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第三章 アイテム争奪戦
好感度MAX
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私と兄と小夜は魔王に転移で情報屋のいるというバーの近くまで連れて来てもらった。
時間短縮もあるが、兄はともかく、小夜は制服で私はジャージ。この世界の外を歩くには奇抜すぎる。
「終わったらこれで呼んでくれ。迎えにくるから」
魔王が兄に携帯電話のような魔道具を手渡した。
「了解。ここ押せば良いんだね」
「じゃあ、魔王様、あの二人よろしくね」
「任せとけ」
そう言って、魔王はその場から消えた。
私と兄は小夜の行く方に付いて行くと一つのお店の前に辿り着いた。
「えっと、多分ここかな」
「昼間もバーって開いてるんだね」
こじんまりとした店の外観は思ったよりもオシャレで色とりどりの花で飾り付けもされていた。中に入ると、扉に仕掛けてあった鈴がチリンと鳴った。同時に中から声がした。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
カウンターに三人で並ぶと、バーテンダーの男性は奇抜な服装の私たちを見て一瞬驚いた様子だったが、すぐに笑顔になった。
「何に致しましょう」
「オレンジジュース三つで。あと、これ追加で」
小夜がジュースを注文をしながら、兄が稼いできたお金をチラリと見せた。
「少々お待ち下さい」
バーテンダーはグラスにオレンジジュースを注いで、それを机に並べながらニコリと笑って言った。
「可愛いお嬢さんは何を知りたいのかな?」
「ダンジョンにあるアイテムの場所を教えて下さい」
「ああ、昨日も同じことを聞きにきた女性がいたね。最近流行ってるのかな?」
私は小夜と兄に目配せをした。間違いない、シャーロットだ。遂にアイテムの存在に気付いてしまったようだ。内心焦りを感じながらも平常を装ってバーテンダーに再度聞いた。
「それで、何層にあるのですか?」
「ああ、ごめんね。二十二層と六十五層だよ」
「ありがとうございます」
用が済んだのでジュースを飲んでからダンジョンに戻ろうと思ったが、ふと気がついた。
「ダンジョンってトイレないよね。ここで行っとくね」
「確かに。私も美羽の後に行くわ」
トイレは裏口から出たすぐ横にあった。私は用を済ませ、席に戻ろうとすると誰かに声をかけられた。
「ミウ?」
「え? 私?」
こんな所に私のことを知っている人はいないはずなのに。そう思いながら振り返ると、青髪青眼の青年が立っていた。その麗しい顔は忘れもしない、古代遺跡の時に山賊抱っこをしてくれた美青年だ。
「どうしてこんな所に? いや、今はそんな暇はない。ミウ一緒に来てもらう」
「え、でも……」
「時間がないんだ。後で家まで送ってやるから」
「え、ちょっ、おろして」
私は美青年に再び山賊抱っこされ、とても高貴な馬車に乗り込んだ。
◇◇◇◇
「ごめん。怒るなよ」
「だって、急すぎるし、無理矢理すぎる」
私は兄と小夜と離れてしまった。しかも何も言わずに。絶対心配している。
「元はと言えばミウが悪いんだぞ」
「なんで私?」
責任転嫁にも程がある。私は有無を言わさず連れてこられただけだ。
「サイトウなんて家ないじゃないか。探し回ったのに、オレに嘘吐いたのか?」
「嘘なんて吐いてないよ。貧乏な家だから見つからなかったんでしょ」
これも嘘ではない。だが、何故私の家を探しているのだろうか。聞こうと思ったら馬車が止まった。
「よし、行くぞ」
「どこに?」
「そんな服じゃ人前に出れないだろ? 新しいドレス買いに行くぞ」
「え、新しいドレス? このジャージも可愛い……くはないか」
制服の時とは違って普通にダサい。芋女丸出しである。
私は美青年に手を引かれ、馬車から降りた。そこはキラキラと輝くお姫様が着るようなドレスが並んでいる店だった。
「駄目、私帰るから! こんなの買うお金なんてどこにもないんだから! こんなの買ったら借金地獄よ、破産よ、大学受験なんてもってのほかよ!」
私は馬車に戻ろうと必死にあがいた。駄々っ子のように座り込んでみたりもした。しかし、その線の細い体からは想像も付かない程、美青年の力は強かった。
「お金は気にするな。オレからのプレゼントだから。これからも好きなのを好きなだけ着れば良い。義兄上もきっと生活が楽になるはずだ」
「プレゼント? てことは、タダ?」
「当たり前だ。プレゼントだからな」
タダに弱い私は名前も知らないその美青年にホイホイ付いて行った——。
「今日は時間がないからな。とりあえず青にしとこう」
「なんでそんなに時間ないの?」
「夕方までにミウを連れて行かないと無理矢理政略結婚させられるんだ」
「お金持ちって大変なんだね」
私は青いドレスに身を包み、髪も綺麗にセットされ化粧もされた。
「お姫様になった気分」
「……」
美青年は呆然と私を見ている。
「なに? 孫にも衣装とでも言いたいんでしょ」
「いや、可愛いな」
「な、そんな褒めても何もでないんだからね。時間ないんでしょ? 用事済ませたら私も早く帰らなきゃいけないんだから」
この世界と元の世界では時間のズレがある。こちらの世界が夕方になる頃には元の世界では夜中に近いのだ。明日は学校もあるから早く寝たい。
「ごめんな。じゃあ行こう」
「うん。ところで、貴方お名前は?」
聞いておかないと、これからこの人の家に行くのに知らなかったとなれば良い恥晒しだ。美青年も呆気にとられた顔をして応えた。
「知らなかったのか? セドリックだ」
「え、あなたセドリックって言うの?」
「ああ、セドリック・ブレインだ。生涯を誓った相手の名くらい覚えとけよ」
「うん、ごめん。って、ええ!?」
私はいつセドリックと生涯を誓ったのだろうか。そして、このセドリックとは女嫌いのセドリック。ステータスを開いて見ると……好感度MAXになっていた。
私はこれからセドリックの家に行って何をするのだろうか。不安が募るばかりだ。
時間短縮もあるが、兄はともかく、小夜は制服で私はジャージ。この世界の外を歩くには奇抜すぎる。
「終わったらこれで呼んでくれ。迎えにくるから」
魔王が兄に携帯電話のような魔道具を手渡した。
「了解。ここ押せば良いんだね」
「じゃあ、魔王様、あの二人よろしくね」
「任せとけ」
そう言って、魔王はその場から消えた。
私と兄は小夜の行く方に付いて行くと一つのお店の前に辿り着いた。
「えっと、多分ここかな」
「昼間もバーって開いてるんだね」
こじんまりとした店の外観は思ったよりもオシャレで色とりどりの花で飾り付けもされていた。中に入ると、扉に仕掛けてあった鈴がチリンと鳴った。同時に中から声がした。
「いらっしゃいませ。お好きな席へどうぞ」
カウンターに三人で並ぶと、バーテンダーの男性は奇抜な服装の私たちを見て一瞬驚いた様子だったが、すぐに笑顔になった。
「何に致しましょう」
「オレンジジュース三つで。あと、これ追加で」
小夜がジュースを注文をしながら、兄が稼いできたお金をチラリと見せた。
「少々お待ち下さい」
バーテンダーはグラスにオレンジジュースを注いで、それを机に並べながらニコリと笑って言った。
「可愛いお嬢さんは何を知りたいのかな?」
「ダンジョンにあるアイテムの場所を教えて下さい」
「ああ、昨日も同じことを聞きにきた女性がいたね。最近流行ってるのかな?」
私は小夜と兄に目配せをした。間違いない、シャーロットだ。遂にアイテムの存在に気付いてしまったようだ。内心焦りを感じながらも平常を装ってバーテンダーに再度聞いた。
「それで、何層にあるのですか?」
「ああ、ごめんね。二十二層と六十五層だよ」
「ありがとうございます」
用が済んだのでジュースを飲んでからダンジョンに戻ろうと思ったが、ふと気がついた。
「ダンジョンってトイレないよね。ここで行っとくね」
「確かに。私も美羽の後に行くわ」
トイレは裏口から出たすぐ横にあった。私は用を済ませ、席に戻ろうとすると誰かに声をかけられた。
「ミウ?」
「え? 私?」
こんな所に私のことを知っている人はいないはずなのに。そう思いながら振り返ると、青髪青眼の青年が立っていた。その麗しい顔は忘れもしない、古代遺跡の時に山賊抱っこをしてくれた美青年だ。
「どうしてこんな所に? いや、今はそんな暇はない。ミウ一緒に来てもらう」
「え、でも……」
「時間がないんだ。後で家まで送ってやるから」
「え、ちょっ、おろして」
私は美青年に再び山賊抱っこされ、とても高貴な馬車に乗り込んだ。
◇◇◇◇
「ごめん。怒るなよ」
「だって、急すぎるし、無理矢理すぎる」
私は兄と小夜と離れてしまった。しかも何も言わずに。絶対心配している。
「元はと言えばミウが悪いんだぞ」
「なんで私?」
責任転嫁にも程がある。私は有無を言わさず連れてこられただけだ。
「サイトウなんて家ないじゃないか。探し回ったのに、オレに嘘吐いたのか?」
「嘘なんて吐いてないよ。貧乏な家だから見つからなかったんでしょ」
これも嘘ではない。だが、何故私の家を探しているのだろうか。聞こうと思ったら馬車が止まった。
「よし、行くぞ」
「どこに?」
「そんな服じゃ人前に出れないだろ? 新しいドレス買いに行くぞ」
「え、新しいドレス? このジャージも可愛い……くはないか」
制服の時とは違って普通にダサい。芋女丸出しである。
私は美青年に手を引かれ、馬車から降りた。そこはキラキラと輝くお姫様が着るようなドレスが並んでいる店だった。
「駄目、私帰るから! こんなの買うお金なんてどこにもないんだから! こんなの買ったら借金地獄よ、破産よ、大学受験なんてもってのほかよ!」
私は馬車に戻ろうと必死にあがいた。駄々っ子のように座り込んでみたりもした。しかし、その線の細い体からは想像も付かない程、美青年の力は強かった。
「お金は気にするな。オレからのプレゼントだから。これからも好きなのを好きなだけ着れば良い。義兄上もきっと生活が楽になるはずだ」
「プレゼント? てことは、タダ?」
「当たり前だ。プレゼントだからな」
タダに弱い私は名前も知らないその美青年にホイホイ付いて行った——。
「今日は時間がないからな。とりあえず青にしとこう」
「なんでそんなに時間ないの?」
「夕方までにミウを連れて行かないと無理矢理政略結婚させられるんだ」
「お金持ちって大変なんだね」
私は青いドレスに身を包み、髪も綺麗にセットされ化粧もされた。
「お姫様になった気分」
「……」
美青年は呆然と私を見ている。
「なに? 孫にも衣装とでも言いたいんでしょ」
「いや、可愛いな」
「な、そんな褒めても何もでないんだからね。時間ないんでしょ? 用事済ませたら私も早く帰らなきゃいけないんだから」
この世界と元の世界では時間のズレがある。こちらの世界が夕方になる頃には元の世界では夜中に近いのだ。明日は学校もあるから早く寝たい。
「ごめんな。じゃあ行こう」
「うん。ところで、貴方お名前は?」
聞いておかないと、これからこの人の家に行くのに知らなかったとなれば良い恥晒しだ。美青年も呆気にとられた顔をして応えた。
「知らなかったのか? セドリックだ」
「え、あなたセドリックって言うの?」
「ああ、セドリック・ブレインだ。生涯を誓った相手の名くらい覚えとけよ」
「うん、ごめん。って、ええ!?」
私はいつセドリックと生涯を誓ったのだろうか。そして、このセドリックとは女嫌いのセドリック。ステータスを開いて見ると……好感度MAXになっていた。
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