乙女ゲームの悪役令嬢と魔王が居候!?〜偽ヒロインは後でゆっくり制裁を下します〜

七彩 陽

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第四章 恋のドタバタ編

腹の探り合い

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 私はコリンの屋敷の廊下でサイラスに肩を抱かれたまま立ち尽くしている。そして私の数メートル後ろにはシャーロットが。

『待ちなさい。あなた何人攻略したら気が済むの? サイトウ ミウ』

 シャーロットに言われた言葉。これは、どういう意味だ。まさか……もしかしなくともバレている? 日本人だと。この状況はどう対処していけば良いのだろうか。私が日本人だとバレたとして、不都合なことは何だ。

 魔王とレイラとの関係がバレているのかは不明であるが、仮にバレていないとしよう。すると、私はひょんな事から異世界転移した女子高生。ただ単に乙女ゲームの世界だと知ったから攻略対象達を攻略しているだけ。

 今はコリン以外の攻略対象はシャーロットの手の内だ。コリンだけは私に譲ってもらう。その受け応えをすれば乗り切れそうだ。うん。

 さて、問題は魔王とレイラの味方であるとバレている時だ。確実にこの頭の髪飾りを奪いに来るだろう。そして、私を人質にレイラをシャーロットの前に連れてこいと脅されるはずだ。直ちに逃げなければ。でもどうやって?

 そんなことを頭の中で考えていると、シャーロットが口を開いた。

「どうして黙っているの? あなたの目的は何? どうやってこの世界に来たの?」

 とりあえず前者の受け応えからしていこう。

「私は突然この世界に飛ばされたの。そして、この世界がどんな世界なのかすぐに分かったわ。せっかくだからゲームを楽しんでるだけよ。シャーロット、あなたもでしょ?」

「ミウ、何の話をしているの?」

「おにいちゃんは少し黙ってて」

 シャーロットが若干引き気味に聞いてきた。

「その設定はなんなの? 兄妹プレイなんて、そんな趣味があるの?」

「これは私も想定外よ。でも、せっかく私が攻略したアレックスもセドリックもあなたに夢中で私の事なんて興味のカケラもないもの。コリンだけでも譲ってよ」

「それはダメよ。あたしは逆ハーエンドを目指したいのよ。ヒロインはあたしなんだから、あたしに決める権利があるの」

 どこまでも自分勝手なヒロインだ、と呆れを通り越して関心しているとシャーロットが核心をついてきた。

「あなた、アイテムを探しているそうね。何故アイテムの存在を知っているの? 続編でも出たの?」

「続編? 私は無印しかプレイした事ないからよく分かんない。私は魔法が使えないから、チートなアイテムがないか探してただけ」

 嘘は言っていない。私自身は続編をプレイしていないから。

「そんなことより、私はコリンを一人部屋に置いてきてるの。私のことはもう良いでしょ」

「そうね。他人の屋敷の廊下で話すことではなかったわね」

 そこは良識があったのかと内心驚いた。そして、シャーロットがこれだけ私を質問攻めにするということは、私が日本人だという情報しか持っていないとみた。

「今はコリンも意識ないんだし、逆ハー目指そうと思っても無理よ。今日のところは諦めてよ」

 惚れ薬を使うには意識がない方がもってこいだが、シャーロットは惚れ薬の存在は隠したいはず。今日は引き下がるはずだ。

「分かったわ。今日のところは——」

「ミウ? 大丈夫? 迷子に……」

 コリンが自室の扉から顔をヒョコッと覗かせてきた。

 タイミングが悪すぎる。後一分出てくるのを待っていて欲しかった。

 シャーロットの顔を見ると、張り付けた笑顔を浮かべていた。まるで獲物を見つけたかのようにコリンしか見ていない。

「コリン! 意識が戻ったのね!」

 私とサイラスを押し除けて、シャーロットはコリンの方へと歩き出した。私とサイラスもすぐさまシャーロットの後を追った。

「え、なんでシャーロットが……」

「コリン! 閉めて! 扉閉めて!」

「あ、うん」

「キャ、痛い」

 コリンに扉を閉めるように言ったが遅かった。扉の隙間にシャーロットがガッと足を入れていた。シャーロットの痛がる声を聞いた瞬間、コリンがドアノブからパッと手を離したものだから、シャーロットの入室が可能となってしまった。

「あたしを入れてくれるのね。ありがとう」

 シャーロットは張り付けた笑顔のままゆっくりと前へと進み、コリンはそれに合わせて一歩ずつ後退していった。

 まるでこれから殺人でも起こるのではと思わせる程に怖い。ホラーを見せられている気分だ。

「おにいちゃん、コリンを助けて! シールドとか作れるんでしょ? とにかくあの二人を近づけさせないで!」

 サイラスにお願いすれば、サイラスは詠唱を唱え始めた。すると、ズンと大きな氷がコリンとシャーロットの間に現れた。

「サイラス? 何やってるの? 早くこれを消しなさい」

 シャーロットがサイラスに命令すると氷のシールドはパッと消えた。

「おにいちゃん何やってんの! もう一回やって!」

「あ、うん」

 それから同じことが五回ほど行われた後、シャーロットが私の方を向いた。

「あなた、どうして邪魔をするの? あたしの敵なの?」

「そりゃ、私の大事な人を横取りしようとするんだもん。敵に決まってるでしょ」

「え、ミウ?」

 コリンがキョトンとしている。コリンには後で説明しないと。まるで私がコリンの彼女みたいな言い草だ。キスまでしようとして、彼女気取りとは最低な女だ。嫌われてしまう。

「君たちは他人の屋敷で何をしている? 無礼にも程があるだろう。コリンも目が覚めたなら早く知らせろ」

「父上……」

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