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不倫した人の子供は育てられません
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「リリエル、すまない。けっして許されることではないことはわかっているが、それでもユエルとの子を自分の子だと思って一緒に育ててくれないか」
私、リリエル・フォンティーヌは現在婿養子でもある夫、サイレーンと王立学園以来の親友ユエルの最大の裏切りに空いた口が塞がらなかった。
赤に近い茶髪を琥珀の瞳に浮かべる涙のように、窓から差し込む陽光で照らされて煌いた。
まるで自分が悲劇のヒロインかのように泣きじゃくりお腹に手を添えて謝罪の言葉を口にした。
夫と親友の裏切り。お腹の子。悲嘆とお腹の子供への同情と怒り。
ぐちゃぐちゃと胸の中に渦巻いた感情をどう吐き出していいかわからず、慎重に答えるべきだと深呼吸をした。
彼の好みの女性になるべく、本当は巻きたくない髪を1時間かけて巻いてツインテ―ルの髪紐の結び目がやけに引っ張られるような感じがして痛く感じる。
年相応の大人びたドレスを期待のにフリルとレースがふんだんにあしらわれた重たい水色のドレスが裾に数十個の錘を着けたんじゃないかってくらいに重たかった。
口では謝罪の言葉を口にし、形から表現するべく、15脚並んでいる椅子に座ることなく私の足元で正座で座り込む2人。
お腹の子に負担がかかるから椅子に座らせようとも考えたが、怒りのせいで理性がまったく働かないし、なによりも謝罪というほど気持ちが籠った謝罪ではなかった。
ーーいつから2人は私を裏切っていたのだろう。
サイレーンの女癖の悪さは元から知ってはいたが、男の浮気はステータスなんて言葉もある。
本当は嫌だけど、認知できない範囲なら目を瞑ろうと決めて彼と結婚した。
そのことはユエルにも相談していた。彼女も浮気は許せないと志を同じくしていたはずだ。
私がサイレーンに泣かされた時も、辛い時もそばで寄り添ってくれたはずなのに。大きくなったお腹を見る度に美しかった思い出は崩壊する。
一度だけの謝罪の言葉で満足して、ずっと言い訳と保身の言葉を並べ立てる二人を笑って許せるほど私は人が出来てはいなかった。
取り繕うことも出来ず、視線が下に向いていると、ユエルの言い訳はさらに拍車がかかる。
「リリエル、あなたが怒るのはもっともだわ。真実の愛に目覚めたとしても、親友の夫といけない関係になって子供まで作ってしまったのは許せないのはわかっている。けれど、お腹の子供には罪はないと思わない?」
「…………」
止めるまでキリがない。もっと言うことはないのか、とため息を吐きたくなったがぐっとこらえる。
ユエルには何度も助けてもらったし心優しい言葉をかけてもらった。ユエルを心の底から友達だと思っていたからこそ、子供のことを盾にして自分がしたことを正当化して欲しくはなかった。
まだ、子供を産むことを許して欲しい、なら話がわかる。離婚して2人で育てていきたいと思うのなら、納得はできないけど理解はできた。
けれど、不倫の末に生んだ子供を侯爵家の子供として育てて欲しいと口に出して懇願するのは筋違いだ。
サイレーンの家もユエルの家もけして貧乏ではない、家庭に問題があるのかは知らないけど知っている限りではないはずなのに。
その発言で二人が自己中心的で、私がどこまでも自分の意のままに動いてくれる人形だと思っていたことがまざまざと見せつけられたようだった。
喉がきゅうっとしまったような感覚と同じくして、視界が涙で溢れかえりそうになった。
私、リリエル・フォンティーヌは現在婿養子でもある夫、サイレーンと王立学園以来の親友ユエルの最大の裏切りに空いた口が塞がらなかった。
赤に近い茶髪を琥珀の瞳に浮かべる涙のように、窓から差し込む陽光で照らされて煌いた。
まるで自分が悲劇のヒロインかのように泣きじゃくりお腹に手を添えて謝罪の言葉を口にした。
夫と親友の裏切り。お腹の子。悲嘆とお腹の子供への同情と怒り。
ぐちゃぐちゃと胸の中に渦巻いた感情をどう吐き出していいかわからず、慎重に答えるべきだと深呼吸をした。
彼の好みの女性になるべく、本当は巻きたくない髪を1時間かけて巻いてツインテ―ルの髪紐の結び目がやけに引っ張られるような感じがして痛く感じる。
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口では謝罪の言葉を口にし、形から表現するべく、15脚並んでいる椅子に座ることなく私の足元で正座で座り込む2人。
お腹の子に負担がかかるから椅子に座らせようとも考えたが、怒りのせいで理性がまったく働かないし、なによりも謝罪というほど気持ちが籠った謝罪ではなかった。
ーーいつから2人は私を裏切っていたのだろう。
サイレーンの女癖の悪さは元から知ってはいたが、男の浮気はステータスなんて言葉もある。
本当は嫌だけど、認知できない範囲なら目を瞑ろうと決めて彼と結婚した。
そのことはユエルにも相談していた。彼女も浮気は許せないと志を同じくしていたはずだ。
私がサイレーンに泣かされた時も、辛い時もそばで寄り添ってくれたはずなのに。大きくなったお腹を見る度に美しかった思い出は崩壊する。
一度だけの謝罪の言葉で満足して、ずっと言い訳と保身の言葉を並べ立てる二人を笑って許せるほど私は人が出来てはいなかった。
取り繕うことも出来ず、視線が下に向いていると、ユエルの言い訳はさらに拍車がかかる。
「リリエル、あなたが怒るのはもっともだわ。真実の愛に目覚めたとしても、親友の夫といけない関係になって子供まで作ってしまったのは許せないのはわかっている。けれど、お腹の子供には罪はないと思わない?」
「…………」
止めるまでキリがない。もっと言うことはないのか、とため息を吐きたくなったがぐっとこらえる。
ユエルには何度も助けてもらったし心優しい言葉をかけてもらった。ユエルを心の底から友達だと思っていたからこそ、子供のことを盾にして自分がしたことを正当化して欲しくはなかった。
まだ、子供を産むことを許して欲しい、なら話がわかる。離婚して2人で育てていきたいと思うのなら、納得はできないけど理解はできた。
けれど、不倫の末に生んだ子供を侯爵家の子供として育てて欲しいと口に出して懇願するのは筋違いだ。
サイレーンの家もユエルの家もけして貧乏ではない、家庭に問題があるのかは知らないけど知っている限りではないはずなのに。
その発言で二人が自己中心的で、私がどこまでも自分の意のままに動いてくれる人形だと思っていたことがまざまざと見せつけられたようだった。
喉がきゅうっとしまったような感覚と同じくして、視界が涙で溢れかえりそうになった。
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