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第五章 決戦の時
拓海vsブラッド
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魔王とセドリックは先程レイラとコリンが創り上げた森で戦っているようだ。魔王は心配しなくても大丈夫だろう。逆にセドリックが心配になるくらいだ。
なので、次は拓海とブラッドの戦いに目をやった。もちろん無線機のダイヤルも拓海に合わせて。
『さっきからその変な構えはなんだ』
『え、変かな? 昔からこれなんだけど』
『まぁ良い。お前が強いのは分かった。全力でいかせてもらう』
ブラッドが剣に炎を纏わせた。勢いよく踏み込んで拓海に斬りかかる。拓海はそれを日本刀のような剣で受け止める。
『熱ッ!』
受け止めた反動でブラッドの剣に纏っている炎の火の粉が拓海に降りかかった。
さらには拓海とブラッドの周囲だけ蜃気楼が見える。
「熱そうだし、暑そう……」
「刃物は熱に弱いからね。あの子の剣もすぐ駄目になっちゃうんじゃない?」
「え? 剣って火を使いながら形変えたり強度増すんじゃないの?」
テレビでそんなシーンをよく見かけるが、あれはデマだったのだろうか。不思議そうにサイラスを見ていると、コリンがぶっきらぼうに応えた。
「あれはちゃんとした手順で熱してるの。高温にして急激に冷却してを繰り返すと強度も増すけど、直に火にあててたらどんどん刃が駄目になっちゃうよ」
「へー、二人とも物知りなんだね」
「常識だよ。あんたが馬鹿なんじゃないの?」
「コリン。どうしてそんな口が悪くなっちゃったんだ……」
サイラスは心配そうにコリンを見るが、私は嬉しそうに言った。
「良いんだよそのままで。コリンが何も我慢してない証拠だよ」
惚れ薬の効果が切れたらいつものニコニコした優しいコリンに戻るだろう。今くらい何にも囚われずに思ったことを思ったまま発言して欲しい。
さて、拓海は大丈夫だろうか。今の話だと剣が駄目になって拓海の武器はなくなってしまう。それにあんなのが拓海に当たれば火傷だけではすまないはずだ。
「でもさ、ブラッドの剣は大丈夫なの? モロ直火じゃん」
「あー、あれは元々炎魔法を付与出来るように作られた剣だから」
「ずるいなぁ」
拓海を見ていると、その熱気のせいか拓海の動きが先程より鈍くなっているように感じる。
『この剣に斬られる前に降参したらどうだ?』
『誰がするか』
シュッ! と拓海とブラッドのすぐ近くに小夜の矢が突き刺さった。その瞬間、四方八方へ大量の水が噴き出した。
拓海とブラッドは互いに後退し、拓海は全身にその水を浴びた。
『あー、熱かった』
あの矢の魔法は攻撃だけでなく、そんな水浴びのような使い方も出来るのかと感心した。
『またあいつか。いつもいつも邪魔しやがって。先にあっちをどうにかするか』
ブラッドはそう呟くと拳銃を取り出した。あれは迷宮で取得したアイテム。ショコラに怪我を負わせる程の威力がある。
「あんなの小夜ちゃんに当たったら死んじゃうよ」
私は思わず立ち上がってオロオロし始めた。
『そんなことさせねぇ。お前の相手は俺だろ?』
『止められるなら止めてみろよ』
ブラッドは拓海を挑発しつつ、小夜に銃口を向けた。次の瞬間、拓海は剣を鞘に収めた。
「え、え、どうして収めちゃうの?」
「諦めたんじゃない?」
「拓海はそんな奴じゃないよ」
私は冷や汗を流しながら拓海の動きにじっと目をやった。
『さっきの威勢はどうした? 仲間を見捨てたか?』
『……』
剣を収めた状態で、拓海は鞘を左手で支えながら剣の柄の部分に右手を添えている。足は肩幅程度に広げ、重心を落とした。
「あの構えは……」
ブラッドがカチャリとセイフティを押し下げた瞬間、拓海はブラッドめがけて走った。ブラッドの間合いに入ったと同時に、拓海は剣を引き抜いた。
ドンッ!
同時に拳銃の引き金が引かれたようだ。発砲音が轟いた。
しかし、拓海の方が少し早かったようで、刀は一閃、銃口を押し上げていた。弾丸は小夜には当たらず空を貫いた。
「……拓海格好良い。居合切りなんて初めてみたよ」
「何が起こったの?」
「良くわかんないけど凄かったね」
唖然としているサイラスとコリンに私は得意げに言った。
「あれね、私の幼馴染なんだよ。凄いよね! 格好良いよね!」
「うん」
「彼は凄いかもしれないけど、幼馴染ってだけで自慢げに話すのやめてくれない? 何様なの? なんか腹立つんだけど」
「こら、コリン!」
「はは、そうだよね」
幼馴染自慢は、我が子を自慢するのと同じくらい第三者にとってはどうでも良い事だ。だが、ついつい嬉しくなって言いたくなるものなのだ。
さて、話はそれてしまったが拓海とブラッドは再び一定の距離をあけて睨み合っている。
『やはりお前から倒すことにしよう』
『初めからそうしてれば良かったんだよ』
そこへ、少し離れた所からブラッドに向かってシャーロットが叫んだ。
『正々堂々とか今時流行んないから。こっちは二人やられてんのよ。相手は魔法が使えないんだから、距離とって得意の炎で一気に打ちのめしなさい!』
すると言われるがままブラッドが拓海から距離を取り、詠唱を始めた。
あっという間に拓海は炎に包まれた。小夜が再び矢を二本三本と放ち、大量の水が放たれるが、炎が強すぎて消火しきれない。
そして、これでもかと言うほどにフレイムボールが拓海めがけて打ち込まれた。
なので、次は拓海とブラッドの戦いに目をやった。もちろん無線機のダイヤルも拓海に合わせて。
『さっきからその変な構えはなんだ』
『え、変かな? 昔からこれなんだけど』
『まぁ良い。お前が強いのは分かった。全力でいかせてもらう』
ブラッドが剣に炎を纏わせた。勢いよく踏み込んで拓海に斬りかかる。拓海はそれを日本刀のような剣で受け止める。
『熱ッ!』
受け止めた反動でブラッドの剣に纏っている炎の火の粉が拓海に降りかかった。
さらには拓海とブラッドの周囲だけ蜃気楼が見える。
「熱そうだし、暑そう……」
「刃物は熱に弱いからね。あの子の剣もすぐ駄目になっちゃうんじゃない?」
「え? 剣って火を使いながら形変えたり強度増すんじゃないの?」
テレビでそんなシーンをよく見かけるが、あれはデマだったのだろうか。不思議そうにサイラスを見ていると、コリンがぶっきらぼうに応えた。
「あれはちゃんとした手順で熱してるの。高温にして急激に冷却してを繰り返すと強度も増すけど、直に火にあててたらどんどん刃が駄目になっちゃうよ」
「へー、二人とも物知りなんだね」
「常識だよ。あんたが馬鹿なんじゃないの?」
「コリン。どうしてそんな口が悪くなっちゃったんだ……」
サイラスは心配そうにコリンを見るが、私は嬉しそうに言った。
「良いんだよそのままで。コリンが何も我慢してない証拠だよ」
惚れ薬の効果が切れたらいつものニコニコした優しいコリンに戻るだろう。今くらい何にも囚われずに思ったことを思ったまま発言して欲しい。
さて、拓海は大丈夫だろうか。今の話だと剣が駄目になって拓海の武器はなくなってしまう。それにあんなのが拓海に当たれば火傷だけではすまないはずだ。
「でもさ、ブラッドの剣は大丈夫なの? モロ直火じゃん」
「あー、あれは元々炎魔法を付与出来るように作られた剣だから」
「ずるいなぁ」
拓海を見ていると、その熱気のせいか拓海の動きが先程より鈍くなっているように感じる。
『この剣に斬られる前に降参したらどうだ?』
『誰がするか』
シュッ! と拓海とブラッドのすぐ近くに小夜の矢が突き刺さった。その瞬間、四方八方へ大量の水が噴き出した。
拓海とブラッドは互いに後退し、拓海は全身にその水を浴びた。
『あー、熱かった』
あの矢の魔法は攻撃だけでなく、そんな水浴びのような使い方も出来るのかと感心した。
『またあいつか。いつもいつも邪魔しやがって。先にあっちをどうにかするか』
ブラッドはそう呟くと拳銃を取り出した。あれは迷宮で取得したアイテム。ショコラに怪我を負わせる程の威力がある。
「あんなの小夜ちゃんに当たったら死んじゃうよ」
私は思わず立ち上がってオロオロし始めた。
『そんなことさせねぇ。お前の相手は俺だろ?』
『止められるなら止めてみろよ』
ブラッドは拓海を挑発しつつ、小夜に銃口を向けた。次の瞬間、拓海は剣を鞘に収めた。
「え、え、どうして収めちゃうの?」
「諦めたんじゃない?」
「拓海はそんな奴じゃないよ」
私は冷や汗を流しながら拓海の動きにじっと目をやった。
『さっきの威勢はどうした? 仲間を見捨てたか?』
『……』
剣を収めた状態で、拓海は鞘を左手で支えながら剣の柄の部分に右手を添えている。足は肩幅程度に広げ、重心を落とした。
「あの構えは……」
ブラッドがカチャリとセイフティを押し下げた瞬間、拓海はブラッドめがけて走った。ブラッドの間合いに入ったと同時に、拓海は剣を引き抜いた。
ドンッ!
同時に拳銃の引き金が引かれたようだ。発砲音が轟いた。
しかし、拓海の方が少し早かったようで、刀は一閃、銃口を押し上げていた。弾丸は小夜には当たらず空を貫いた。
「……拓海格好良い。居合切りなんて初めてみたよ」
「何が起こったの?」
「良くわかんないけど凄かったね」
唖然としているサイラスとコリンに私は得意げに言った。
「あれね、私の幼馴染なんだよ。凄いよね! 格好良いよね!」
「うん」
「彼は凄いかもしれないけど、幼馴染ってだけで自慢げに話すのやめてくれない? 何様なの? なんか腹立つんだけど」
「こら、コリン!」
「はは、そうだよね」
幼馴染自慢は、我が子を自慢するのと同じくらい第三者にとってはどうでも良い事だ。だが、ついつい嬉しくなって言いたくなるものなのだ。
さて、話はそれてしまったが拓海とブラッドは再び一定の距離をあけて睨み合っている。
『やはりお前から倒すことにしよう』
『初めからそうしてれば良かったんだよ』
そこへ、少し離れた所からブラッドに向かってシャーロットが叫んだ。
『正々堂々とか今時流行んないから。こっちは二人やられてんのよ。相手は魔法が使えないんだから、距離とって得意の炎で一気に打ちのめしなさい!』
すると言われるがままブラッドが拓海から距離を取り、詠唱を始めた。
あっという間に拓海は炎に包まれた。小夜が再び矢を二本三本と放ち、大量の水が放たれるが、炎が強すぎて消火しきれない。
そして、これでもかと言うほどにフレイムボールが拓海めがけて打ち込まれた。
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