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第三章 アイテム争奪戦
平和な日常①
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私は皆より先にレイラと帰宅した。時間は既に二十一時を過ぎていたので、早々に入浴し、寝る支度をすることにした。
「レイラありがとね。迎えに来てくれて」
「いえ、わたくしの為にあちらの世界に行って下さっているのですから当然ですわ」
「セドリックの御両親に何か言われなかった? 大丈夫だった?」
「ええ、婚約話はなかったことにして下さいと言われましたので、了承したらとても嬉しそうでしたわ。そんなことより、美羽」
「なに?」
「先程、あの男性と何をなさっていたのですか?」
私はレイラの髪を乾かす手を止めた。
「美羽?」
「レイラ、聞いてくれる? 実はさ————」
私はレイラにセドリックに連れて行かれた後の出来事を事細かに話した。そして、不安に思っていたことをレイラにぶつけた。
「どう思う? 何で好感度MAXになってるの? 私、セドリックと生涯なんて誓ってないんだけど。これって今後どうなるの?」
「それは……美羽が悪いですわね」
「え、何で? 私何かしたの?」
「とりあえず、これでも飲んで一旦落ち着きましょう」
レイラにお茶を勧められたので一口飲んだ。今朝飲んだ麦茶と同じなのに至極ホッとした。
「で、どうして私のせいなの?」
「それですわ」
「それって?」
「美羽は無自覚なのです。無自覚に相手の懐に入って相手の喜ぶ言葉を言ったり、仕草をしているのですわ。故に相手方は美羽に自然と好感を持ってしまうのです」
「それは、どうしたら良いの? 思ったままを口にしてるだけなんだけど」
レイラは困った顔で私に言った。
「もうここまで来てしまったらどうしようもありませんわ。きっぱりとセドリック様に好意がないことを伝えるのが最善かと」
「そうだね。分かった」
「ただ……」
「どうしたの?」
レイラが乙女ゲーム『胸キュンラバーⅡ』を手に取って溜め息を吐いた。
「乙女ゲームでは好感度MAXにしてからドン底に突き落とすと良からぬことが起こるのですわ」
「確かに……」
この『胸キュンラバーⅡ』に限らず、どのゲームでも無理心中や誘拐、監禁などバッドエンドのような結末になってしまう。そういうのが良いと好んでする人も時に存在するが、私は嫌だ。
「でもさ、私とセドリックは住む世界がそもそも違うし、会わなければ何も起こらないよね」
「会わなければ……ですがね。まぁ、今後は同じことが起こらないよう、好きでもない相手には優しくしないことですわ。ひとまず今日は寝ましょう。明日は学校ですから」
「うん。早くお兄ちゃん達も帰ってくると良いけど……」
◇◇◇◇
翌朝、私はさば折りの如く兄に抱きしめられた。
「お兄ちゃん、痛いよ」
「美羽! 無事で本当に良かった。昨日はもう寝てたから我慢したんだ。今日はもう学校行かなくて良いよ。お兄ちゃんとずっとこうしていよう」
「嫌だよ、離してよ」
いつものように接するが、私も本当は兄に会えてとても嬉しい。はぐれたのが日本ならどうにかなるが、あそこは異世界。魔王が来てくれなかったら一生兄とは離れ離れになっていたかもしれない。
両親も亡くなった今、私の家族は兄だけだ。どうしても兄に依存してしまう。兄はシスコンだが、私も実は隠れブラコンなのだ。兄に言ったら喜ぶので言わないが……。
「お兄様、大学に間に合わなくなりますわ。美羽もそろそろ出ないと遅刻しますわよ」
「うん。仕方ない」
レイラに諭され、兄は渋々私から離れた。かと思いきや、手を繋いできた。
「美羽が迷子にならないようにお兄ちゃんずっとこうしてるよ」
「嫌だよ。恥ずかしいよ」
「じゃあ、おんぶにする? それとも抱っこ?」
「手で良いよ。手繋いで行けば良いんでしょ」
兄の言い付けを守らなかったせいで、危ない目に遭うところだった。今日くらいは兄の好きなようにさせよう。
「お兄ちゃん行くよ。レイラ、バイト頑張ってね。帰りスーパー寄るから」
「はい! お待ちしておりますわ」
私と兄はレイラに見送られながら家を出た。出た瞬間驚いた。そこには小夜と拓海と田中が立っていた。
「おはよう……みんなどうしたの?」
「どうしたの? じゃないよ。美羽心配したんだから」
「ごめんね」
小夜が抱きついてきたので私もぎゅっと抱きしめ返した。小夜は私からそっと離れながら言った。
「拓海君と田中も頑張ってたよ。あ、お兄さんもね」
「いや、あれは小夜ちゃんのおかげだよ。な田中」
「うん。こいつがいなかったら手も足も出なかったからな」
拓海と田中もダンジョンで頑張っていたようだ。積もる話があるのだろう。そんな私たちを微笑ましそうに見てから兄が言った。
「立ち話してたら遅れちゃうから歩きながら話そうよ」
皆が賛同して歩き出すと、田中が私と兄の手に気付いたようだ。
「あ、お兄さん美羽と手繋いでずるい。美羽、こっち俺が手繋いで良い?」
「嫌だよ」
「はは、田中フラれたな。こっちは……」
「拓海もダメだよ」
「学校では恋人同士だろ。俺たち」
拓海がそう言った瞬間、兄が拓海をキッと睨んだのが分かった。
「何それ、僕はそんなこと聞いてないんだけど。小夜ちゃん、美羽のそっちの手繋いでて」
セドリックのおかげで一騒動あったが、私たちの仲は更に深まったのではないかと思う。誰か一人忘れているような気がするが……まぁ良いか。
「レイラありがとね。迎えに来てくれて」
「いえ、わたくしの為にあちらの世界に行って下さっているのですから当然ですわ」
「セドリックの御両親に何か言われなかった? 大丈夫だった?」
「ええ、婚約話はなかったことにして下さいと言われましたので、了承したらとても嬉しそうでしたわ。そんなことより、美羽」
「なに?」
「先程、あの男性と何をなさっていたのですか?」
私はレイラの髪を乾かす手を止めた。
「美羽?」
「レイラ、聞いてくれる? 実はさ————」
私はレイラにセドリックに連れて行かれた後の出来事を事細かに話した。そして、不安に思っていたことをレイラにぶつけた。
「どう思う? 何で好感度MAXになってるの? 私、セドリックと生涯なんて誓ってないんだけど。これって今後どうなるの?」
「それは……美羽が悪いですわね」
「え、何で? 私何かしたの?」
「とりあえず、これでも飲んで一旦落ち着きましょう」
レイラにお茶を勧められたので一口飲んだ。今朝飲んだ麦茶と同じなのに至極ホッとした。
「で、どうして私のせいなの?」
「それですわ」
「それって?」
「美羽は無自覚なのです。無自覚に相手の懐に入って相手の喜ぶ言葉を言ったり、仕草をしているのですわ。故に相手方は美羽に自然と好感を持ってしまうのです」
「それは、どうしたら良いの? 思ったままを口にしてるだけなんだけど」
レイラは困った顔で私に言った。
「もうここまで来てしまったらどうしようもありませんわ。きっぱりとセドリック様に好意がないことを伝えるのが最善かと」
「そうだね。分かった」
「ただ……」
「どうしたの?」
レイラが乙女ゲーム『胸キュンラバーⅡ』を手に取って溜め息を吐いた。
「乙女ゲームでは好感度MAXにしてからドン底に突き落とすと良からぬことが起こるのですわ」
「確かに……」
この『胸キュンラバーⅡ』に限らず、どのゲームでも無理心中や誘拐、監禁などバッドエンドのような結末になってしまう。そういうのが良いと好んでする人も時に存在するが、私は嫌だ。
「でもさ、私とセドリックは住む世界がそもそも違うし、会わなければ何も起こらないよね」
「会わなければ……ですがね。まぁ、今後は同じことが起こらないよう、好きでもない相手には優しくしないことですわ。ひとまず今日は寝ましょう。明日は学校ですから」
「うん。早くお兄ちゃん達も帰ってくると良いけど……」
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「お兄ちゃん、痛いよ」
「美羽! 無事で本当に良かった。昨日はもう寝てたから我慢したんだ。今日はもう学校行かなくて良いよ。お兄ちゃんとずっとこうしていよう」
「嫌だよ、離してよ」
いつものように接するが、私も本当は兄に会えてとても嬉しい。はぐれたのが日本ならどうにかなるが、あそこは異世界。魔王が来てくれなかったら一生兄とは離れ離れになっていたかもしれない。
両親も亡くなった今、私の家族は兄だけだ。どうしても兄に依存してしまう。兄はシスコンだが、私も実は隠れブラコンなのだ。兄に言ったら喜ぶので言わないが……。
「お兄様、大学に間に合わなくなりますわ。美羽もそろそろ出ないと遅刻しますわよ」
「うん。仕方ない」
レイラに諭され、兄は渋々私から離れた。かと思いきや、手を繋いできた。
「美羽が迷子にならないようにお兄ちゃんずっとこうしてるよ」
「嫌だよ。恥ずかしいよ」
「じゃあ、おんぶにする? それとも抱っこ?」
「手で良いよ。手繋いで行けば良いんでしょ」
兄の言い付けを守らなかったせいで、危ない目に遭うところだった。今日くらいは兄の好きなようにさせよう。
「お兄ちゃん行くよ。レイラ、バイト頑張ってね。帰りスーパー寄るから」
「はい! お待ちしておりますわ」
私と兄はレイラに見送られながら家を出た。出た瞬間驚いた。そこには小夜と拓海と田中が立っていた。
「おはよう……みんなどうしたの?」
「どうしたの? じゃないよ。美羽心配したんだから」
「ごめんね」
小夜が抱きついてきたので私もぎゅっと抱きしめ返した。小夜は私からそっと離れながら言った。
「拓海君と田中も頑張ってたよ。あ、お兄さんもね」
「いや、あれは小夜ちゃんのおかげだよ。な田中」
「うん。こいつがいなかったら手も足も出なかったからな」
拓海と田中もダンジョンで頑張っていたようだ。積もる話があるのだろう。そんな私たちを微笑ましそうに見てから兄が言った。
「立ち話してたら遅れちゃうから歩きながら話そうよ」
皆が賛同して歩き出すと、田中が私と兄の手に気付いたようだ。
「あ、お兄さん美羽と手繋いでずるい。美羽、こっち俺が手繋いで良い?」
「嫌だよ」
「はは、田中フラれたな。こっちは……」
「拓海もダメだよ」
「学校では恋人同士だろ。俺たち」
拓海がそう言った瞬間、兄が拓海をキッと睨んだのが分かった。
「何それ、僕はそんなこと聞いてないんだけど。小夜ちゃん、美羽のそっちの手繋いでて」
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