乙女ゲームの悪役令嬢と魔王が居候!?〜偽ヒロインは後でゆっくり制裁を下します〜

七彩 陽

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第五章 決戦の時

幕切れ

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 最後の一人だったブラッドが倒された段階で、シャーロットはこっそりと逃げ帰ろうとしていた。

 それをショコラが見つけて、シャーロットの逃げ道を塞いでくれた。そこへシャーロットを囲むようにレイラや小夜、兄達が次々と並び、私もそこに加わった。

「よ、よくもあたしの彼氏達を全員倒してくれたわね」

「彼氏とは良く言ったものですわね。惚れ薬で無理矢理従えただけの生きる屍ではございませんか」

「そんなことないわ。あたしの事、愛してるって、一番大切だって言ってくれたんだから」

「それは惚れ薬で無理矢理言わせているだけですわ。さぁ、シャーロット、わたくしと勝負してくださいませ」

 シャーロットは暫し黙っていたが、レイラを指差して言った。

「良いわよ。もしあたしが勝てばそこで縛られてるあたしの仲間を返してちょうだい」

「良いですわよ」

「え、レイラそんなことしたらせっかく縛ったのにまた戦い始まっちゃうよ」

 攻略対象達は皆、縛られているだけでピンピンしているのだ。私が治癒をしたから。またシャーロットに命令されたら再び先程の戦いを繰り返さなければならなくなる。

 そんな私の不安をレイラは払拭するかのように言った。

「わたくしを誰だとお思いですの? レイラ・ブリストン、悪役令嬢ですわよ。本物のヒロインなら分かりませんが偽ヒロインには負ける気が致しませんわ」

 魔王も私の頭をクシャッと撫でながら言った。

「再戦になったところで、結果は同じだ。俺達が再び受けて立つから安心しろ」

「……うん。そうだね」

「サイトウミウ、今はレイラよりあなたが一番目障りよ。本来ならレイラを連れ帰る予定だったけど、この戦いに勝てばあなたを連れて帰ることにするわ」

 シャーロットがそう言えば、兄や拓海達が騒ぎ出した。

「美羽は関係ないよね? そんなことしたら、いくら女の子でも容赦しないよ。まぁ、レイラちゃんが勝つけどね」

「お兄さんの言う通りだ。美羽は俺たちで守り抜く!」

「この性格ブスが、お前なんて一生彼氏なんて出来ねーよ」

「ブ……!? リク、よくも言ったわね。あたしはヒロインなの。ごちゃごちゃ言ってないでレイラやるわよ!」

「のぞむところですわ」

◇◇◇◇

 レイラとシャーロットを残して、私達は少し離れたところで二人の戦いを見守ることにした。しかし、両者睨み合っているだけで戦う気配がない。レイラが先に口を開いた。

「威勢だけですか? 何故攻撃してこないのですか?」

「うるさいわね! あたしはヒロイン、そうあたしはヒロインなのよ。大丈夫大丈夫よ」

 シャーロットが何やら自分に言い聞かせるように呟いている。そして持っていた杖をレイラに向けて詠唱した。すると杖が光だし、レイラめがけてその光が放たれた。

「え……」

 皆唖然として声が出ないでいる。だって、想像していたのと違いすぎたから。レーザー光線のように光が進むのかと思いきや、綿毛のようにふわふわと飛んでいくのだ。

 そしてレイラの元まで光が飛んでいくと、当たる前にパチンと消えた。

「魔王様、これはどういうことかな?」

「さぁ。シャーロットがショボいことは確かだな」

「あれはきっと、驕り高ぶってた結果ね」

「小夜ちゃん、どういうこと?」

「シャーロットは自分はヒロインだから全て思い通りになると思ってるのよ。魔法だって練習しないと上達しないのに、きっとヒロインだからって何もしなかったのね。最悪攻略対象達が守ってくれるし……くらいな気持ちだったんじゃない?」

「なるほど」

 あのシャーロットなら有り得そうだ。それにしても魔力強化アイテムを使用してあの程度とは。アイテムが無かったら杖が点灯するくらいだろうか。

「そんなはずないわ! だってあたしはヒロインなの。何だってあたしの思うがままなのよ。これならどう?」

 シャーロットが杖を掲げると、今度は空から光が降り注いだ。

「眩しいね。目眩しかな?」

「でも目を開けれない程じゃないよね」

「きっと浄化の類だろう。少々ゾワッとする」 

「え、魔王様、大丈夫なの!? 浄化されない? あっち行ってても良いよ。むしろ帰っててよ」

 魔王の言葉に私が困惑していると、魔王は呆れたような目線をシャーロットに向けた。

「ゾワッとはするがそれだけだ。浄化されたとしても髪の毛一本分程度だ」

「え、そうなの?」

「それより、あいつは馬鹿なのか? レイラは人間だ。人間相手に浄化等出来るはずないだろう」

「確かに……」

 私は魔王からレイラへと視線を戻した。レイラは黙ってシャーロットの攻撃をただただそこに立って見ていたが、これ以上は時間の無駄とでも言うかのような顔をしてシャーロットを蔦で縛り上げた。

「この程度でわたくしに挑もうだなんてちゃんちゃらおかしいですわ。呆れを通り越して怒りさえ感じますわ」

「うっ……あたしをどうする気? あたしはヒロインなのよ。この世界には必要不可欠でしょ」

「ここはゲームの世界ですからね。まぁ、バッドエンドってところでしょうか。伯爵令嬢如きが王太子を始め、公爵子息や貴族に対して惚れ薬を使用して精神を操っていたのです。罪は重いでしょうね」

 レイラがヒロインのように優しく微笑めば、シャーロットはキーっと悔しそうな顔を見せた。

 こうして、シャーロットと私達の戦いはあっけなく幕を閉じたのだった。
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