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野外合宿開始
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――初夏。
野外合宿初日。
フィオーレ学園の1年生は校舎前に集められ、移動用の大型の馬車が用意されていた。
野外合宿で必要な最低限の荷物をもって私を含む野外合宿の参加生徒は引率の先生たちの話に耳を傾けた。
今日から2泊3日、ノエル王国の東にある森まで馬車で移動し、そこを始点として班ごとに分かれて行動する。
サバイバル生活をしながら先生たちが書いた地図を元にゴールまで目指すといった内容だ。
水は竹でできた水筒を1個ずつで班人数分、なくなれば自分で調達することになる。食糧も必要最低限の少量の穀物以外は現地調達となる。
後は緊急用の精神系の魔法が付与された札を班にひとつ渡された。
不測の事態が起こればこれを使って危険を知らせるためだ。ただし、使えば合宿中の出席には影響がないが、合宿中に得られる単位はゼロになってしまう。
なので、本当に緊急の時しか使えないのだ。その事項を念頭に置いて先生から渡された札を受け取った。
札が生徒に全員に渡し終わるとさっそく馬車に乗り込み合宿の舞台となる場所へ向かった。
――――――――――――――――――――――――――
「――ここが合宿場所。......想像はしていたけど」
マリアとふたりっきり、馬車から降ろされた場所は深緑の葉が生い茂り、植物が盛んに
生えた森の中。ノエル王国の東にある森で名前は「魔女の森」だったか。
古に存在した魔女が昔この森に棲んでいたことでその名がつけられた。
今は王国が管理しているので、人為的な危険はないに等しく、貴族の男女が2、3日サバイバル生活をしていても護衛がいれば危険はないといわれるほど。
自給自足をするにはもってこいの場所で、フィオーレ学園の伝統的な行事でよく使われている森......らしい。
手に持っていた地図に目を通し、今立っている森の入り口から少し進んだ場所につけられている×マークを目印を目標にさっそく森に足を踏み入れる。
「ミリアーナ様、待ってください」
マリアは頭数に入れていなく、一人で行動してしまう私に制止をかけるマリア。
背に背負っている大きなリュックを大変そうに揺らしながら小走りで走ってきた。
「......マリアさん。その大荷物どうしたのですか」
「ああ、これですか?お弁当に暇つぶしの本、休憩の時に食べるお菓子。化粧品と髪飾りとシャンプーや化粧水、着替えなど必要なもの一式。後は火魔法が付与された調理器具と......」
「待って。着替えやアメニティグッズ、かさばらないものならともかく、お弁当や本は必要あって?あなた合宿のしおり読んだ?」
「はえ?......はい。必要最低限のものと書かれていたのでもってきたのですが」
きょとんとしたマリアの表情に苛立ちが積もるがぐっと言葉を胃袋の中まで飲み込む。
あくまで理性的に荷物に対しての指摘をした。
「あなた合宿の意図わかっている?貴族としての忍耐や精神を鍛えるために野外合宿は行われるのよ?本とか必要ないでしょう。ずっと歩き詰めなのよ?」
「ええッ!私初めて参加するのでよくわかっていませんでした......。ただ外で生活するだけじゃないのでしょうか?」
根っからのお嬢様とはこうも後先考えないで荷物を準備するものなのだろうか。大切そうにリュックから本を数冊取り出し抱きしめるマリアの先行きに不安しかなかった。
そしてこの合宿をどうも甘く見ているようだし、どこか他力本願な考えがあるとしか思えない。......不安が募り募ってついに口から本音がこぼれてしまう。
「んなわけないでしょう!今日はここからスタートして目的地を目指して私たちで歩いていくのよ!そんなの持っていたら体力すらもたないわ!おいていった方がいいのではなくて」
「だめです!このロマンス小説や写真集は私の宝物です!自分で管理しますのでミリアーナ様はご心配なさらないでください」
この合宿中なにか問題が起こればマリアだけでなく私にまで危害が及ぶ可能性がある。
そうならないようにトラブルの種になりそうなものはなるべき手元に置いておかないでおきたいのだが。
こういってもマリアは話しすらまともに取り合ってくれないだろう。
マリアという人間は自分の都合が悪いことになると頑固になり、自分のいい方向へ意見を通そうとする。
それを天然でしてしまうので、計算高い女より性質が悪いのだ。
これ以上言い争いを続けても時間の無駄なので、マリアのお言葉に甘えて彼女の荷物の管理は自分でおこなってもらうことにする。
そうして、不安ばかりが残る野外合宿1日目の朝が終わる――。
野外合宿初日。
フィオーレ学園の1年生は校舎前に集められ、移動用の大型の馬車が用意されていた。
野外合宿で必要な最低限の荷物をもって私を含む野外合宿の参加生徒は引率の先生たちの話に耳を傾けた。
今日から2泊3日、ノエル王国の東にある森まで馬車で移動し、そこを始点として班ごとに分かれて行動する。
サバイバル生活をしながら先生たちが書いた地図を元にゴールまで目指すといった内容だ。
水は竹でできた水筒を1個ずつで班人数分、なくなれば自分で調達することになる。食糧も必要最低限の少量の穀物以外は現地調達となる。
後は緊急用の精神系の魔法が付与された札を班にひとつ渡された。
不測の事態が起こればこれを使って危険を知らせるためだ。ただし、使えば合宿中の出席には影響がないが、合宿中に得られる単位はゼロになってしまう。
なので、本当に緊急の時しか使えないのだ。その事項を念頭に置いて先生から渡された札を受け取った。
札が生徒に全員に渡し終わるとさっそく馬車に乗り込み合宿の舞台となる場所へ向かった。
――――――――――――――――――――――――――
「――ここが合宿場所。......想像はしていたけど」
マリアとふたりっきり、馬車から降ろされた場所は深緑の葉が生い茂り、植物が盛んに
生えた森の中。ノエル王国の東にある森で名前は「魔女の森」だったか。
古に存在した魔女が昔この森に棲んでいたことでその名がつけられた。
今は王国が管理しているので、人為的な危険はないに等しく、貴族の男女が2、3日サバイバル生活をしていても護衛がいれば危険はないといわれるほど。
自給自足をするにはもってこいの場所で、フィオーレ学園の伝統的な行事でよく使われている森......らしい。
手に持っていた地図に目を通し、今立っている森の入り口から少し進んだ場所につけられている×マークを目印を目標にさっそく森に足を踏み入れる。
「ミリアーナ様、待ってください」
マリアは頭数に入れていなく、一人で行動してしまう私に制止をかけるマリア。
背に背負っている大きなリュックを大変そうに揺らしながら小走りで走ってきた。
「......マリアさん。その大荷物どうしたのですか」
「ああ、これですか?お弁当に暇つぶしの本、休憩の時に食べるお菓子。化粧品と髪飾りとシャンプーや化粧水、着替えなど必要なもの一式。後は火魔法が付与された調理器具と......」
「待って。着替えやアメニティグッズ、かさばらないものならともかく、お弁当や本は必要あって?あなた合宿のしおり読んだ?」
「はえ?......はい。必要最低限のものと書かれていたのでもってきたのですが」
きょとんとしたマリアの表情に苛立ちが積もるがぐっと言葉を胃袋の中まで飲み込む。
あくまで理性的に荷物に対しての指摘をした。
「あなた合宿の意図わかっている?貴族としての忍耐や精神を鍛えるために野外合宿は行われるのよ?本とか必要ないでしょう。ずっと歩き詰めなのよ?」
「ええッ!私初めて参加するのでよくわかっていませんでした......。ただ外で生活するだけじゃないのでしょうか?」
根っからのお嬢様とはこうも後先考えないで荷物を準備するものなのだろうか。大切そうにリュックから本を数冊取り出し抱きしめるマリアの先行きに不安しかなかった。
そしてこの合宿をどうも甘く見ているようだし、どこか他力本願な考えがあるとしか思えない。......不安が募り募ってついに口から本音がこぼれてしまう。
「んなわけないでしょう!今日はここからスタートして目的地を目指して私たちで歩いていくのよ!そんなの持っていたら体力すらもたないわ!おいていった方がいいのではなくて」
「だめです!このロマンス小説や写真集は私の宝物です!自分で管理しますのでミリアーナ様はご心配なさらないでください」
この合宿中なにか問題が起こればマリアだけでなく私にまで危害が及ぶ可能性がある。
そうならないようにトラブルの種になりそうなものはなるべき手元に置いておかないでおきたいのだが。
こういってもマリアは話しすらまともに取り合ってくれないだろう。
マリアという人間は自分の都合が悪いことになると頑固になり、自分のいい方向へ意見を通そうとする。
それを天然でしてしまうので、計算高い女より性質が悪いのだ。
これ以上言い争いを続けても時間の無駄なので、マリアのお言葉に甘えて彼女の荷物の管理は自分でおこなってもらうことにする。
そうして、不安ばかりが残る野外合宿1日目の朝が終わる――。
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