10 / 16
気が重い大豚令嬢
しおりを挟む
――久しぶりにディナサンに会ってどっと疲れた。しばらくは誰とも会いたくないな、と思いつつ。
優雅に引きこもりライフを送る。最近は少女向けの恋愛小説にはまっている。ガラスの靴をきっかけに恋愛に発展する小説。毒林檎を食べたことがきっかけで始まる恋......恋愛案系はトラウマがあるけど、フィクションには罪はないのだ。
小説にときめきつつ、1人の時間を満喫していると、本邸からの使いが届いた。グラトニー公爵からの晩餐会の招待状......と言う名の報告会か。
断る権限はないので、了解の返信を返すと、日取りは明日ということになった。
――憂鬱だ。話すことなんてなにもないのに。
仕方がないので、先日ディナサンに貰ったシックでタイトめなデザインと赤いリボンがあしらわれた、下半身のお肉を隠してくれるドレスを選んで、晩餐会に望む。
★
ブルーベルを連れて本邸へと足を踏み入れる。形式的に本邸で働く使用人たちは礼儀を尽くしてくれるけど、その表情は嘲笑と侮蔑の色が浮かんでいた。
そんな顔される覚えはないのだけど、大豚令嬢としての噂がある以上、それは仕方のないことだし、覚悟していたことだ。晩餐会といっても1時間くらいで終るからそれまでの辛抱だ。
グラトニー公爵の執事の案内を頼りに、公爵が待っている食間へと向かった。
............。
「おまえ、俺との約束を破って問題を起こしたらしいな」
「なんですか、藪から棒に」
食卓に座ると、コース料理が前菜から順に配膳される。マナーに則って順に口にするが......味がない。サラダにはドレッシングがかかっていない。お肉は味はついていなく、ゴムのように硬いし、パンもカチカチ。
こんな不味いものを公爵は食べているのかと、顔色を伺ってみるが、公爵様のサラダには明かにドレッシングがかかっているし、肉もパンも柔らかそうだ。
これも嫌がらせか。うんざりする。
食事に手をつける気が失せて、残りの料理は下げさせる。一瞬、グラトニー公爵はぴくり、と不満げに眉を上げたが無視だ。
美味しくないものを口にしたくないし、これを食べたところで、使用人が面白がるだけだ。
とりあえず話を続けようと、口を出したところ、そんな話題になった。
問題って、何を起こしたのだろうか。首を傾げても答えは出てこない。
「とぼけるな。離れで働いている使用人に陰口を叩き、腐った料理を無理やり食べさせた挙句、勝手に離れの使用人全員を解雇したのだろう!」
グラトニー公爵は声を荒げる。その話は事実無根である。......いや、腐った料理を食べさせたの下りだけは本当だけど、それは自業自得というものだ。先に仕掛けたのはあっちだし。
グラトニー公爵は冷静沈着で、状況をみて判断する人だと思ったのだが、思ったより感情的になる人なんだな。と彼の性格に人間味を感じつつ、間違っているところは、否定させてもらう。
「違います。その逆で――」
「実際に使用人は全員解雇したのだろう!彼らにも生活がある。勝手に解雇をするとは何事か」
「人の話を聞きなさいよ」
人の話を遮って、彼らを庇い建てする言葉が出てくる。この使用人にこの主有りってやつなのか。使用人の程度で主の程度が知れる。
たしかに宰相として有能なのだろうが、片方の意見を聞いただけで、状況を判断するのは得策ではなくない?
でも、感情的になった人間は、一度感情が暴走すると面白いほどに人の話を聞かないのは体験済み。これ以上私がなにをいったところで、彼には言い訳にしか聞こえないだろう。
なら、こちらもこちらで、言いたいことだけ言わせて貰う。
「こちらも正当な対価を支払っている以上、使えない使用人を雇う必要ありません。私の身の回りに誰を置くかは私が決めさせていただきます。従って、離れの管理は私自分で行いますので、今後一切介入しないでください。使用人も誰を雇うかはこちらで決めます」
「では勝手にするがいい。今後一切、こちらはなにも関与しない!」
私の態度が気にくわないのか、下唇を噛んで感情を抑えようと必死になる公爵。こういう一面もあるんだ、と関心しつつ。
関与しないという言質はもらえたので、頷いた。こっちもそちらの方が楽だし。
「はい。お互い無駄なことで言い争うのはやめましょう。お互いが変に関われば今回のような葉もない噂が広がりますので」
根はあると自覚しているので、そこは謝って置こう。......心の中で。
「予算の件ですが、こちらに回されるものは自分で管理をしたいのですが――」
「女のおまえが金の管理ができるはずないだろう。ずっと教養も身に着けず引きこもっていたのであろうが......」
後は離れの予算管理もこちらに一任してくれないかと交渉してみたが、お金の流れが把握できないので、NGとなってしまった。
あと、失礼な。一応教育係はつけてもらっていたし、一通りの管理くらい自分できるっつーの。
関与しないっていったのに、予算管理は駄目は矛盾し過ぎでしょ。ハイリーのこともそれとなく伝えてみたが、聞く耳を持ってくれない。
......気が重い。
彼は言いたいことだけ言い終えると、席を立ち上がって去っていってしまった。
人の話を聞かない相手との会話は疲れる。
優雅に引きこもりライフを送る。最近は少女向けの恋愛小説にはまっている。ガラスの靴をきっかけに恋愛に発展する小説。毒林檎を食べたことがきっかけで始まる恋......恋愛案系はトラウマがあるけど、フィクションには罪はないのだ。
小説にときめきつつ、1人の時間を満喫していると、本邸からの使いが届いた。グラトニー公爵からの晩餐会の招待状......と言う名の報告会か。
断る権限はないので、了解の返信を返すと、日取りは明日ということになった。
――憂鬱だ。話すことなんてなにもないのに。
仕方がないので、先日ディナサンに貰ったシックでタイトめなデザインと赤いリボンがあしらわれた、下半身のお肉を隠してくれるドレスを選んで、晩餐会に望む。
★
ブルーベルを連れて本邸へと足を踏み入れる。形式的に本邸で働く使用人たちは礼儀を尽くしてくれるけど、その表情は嘲笑と侮蔑の色が浮かんでいた。
そんな顔される覚えはないのだけど、大豚令嬢としての噂がある以上、それは仕方のないことだし、覚悟していたことだ。晩餐会といっても1時間くらいで終るからそれまでの辛抱だ。
グラトニー公爵の執事の案内を頼りに、公爵が待っている食間へと向かった。
............。
「おまえ、俺との約束を破って問題を起こしたらしいな」
「なんですか、藪から棒に」
食卓に座ると、コース料理が前菜から順に配膳される。マナーに則って順に口にするが......味がない。サラダにはドレッシングがかかっていない。お肉は味はついていなく、ゴムのように硬いし、パンもカチカチ。
こんな不味いものを公爵は食べているのかと、顔色を伺ってみるが、公爵様のサラダには明かにドレッシングがかかっているし、肉もパンも柔らかそうだ。
これも嫌がらせか。うんざりする。
食事に手をつける気が失せて、残りの料理は下げさせる。一瞬、グラトニー公爵はぴくり、と不満げに眉を上げたが無視だ。
美味しくないものを口にしたくないし、これを食べたところで、使用人が面白がるだけだ。
とりあえず話を続けようと、口を出したところ、そんな話題になった。
問題って、何を起こしたのだろうか。首を傾げても答えは出てこない。
「とぼけるな。離れで働いている使用人に陰口を叩き、腐った料理を無理やり食べさせた挙句、勝手に離れの使用人全員を解雇したのだろう!」
グラトニー公爵は声を荒げる。その話は事実無根である。......いや、腐った料理を食べさせたの下りだけは本当だけど、それは自業自得というものだ。先に仕掛けたのはあっちだし。
グラトニー公爵は冷静沈着で、状況をみて判断する人だと思ったのだが、思ったより感情的になる人なんだな。と彼の性格に人間味を感じつつ、間違っているところは、否定させてもらう。
「違います。その逆で――」
「実際に使用人は全員解雇したのだろう!彼らにも生活がある。勝手に解雇をするとは何事か」
「人の話を聞きなさいよ」
人の話を遮って、彼らを庇い建てする言葉が出てくる。この使用人にこの主有りってやつなのか。使用人の程度で主の程度が知れる。
たしかに宰相として有能なのだろうが、片方の意見を聞いただけで、状況を判断するのは得策ではなくない?
でも、感情的になった人間は、一度感情が暴走すると面白いほどに人の話を聞かないのは体験済み。これ以上私がなにをいったところで、彼には言い訳にしか聞こえないだろう。
なら、こちらもこちらで、言いたいことだけ言わせて貰う。
「こちらも正当な対価を支払っている以上、使えない使用人を雇う必要ありません。私の身の回りに誰を置くかは私が決めさせていただきます。従って、離れの管理は私自分で行いますので、今後一切介入しないでください。使用人も誰を雇うかはこちらで決めます」
「では勝手にするがいい。今後一切、こちらはなにも関与しない!」
私の態度が気にくわないのか、下唇を噛んで感情を抑えようと必死になる公爵。こういう一面もあるんだ、と関心しつつ。
関与しないという言質はもらえたので、頷いた。こっちもそちらの方が楽だし。
「はい。お互い無駄なことで言い争うのはやめましょう。お互いが変に関われば今回のような葉もない噂が広がりますので」
根はあると自覚しているので、そこは謝って置こう。......心の中で。
「予算の件ですが、こちらに回されるものは自分で管理をしたいのですが――」
「女のおまえが金の管理ができるはずないだろう。ずっと教養も身に着けず引きこもっていたのであろうが......」
後は離れの予算管理もこちらに一任してくれないかと交渉してみたが、お金の流れが把握できないので、NGとなってしまった。
あと、失礼な。一応教育係はつけてもらっていたし、一通りの管理くらい自分できるっつーの。
関与しないっていったのに、予算管理は駄目は矛盾し過ぎでしょ。ハイリーのこともそれとなく伝えてみたが、聞く耳を持ってくれない。
......気が重い。
彼は言いたいことだけ言い終えると、席を立ち上がって去っていってしまった。
人の話を聞かない相手との会話は疲れる。
17
お気に入りに追加
106
あなたにおすすめの小説
番から逃げる事にしました
みん
恋愛
リュシエンヌには前世の記憶がある。
前世で人間だった彼女は、結婚を目前に控えたある日、熊族の獣人の番だと判明し、そのまま熊族の領地へ連れ去られてしまった。それからの彼女の人生は大変なもので、最期は番だった自分を恨むように生涯を閉じた。
彼女は200年後、今度は自分が豹の獣人として生まれ変わっていた。そして、そんな記憶を持ったリュシエンヌが番と出会ってしまい、そこから、色んな事に巻き込まれる事になる─と、言うお話です。
❋相変わらずのゆるふわ設定で、メンタルも豆腐並なので、軽い気持ちで読んで下さい。
❋独自設定有りです。
❋他視点の話もあります。
❋誤字脱字は気を付けていますが、あると思います。すみません。
【完結】王子妃教育1日無料体験実施中!
杜野秋人
恋愛
「このような事件が明るみになった以上は私の婚約者のままにしておくことはできぬ!そなたと私の婚約は破棄されると思え!」
ルテティア国立学園の卒業記念パーティーで、第二王子シャルルから唐突に飛び出したその一言で、シャルルの婚約者である公爵家令嬢ブランディーヌは一気に窮地に立たされることになる。
シャルルによれば、学園で下級生に対する陰湿ないじめが繰り返され、その首謀者がブランディーヌだというのだ。
ブランディーヌは周囲を見渡す。その視線を避けて顔を背ける姿が何人もある。
シャルルの隣にはいじめられているとされる下級生の男爵家令嬢コリンヌの姿が。そのコリンヌが、ブランディーヌと目が合った瞬間、確かに勝ち誇った笑みを浮かべたのが分かった。
ああ、さすがに下位貴族までは盲点でしたわね。
ブランディーヌは敗けを認めるしかない。
だが彼女は、シャルルの次の言葉にさらなる衝撃を受けることになる。
「そして私の婚約は、新たにこのコリンヌと結ぶことになる!」
正式な場でもなく、おそらく父王の承諾さえも得ていないであろう段階で、独断で勝手なことを言い出すシャルル。それも大概だが、本当に男爵家の、下位貴族の娘に王子妃が務まると思っているのか。
これでもブランディーヌは彼の婚約者として10年費やしてきた。その彼の信頼を得られなかったのならば甘んじて婚約破棄も受け入れよう。
だがしかし、シャルルの王子としての立場は守らねばならない。男爵家の娘が立派に務めを果たせるならばいいが、もしも果たせなければ、回り回って婚約者の地位を守れなかったブランディーヌの責任さえも問われかねないのだ。
だから彼女はコリンヌに問うた。
「貴女、王子妃となる覚悟はお有りなのよね?
では、一度お試しで受けてみられますか?“王子妃教育”を」
そしてコリンヌは、なぜそう問われたのか、その真意を思い知ることになる⸺!
◆拙作『熊男爵の押しかけ幼妻』と同じ国の同じ時代の物語です。直接の繋がりはありませんが登場人物の一部が被ります。
◆全15話+番外編が前後編、続編(公爵家侍女編)が全25話+エピローグ、それに設定資料2編とおまけの閑話まで含めて6/2に無事完結!
アルファ版は断罪シーンでセリフがひとつ追加されてます。大筋は変わりません。
小説家になろうでも公開しています。あちらは全6話+1話、続編が全13話+エピローグ。なろう版は続編含めて5/16に完結。
◆小説家になろう4/26日間[異世界恋愛]ランキング1位!同[総合]ランキングも1位!5/22累計100万PV突破!
アルファポリスHOTランキングはどうやら41位止まりのようです。(現在圏外)
【完結】妹に婚約者まであげちゃったけれど、あげられないものもあるのです
ムキムキゴリラ
恋愛
主人公はアナスタシア。妹のキャシーにほしいとせがまれたら、何でも断らずにあげてきた結果、婚約者まであげちゃった。
「まあ、魔術の研究やりたかったから、別にいいんだけれどね」
それから、早三年。アナスタシアは魔術研究所で持ち前の才能を活かしながら働いていると、なんやかんやである騎士と交流を持つことに……。
誤字脱字等のお知らせをいただけると助かります。
感想もいただけると嬉しいです。
小説家になろうにも掲載しています。
英雄になった夫が妻子と帰還するそうです
白野佑奈
恋愛
初夜もなく戦場へ向かった夫。それから5年。
愛する彼の為に必死に留守を守ってきたけれど、戦場で『英雄』になった彼には、すでに妻子がいて、王命により離婚することに。
好きだからこそ王命に従うしかない。大人しく離縁して、実家の領地で暮らすことになったのに。
今、目の前にいる人は誰なのだろう?
ヤンデレ激愛系ヒーローと、周囲に翻弄される流され系ヒロインです。
珍しくもちょっとだけ切ない系を目指してみました(恥)
ざまぁが少々キツイので、※がついています。苦手な方はご注意下さい。
番が見つかったら即離婚! 王女は自由な平民に憧れる
灰銀猫
恋愛
王女でありながら貧しい生活を強いられていたエリサ。
突然父王に同盟の証として獣人の国へ嫁げと命じられた。
婚姻相手の王は竜人で番しか愛せない。初対面で開口一番「愛する事はない」と断言。
しかも番が見つかるか、三年経ったら離婚だそう。
しかしエリサは、是非白い結婚&別居婚で!とむしろ大歓迎。
番至上主義の竜人の王と、平民になることを夢見る王女の、無関心から始まる物語。
ご都合主義設定でゆるゆる・展開遅いです。
獣人の設定も自己流です。予めご了承ください。
R15は保険です。
22/3/5 HOTランキング(女性向け)で1位になれました。ありがとうございます。
22/5/20 本編完結、今後は番外編となります。
22/5/28 完結しました。
23/6/11 書籍化の記念に番外編をアップしました。
【完結】「父に毒殺され母の葬儀までタイムリープしたので、親戚の集まる前で父にやり返してやった」
まほりろ
恋愛
十八歳の私は異母妹に婚約者を奪われ、父と継母に毒殺された。
気がついたら十歳まで時間が巻き戻っていて、母の葬儀の最中だった。
私に毒を飲ませた父と継母が、虫の息の私の耳元で得意げに母を毒殺した経緯を話していたことを思い出した。
母の葬儀が終われば私は屋敷に幽閉され、外部との連絡手段を失ってしまう。
父を断罪できるチャンスは今しかない。
「お父様は悪くないの!
お父様は愛する人と一緒になりたかっただけなの!
だからお父様はお母様に毒をもったの!
お願いお父様を捕まえないで!」
私は声の限りに叫んでいた。
心の奥にほんの少し芽生えた父への殺意とともに。
※他サイトにも投稿しています。
※表紙素材はあぐりりんこ様よりお借りしております。
※「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※タイトル変更しました。
旧タイトル「父に殺されタイムリープしたので『お父様は悪くないの!お父様は愛する人と一緒になりたくてお母様の食事に毒をもっただけなの!』と叫んでみた」
【完結】薔薇の花をあなたに贈ります
彩華(あやはな)
恋愛
レティシアは階段から落ちた。
目を覚ますと、何かがおかしかった。それは婚約者である殿下を覚えていなかったのだ。
ロベルトは、レティシアとの婚約解消になり、聖女ミランダとの婚約することになる。
たが、それに違和感を抱くようになる。
ロベルト殿下視点がおもになります。
前作を多少引きずってはいますが、今回は暗くはないです!!
11話完結です。
聖女のわたしを隣国に売っておいて、いまさら「母国が滅んでもよいのか」と言われましても。
ふまさ
恋愛
「──わかった、これまでのことは謝罪しよう。とりあえず、国に帰ってきてくれ。次の聖女は急ぎ見つけることを約束する。それまでは我慢してくれないか。でないと国が滅びる。お前もそれは嫌だろ?」
出来るだけ優しく、テンサンド王国の第一王子であるショーンがアーリンに語りかける。ひきつった笑みを浮かべながら。
だがアーリンは考える間もなく、
「──お断りします」
と、きっぱりと告げたのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる