乙女ゲームの悪役令嬢と魔王が居候!?〜偽ヒロインは後でゆっくり制裁を下します〜

七彩 陽

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第三章 アイテム争奪戦

休憩

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 私とレイラは一旦帰宅した。そう一旦だ。再び王城へ行かなければならない。アイテムを取りにではない。王妃様の誕生日パーティーの参加の為に。そしてレイラも然り。

「まさかレイラがパーティーを仕切る仕事を任されるとは思ってなかったよ」

「わたくしもですわ。初めはどうなることやらと思いましたが、これも家事の苦労の賜物ですわね」

「それもあるけど、やっぱお嬢様時代の経験と知識の方が大きいんじゃない?」

 レイラはメイドとして、パーティーの仕切り役に選ばれた。

 ——私がアレックスに解放された後、レイラを探しにパーティー会場を目指すとレイラの居場所はすぐに分かった。

『そこのあなた、テーブルクロスにシミがついているわ。取り替えなさい』

『え、どこですか?』

『ここですわ。薄くて小さくても王妃様に失礼よ。もちろんお客様にもですわ。あ、それからそこのあなた、テーブルの間隔が狭すぎるわ。ミリアム伯爵のような方が通られたらいっぱいいっぱいでしょう』

『はい! すぐに移動させます!』

 といった具合にレイラは指示を出していたのだ。そして私がレイラの元へ行くと、思いがけないことを言われた。

『あら、美羽。アイテム獲得おめでとうございます。では、帰りましょうか』

『ああ、ごめん。アイテムはまた後で挑戦しよう』

 すると、レイラは髪飾りを指差して言った。

『何を仰っているのです? 美羽が身に付けているではありませんか』

『え? これ?』

『それですわ。説明は後ほど。では、帰りましょうか』

 レイラが会場から出ようとすれば、メイド長がやってきた。

『あなた。会場が始まってからもここの仕切り役をお願いできないかしら。元々仕切るはずだった子が体調不良で休んでるのよ』

『ですが……』

 困惑したレイラに私は言った。

『さっきのレイラ格好良かったよ。働くの楽しいんでしょ? 任されたら? その格好だとバレないよ』

『美羽……分かりましたわ。お引き受け致します』

『ありがとう! 助かるわ。ここは良いから一旦休憩してパーティーが始まる頃に来て頂戴』
 
 ——というわけで、今は休憩中。

「てかさ、パーティーって夜遅くまであるんでしょ? こっちでは夜中だよね。明日は学校休もうかな」

「その方が宜しいかもしれませんね。わたくしもアルバイトの日程変更してもらいますわ」

 レイラが時計を確認しながら続けて言った。

「今は十八時なので、二十三時くらいに出れば間に合いますわね。あ、でも美羽は着替えが必要ですから二十二時には出ませんとね」

「それなんだけどさぁ、やっぱドタキャンしようかと思って」

 そう、私はメイドとしてではなく、招待客として参加することになっている。アレックスのパートナーとして。

 ——拷問から逃れる為、私はなんでも言うことを聞くとアレックスに言った。そしてアレックスの願いは……。

『ただ僕を見て欲しいんだ。僕に溺れて欲しい。駄目か?』

 そりゃ私だって溺れたい。推しにそんなことを言われたら嬉しくて舞い上がる。だが、相手は異世界人。住む世界が違う。外見だって釣り合わない。

 けれどここで駄目と応えてしまえば拷問される。そう思った私は考えた。先延ばしにしようと。

 私はアイテム取得の時に異世界に行くだけ。シャーロットの出方次第では戦いに一度行かなければならないが、それ以降は異世界に行く必要がないのだ。アレックスには悪いがこの話は自然消滅させてもらおう。

『昨日会ったばかりなのに駄目かどうかなんて決められない。もう少しお互いを知ってから……』

『すまん。お前が誰かのモノになる前に欲しくて焦ってしまった。今日のことは誰にも言わないからパーティーに一緒に参加するくらいは良いだろう?』

『うん』

 この時の私は今身に付けている髪飾りがアイテムだと知らなかったので、パーティーの時間に合わせて再挑戦するつもりだった。なので、アレックスの誘いも受けたのだ——。

「でも、この髪飾りがアイテムなら王城へ行く必要もないんだよ」

「確かにそうですわね。セドリック様も確実に来ますからね。修羅場になりますわ」

「でしょ。てかさ、この髪飾りって元々サイラスの物なんでしょ? なんで譲り受けることができるの? アイテムの横流し駄目なんじゃなかったの?」

「それはね主人公しか使うことが出来ないアイテムだからよ」

「わ、小夜ちゃん!?」

 突然小夜が現れて驚いた。魔王や拓海、田中もいた。

「みんなおかえり。小夜ちゃんどういうこと?」

「個別ルートの時は遺跡やダンジョンでアイテム取得するんだけど、逆ハールートの時は特別でね。ヒロインはサイラスからもらうことになってるの。まさか美羽が正攻法で取ってくるなんて思ってなかったけど。てことはサイラスの好感度も上がっちゃった?」

 私は小夜に言われてステータスを開いた。

「六十三だって。まだ大丈夫そう」

「大丈夫って何が?」

 拓海が聞いてきた。実は拓海と田中にはまだ話していないのだ。セドリックとアレックスの好感度がMAXなのだと。

「美羽、ちゃんと説明しといた方が良いよ。後々面倒なことになるから」

「うん。拓海、田中、実はね——」




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