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いいこと思いつきました
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「まぁ、クリフォード殿下がお休みに……?でしたら歓迎の宴を急いて開くものではありませんでしたね」
お母様は頬に手を当て困った視線を豪奢な料理に数々に視線を送った。
食卓の中央には新鮮なフルーツの数々、鮮やかな料理の数々が輝かしくテーブルを彩っていた。
「仕方ありませんわ。何時間も馬車に揺られていていたのですもの。これらのものは責任をもって私たちでいただきましょう」
「そうだね。せっかくドリーたちに作ってもらったんだ。捨てるのも勿体ない。どうだい、ジョン達も食べないかい?」
お父様は肩をすくめて使用人たちに声をかける。ジョンは端正な表情は崩してはいないが慌てた声で申し出を断った。
「とんでもありません!夜食会であればともかく、今は勤務中です!わたくしたちは余ったものを後から頂きますので……」
お父様は夜食会の雰囲気になれてしまったのか、ジョンの言葉を受け止めれず子供の様に頬を膨らませた。
「よいではないか。王子がこの場にいるのならともかく、彼は今部屋にこもっている。であれば家族である私たちが席に着き同じテーブルで食事をするのを咎めるものはいないだろう」
「そうであるからこそお断りします。公私の区別をつけないと大勢の前で無作法さが表にでてしまう。そうなってしまえば私たちの関係が世間に公になってしまいます」
「問題ないだろう」
「おおありです!シレーヌ帝国の王子様も滞在しているのですよ!」
使用人と貴族が同じ食卓を囲う。夜食会だからこそ許される行為だが、他人の目が届きやすい今の時間からそこでの取り決めをここでおこなうのを反対するジョンの気持ちもよくわかる。
私もお父様のいうことには賛成だが、事情をしらない王子殿下に見られる可能性が高い時間である以上私はお父様の行動を止める選択肢しかなかった。
アーテル家のためにも。
「お父様、ジョン。落ち着いてくださいな。今回はジョンの言う通り私たちだけでいただきましょう」
「……ミリアーナはそれでいいのかい?」
「今の時間はそうでなくてはいけません。クリフォード様がお部屋で休まれているといえども今は人が起きている時間ですし。仮に私たちが仲良く食事をしている光景をみてどう思われるか、お父様もわかっているでしょう?」
「そうかもしれん。だが、王子にその光景を見せることよって、我が国では爵位など気にせず食卓を囲うという自由さと懐の深さのアピールをしようとだね……」
「あなた。言い分は理解しましたが、今回はミリアーナとジョンの言う通りです。その機会は今夜かまたは次の夜にしましょう」
「おやシャンデラ珍しいね。君なら真っ先に僕の言い分に反対するかと思ったのに」
「あら、私の意見はジョンにありますよ。ただ家族で食事をする話の方向に傾いたので無駄に口にしなかっただっけ。……それに、あなたの言い分も私、理解できますもの」
お母様は扇子を口元にあてて小さくなにかをつぶやく。その声は隣にたお父様しか聞こえていなかったようで、お父様はきゅうとお母様を抱きしめた。
「シャンデラ……」
「あなた……」
「こほん。お母様、お父様。お取込み中失礼しますが、そういった機会はせめてジョン達がいないところに」
良い雰囲気のままでいさせたかったが私もほかの使用人たちもいたたまれない気持ちになったので、声をかける。
お母様はお父様の胸をどんっと突き飛ばすと、少女がはじらうがごとく頬を赤くさせた。
じっとみているとお母様になにかいわれそうなので適当なところに視線を移動させる。そこには色とりどりのフルーツの山。あ、……そうだ。
「お母様、あのフルーツっていただくことは可能ですか?」
「え?……ええ。いくらでももっていってもかまいませんがどうするのですか?」
「ももやバナナ……いちごといったものは腐りやすいでしょう?夜食会の材料でいただきたいのです」
「かまいませんよ」お母様がうなずく。すると控えていいたメイドたちの目の色が変わった。
今は勤務中なので無為に声はかけないものの、なにかを言いたそうに口をぱくぱくさせ、子供のように目を輝かせていた。
「だけどフルーツでデザートでも作るつもりなの?そうなのならパティシエに任せたほうがいいのではないかしら」
「いえ!デザートだけどデザートじゃないというか……。私でも簡単に作れるものなので……。気になるならお母様もぜひ夜食会に来てください」
いいアイデアが浮かんだので食い気味にお母様を招待すると、お母様は口をきゅっとさせてうなずいた。もしかしてお母様、甘いもの大好きなのでは......?
夜食会は許可しているものの、あまり積極的にお母様は参加してくれないので今回の夜食会はいい会になりそうだ。
夜食会のメニューも決まったので私たちはいつもより早めに食事をとって夜食会に備える――。
お母様は頬に手を当て困った視線を豪奢な料理に数々に視線を送った。
食卓の中央には新鮮なフルーツの数々、鮮やかな料理の数々が輝かしくテーブルを彩っていた。
「仕方ありませんわ。何時間も馬車に揺られていていたのですもの。これらのものは責任をもって私たちでいただきましょう」
「そうだね。せっかくドリーたちに作ってもらったんだ。捨てるのも勿体ない。どうだい、ジョン達も食べないかい?」
お父様は肩をすくめて使用人たちに声をかける。ジョンは端正な表情は崩してはいないが慌てた声で申し出を断った。
「とんでもありません!夜食会であればともかく、今は勤務中です!わたくしたちは余ったものを後から頂きますので……」
お父様は夜食会の雰囲気になれてしまったのか、ジョンの言葉を受け止めれず子供の様に頬を膨らませた。
「よいではないか。王子がこの場にいるのならともかく、彼は今部屋にこもっている。であれば家族である私たちが席に着き同じテーブルで食事をするのを咎めるものはいないだろう」
「そうであるからこそお断りします。公私の区別をつけないと大勢の前で無作法さが表にでてしまう。そうなってしまえば私たちの関係が世間に公になってしまいます」
「問題ないだろう」
「おおありです!シレーヌ帝国の王子様も滞在しているのですよ!」
使用人と貴族が同じ食卓を囲う。夜食会だからこそ許される行為だが、他人の目が届きやすい今の時間からそこでの取り決めをここでおこなうのを反対するジョンの気持ちもよくわかる。
私もお父様のいうことには賛成だが、事情をしらない王子殿下に見られる可能性が高い時間である以上私はお父様の行動を止める選択肢しかなかった。
アーテル家のためにも。
「お父様、ジョン。落ち着いてくださいな。今回はジョンの言う通り私たちだけでいただきましょう」
「……ミリアーナはそれでいいのかい?」
「今の時間はそうでなくてはいけません。クリフォード様がお部屋で休まれているといえども今は人が起きている時間ですし。仮に私たちが仲良く食事をしている光景をみてどう思われるか、お父様もわかっているでしょう?」
「そうかもしれん。だが、王子にその光景を見せることよって、我が国では爵位など気にせず食卓を囲うという自由さと懐の深さのアピールをしようとだね……」
「あなた。言い分は理解しましたが、今回はミリアーナとジョンの言う通りです。その機会は今夜かまたは次の夜にしましょう」
「おやシャンデラ珍しいね。君なら真っ先に僕の言い分に反対するかと思ったのに」
「あら、私の意見はジョンにありますよ。ただ家族で食事をする話の方向に傾いたので無駄に口にしなかっただっけ。……それに、あなたの言い分も私、理解できますもの」
お母様は扇子を口元にあてて小さくなにかをつぶやく。その声は隣にたお父様しか聞こえていなかったようで、お父様はきゅうとお母様を抱きしめた。
「シャンデラ……」
「あなた……」
「こほん。お母様、お父様。お取込み中失礼しますが、そういった機会はせめてジョン達がいないところに」
良い雰囲気のままでいさせたかったが私もほかの使用人たちもいたたまれない気持ちになったので、声をかける。
お母様はお父様の胸をどんっと突き飛ばすと、少女がはじらうがごとく頬を赤くさせた。
じっとみているとお母様になにかいわれそうなので適当なところに視線を移動させる。そこには色とりどりのフルーツの山。あ、……そうだ。
「お母様、あのフルーツっていただくことは可能ですか?」
「え?……ええ。いくらでももっていってもかまいませんがどうするのですか?」
「ももやバナナ……いちごといったものは腐りやすいでしょう?夜食会の材料でいただきたいのです」
「かまいませんよ」お母様がうなずく。すると控えていいたメイドたちの目の色が変わった。
今は勤務中なので無為に声はかけないものの、なにかを言いたそうに口をぱくぱくさせ、子供のように目を輝かせていた。
「だけどフルーツでデザートでも作るつもりなの?そうなのならパティシエに任せたほうがいいのではないかしら」
「いえ!デザートだけどデザートじゃないというか……。私でも簡単に作れるものなので……。気になるならお母様もぜひ夜食会に来てください」
いいアイデアが浮かんだので食い気味にお母様を招待すると、お母様は口をきゅっとさせてうなずいた。もしかしてお母様、甘いもの大好きなのでは......?
夜食会は許可しているものの、あまり積極的にお母様は参加してくれないので今回の夜食会はいい会になりそうだ。
夜食会のメニューも決まったので私たちはいつもより早めに食事をとって夜食会に備える――。
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