世界最強の魔女は争い事に巻き込まれたくないので!邪竜と無自覚に英雄を育てながらひっそりと暮らしたい

赤羽夕夜

文字の大きさ
上 下
8 / 48

今日は、魔法の練習

しおりを挟む
――子供たちを拾って1年が経った。子供というのはスポンジのように知識の吸収が早いもので。魔力の扱い方はもちろん、魔法の使い方やそれを応用した、私オリジナルの生活魔法まで使えるようになっていた。



今では野菜程度であれば成長魔法を使って育てられる程度には全員が魔法を使えている。皇国では魔法が使える人間は聖女である私やミーユを加えて100人程度しかいない。



皇国全土の人口は正確な数字はわからないが…...100万人くらいはいると皇帝から聞いたことがある。それと比べれば、この子たち……超優秀な魔法士の人材じゃないか?



レオンを始め、カール、アール、アース、レイナ......経った1年ちょっとでよくここまで成長したものだ。お姉さん嬉しいよ......。



レオンは魔法というよりは身体を動かす方が好きらしく、魔法を使うというよりは剣術や体術を学ぶ方が性に合っているみたい。でも魔法が使えないわけではないし、魔法と剣術を組み合わせた魔法剣士とか将来的になれそうな気がする。



カールは無口だが、勉強が好きなようで、暇さえあれば購入した本を読み漁っていた。魔法はもちろん、世界情勢などにも最近は興味があるようで。様々な国の言語を習得しようとしている。将来は有能な文官に慣れそうだ。



アールはお喋りで要領がいい。体術はもちろん、魔法もそつなくこなす。



紅一点のレイナは植物を育てるのが好きで、この森にある野草や木の種類はもちろん、薬の調合などに興味があるようだ。甘えん坊で自分に無頓着なところがある。



アースは喧嘩っ早いが仲間思い。少々がさつなところもあるが、努力家な一面もある。付き合えば好感が持てるガキ大将タイプだろう。乱暴な口調はちょっと直して欲しいかな。



そんな5人の子供と今日は森で野草の採集と、金策としてのポーション作り、そして授業がてら新魔法の開発に勤しむ。



「ふぅむ。市場では下級ポーションが出回ってて、軽度の怪我であれば治せる程度の効能を持つ......か。銀貨5枚で販売されているとなれば、効率的に稼げないかなぁ」

「だったら、貴族をターゲットにした、上級ポーションを作ればいいと......思う。森の中にある材料できるし、少量、高額販売......質のいい商品を売れば……イける」

「よしよし、カールは賢いねぇ。それなら森を複数回出なくて済むし、販路を確保して少量流通させれば儲けられるわ」

「でも、街まで運ぶにはどうするの?ポーションなんて高級なものを子供の私たちが持っていれば、野盗がでた時とかに対処しきれないじゃない。傭兵も信用出来ないし。いい餌食だわ」



なんて、娯楽費の基盤となっているポーションの販路について今日は議論をしていた。この世界の本って高価だし、欲しいものを買うにはお金がかかる。レイナとアールと会話をしていると、服の裾を引っ張る影が背後にひとつ。



「どうしたの、レオン。そんな不服そうな顔をして」

「今の時間は魔法の練習に付き合ってくれる約束だろ?お金の話は大切だけど、俺ももっと強くなりたいから……」

「ああ、そうね。じゃあ、今日は火の攻撃魔法を覚えましょうか。火属性は火起こしとかにも役に立つし、基礎中の基礎だからすぐに覚えられるわ」

立ち上がると、今度は物寂しそうに見上げるカール。

「あ……姉さん」

なにか言いたげに口を開いたり、閉じたりする。どうしたんだろう。理由を聞こうとすると農園の方角からアールの声が。振り返るとこちらに手を振っていた。

「姉さ~ん!ちょっとこっち来てくんない?成長魔法つかったらトマトが変な風に育ってさぁ~」

「順番対応するから!レオン、魔法は後で教えるわ。とりあえず、魔力を体内に貯める練習をしていて。カールも落ち着いたら話を聞くから。アール!その用事は緊急なの!」

「そう!成長魔法を使ったらトマトの茎とかがうねうねって動いてて大変なの!」

「魔力を込めすぎたのよ!死海の森は魔素濃度が濃いから成長魔法を使う場合、力加減を間違えると稀に魔物化することがあるの。いますぐ行くから……!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

私はもう必要ないらしいので、国を護る秘術を解くことにした〜気づいた頃には、もう遅いですよ?〜

AK
ファンタジー
ランドロール公爵家は、数百年前に王国を大地震の脅威から護った『要の巫女』の子孫として王国に名を残している。 そして15歳になったリシア・ランドロールも一族の慣しに従って『要の巫女』の座を受け継ぐこととなる。 さらに王太子がリシアを婚約者に選んだことで二人は婚約を結ぶことが決定した。 しかし本物の巫女としての力を持っていたのは初代のみで、それ以降はただ形式上の祈りを捧げる名ばかりの巫女ばかりであった。 それ故に時代とともにランドロール公爵家を敬う者は減っていき、遂に王太子アストラはリシアとの婚約破棄を宣言すると共にランドロール家の爵位を剥奪する事を決定してしまう。 だが彼らは知らなかった。リシアこそが初代『要の巫女』の生まれ変わりであり、これから王国で発生する大地震を予兆し鎮めていたと言う事実を。 そして「もう私は必要ないんですよね?」と、そっと術を解き、リシアは国を後にする決意をするのだった。 ※小説家になろう・カクヨムにも同タイトルで投稿しています。

三歳で婚約破棄された貧乏伯爵家の三男坊そのショックで現世の記憶が蘇る

マメシバ
ファンタジー
貧乏伯爵家の三男坊のアラン令息 三歳で婚約破棄され そのショックで前世の記憶が蘇る 前世でも貧乏だったのなんの問題なし なによりも魔法の世界 ワクワクが止まらない三歳児の 波瀾万丈

【完結】人々に魔女と呼ばれていた私が実は聖女でした。聖女様治療して下さい?誰がんな事すっかバーカ!

隣のカキ
ファンタジー
私は魔法が使える。そのせいで故郷の村では魔女と迫害され、悲しい思いをたくさんした。でも、村を出てからは聖女となり活躍しています。私の唯一の味方であったお母さん。またすぐに会いに行きますからね。あと村人、テメぇらはブッ叩く。 ※三章からバトル多めです。

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

追放された引きこもり聖女は女神様の加護で快適な旅を満喫中

四馬㋟
ファンタジー
幸福をもたらす聖女として民に崇められ、何不自由のない暮らしを送るアネーシャ。19歳になった年、本物の聖女が現れたという理由で神殿を追い出されてしまう。しかし月の女神の姿を見、声を聞くことができるアネーシャは、正真正銘本物の聖女で――孤児院育ちゆえに頼るあてもなく、途方に暮れるアネーシャに、女神は告げる。『大丈夫大丈夫、あたしがついてるから』「……軽っ」かくして、女二人のぶらり旅……もとい巡礼の旅が始まる。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

「不細工なお前とは婚約破棄したい」と言ってみたら、秒で破棄されました。

桜乃
ファンタジー
ロイ王子の婚約者は、不細工と言われているテレーゼ・ハイウォール公爵令嬢。彼女からの愛を確かめたくて、思ってもいない事を言ってしまう。 「不細工なお前とは婚約破棄したい」 この一言が重要な言葉だなんて思いもよらずに。 ※約4000文字のショートショートです。11/21に完結いたします。 ※1回の投稿文字数は少な目です。 ※前半と後半はストーリーの雰囲気が変わります。 表紙は「かんたん表紙メーカー2」にて作成いたしました。 ❇❇❇❇❇❇❇❇❇ 2024年10月追記 お読みいただき、ありがとうございます。 こちらの作品は完結しておりますが、10月20日より「番外編 バストリー・アルマンの事情」を追加投稿致しますので、一旦、表記が連載中になります。ご了承ください。 1ページの文字数は少な目です。 約4500文字程度の番外編です。 バストリー・アルマンって誰やねん……という読者様のお声が聞こえてきそう……(;´∀`) ロイ王子の側近です。(←言っちゃう作者 笑) ※番外編投稿後は完結表記に致します。再び、番外編等を投稿する際には連載表記となりますこと、ご容赦いただけますと幸いです。

処理中です...