完全に理解しているわけではない。中には感情的に物事を判断する人がいるのだから。誤解されないように、外では理性的に行動すること」



私はともかく、子供たちはもうすぐここから旅立つ。だから、外でトラブルを起こさない術をこうやって口で教えておくしかない。子供たちは心中を察してくれたのだろうか、大きく頷いた。



あとは......。

「ファフくん?別件だけど、子供の教育上よくないから家に滞在する間は、陽があるうちは子供たちの前でお酒は飲まないって約束したよね?......さっき物騒な独り言が聞こえたんだけど?」

「ん”ん。はて、なんのことやら。ガキたちの仲裁で忘れてしまったぞ」

「ファフくん?」



約束を破って酒盛りしようとしたことを問い詰めよる。といか人の目がないところで飲んでたの!?



「ガキたちのことが心配だな。どれ、様子にでも見に行ってやろう。また喧嘩されては僕の平和な時間が邪魔されてしまうからな」

ファフくんは私から目を逸らし、続けて言おうとした言葉を遮って背を向けた。レイナの方に向かったアールとアースを追いかける為だろう。



「わざとらしい......」



逃げるように走り消えていた庭には私一人だけ取り残された。



......はぁ、することないし。散歩でもしてこようか。一人でいてもすることがないので、そのまま散歩がてら死海の森の見回りに行くことにした。
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