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第三章 アイテム争奪戦
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田中がスライムを倒したのを見てムキになった拓海は、次に出て来たゴブリンを一瞬で倒した。
「どうだった、美羽。格好良かっただろ?」
「うん。拓海の剣の腕は衰えてないね。今度大会見に行こうかな」
「え、マジで!? 美羽が来てくれるなら絶対優勝するから」
拓海は嬉しそうに笑っている。何だか昔に戻ったみたいだ。私も拓海に微笑みかけると、田中がムッとして言った。
「美羽、次は俺が倒すから。拓海の倒したあんな雑魚じゃなくて、もっと強いやつ」
「田中、お前剣扱ったことないだろ。気を付けろよ」
「うるさい! お前だって竹刀しか使ったことないじゃん。拓海より早くアイテムを手に入れてやるから見てろよ」
再び拓海と田中の喧嘩が始まったので、私は魔王の後ろで参考書に目を移した。すると、魔王と小夜が口々に呟いた。
「思ったよりも早く上に行けるかもしれんな」
「美羽、焚き付けるのが上手いね」
「なんの話?」
私はキョトンと魔王と小夜を見つめた。
「まさか無自覚とは……」
「小夜、こいつは恐ろしいやつなのだ」
「え、まさか魔王様まで……? 駄目ですよ! 魔王様にはレイラちゃんが、私がいるんですから。こんな悪魔に引っかかっちゃ絶対駄目ですよ!」
「小夜ちゃん、人のこと悪魔って酷くない? あ、でも魔王様って元は悪魔なの? てことはさ、悪魔って悪い人ばっかりじゃないんだね。悪魔は褒め言葉だね」
ニコリと魔王に笑いかけると、魔王の顔が赤くなった。
「こら、美羽もうやめて! 美羽は勉強だけしてたら良いから!」
「私だってそうしたいよ。てか、私ここに付いてこなくて良かったんじゃない? 帰ろうかな」
私が呟けば、喧嘩をしていた拓海と田中が同時に言った。
「「ダメ! 美羽がいないと頑張れない!」」
「あ、そう……二人共仲良いんだね」
それから暫くは最下層でコボルドやホーンラビット等の下級魔物を次々と倒し、一つ上の層に上がった——。
◇◇◇◇
「生身の人間が一日で上にあがれるとはな。大したものだ」
「愛のチカラは凄いね」
「小夜ちゃん言ってて恥ずかしくないの? てか、拓海も田中も何してんの?」
拓海と田中は先程から空中に手をかざして一喜一憂しているのだ。側から見れば不審者にしか見えない。
「なんかさ、この辺タッチすると自分のステータスみれるっぽいんだ。田中は今レベル何?」
「レベル三。拓海は?」
「レベル四だ。勝ったな」
どんぐりの背比べだが、経験値を積めば確実に強くなるということか。流石乙女ゲーム。私も気になって、空中をタッチしてみた。
「ほんとだ。出てきた。私は……レベル一だって」
「仕方ないよ。戦ってないんだから。あ、美羽、攻略対象の好感度見れるっぽいよ」
「小夜ちゃん、私たちヒロインじゃないんだから見てもゼロに決まって……」
「美羽?」
攻略対象の好感度が上がっている。しかも二人も。一人はコリン好感度四十。この間、離島で話をしたからだろう。良い印象を持ってもらえたようで安心した。
しかし、もう一人のセドリックとは誰だ。攻略対象の一人なのは知っている。だが、この世界で会った覚えはない。
「セドリックって女嫌いのセドリックだよね?」
「うん。中々好感度あがらないやつ」
「八十九とか書いてあるんだけど」
「は?」
「何かの間違いだよね。会ったことないしさ。これ信用ならないよ」
私はステータスを閉じた。そして、ふと疑問に感じたことを口にした。
「ダンジョンってさ、百層とかあったりするんでしょ? この調子で大丈夫なの?」
学校もあるし、順調に一日二層ずつ上がれたとしても五十日はかかる。先にシャーロットにアイテムを取られてしまうのがオチだ。
「そこなんだ。百層まではないがな。ただ、どの階層にアイテムがあるか分からんことには結局一つずつ上がるしかないしな……」
私と魔王が今後の心配をしていると、小夜が何事もないかのように言った。
「情報屋に聞きに行く?」
「え、何それ?」
「美羽知らないの? 王都の端っこの方にあるバーなんだけど、そこのバーテンにお金払えば大抵の情報は教えてくれるはずだよ」
初耳だ。私は課金はしないから、そういうのは全てスルーしていた。魔王も然り。小夜がいてくれて心底良かったと思った。
「じゃあさ、私と小夜ちゃんで聞きに行こうよ。拓海と田中はここで頑張ってもらってさ」
「では、俺も」
「魔王様は駄目だよ。二人に何かあったらどうするの? 魔物相手なんだから一緒にいてあげて」
「だが……」
女子二人で行かせるのが心配なのだろう。気持ちは分かるが魔物とバーテンダー、明らかにバーテンダーの方が安全だ。
「どこ行くの? 僕も一緒に行くよ」
「お兄ちゃん! どう、稼げた?」
「うん。それなりに。で、どこ行くの?」
「どうだった、美羽。格好良かっただろ?」
「うん。拓海の剣の腕は衰えてないね。今度大会見に行こうかな」
「え、マジで!? 美羽が来てくれるなら絶対優勝するから」
拓海は嬉しそうに笑っている。何だか昔に戻ったみたいだ。私も拓海に微笑みかけると、田中がムッとして言った。
「美羽、次は俺が倒すから。拓海の倒したあんな雑魚じゃなくて、もっと強いやつ」
「田中、お前剣扱ったことないだろ。気を付けろよ」
「うるさい! お前だって竹刀しか使ったことないじゃん。拓海より早くアイテムを手に入れてやるから見てろよ」
再び拓海と田中の喧嘩が始まったので、私は魔王の後ろで参考書に目を移した。すると、魔王と小夜が口々に呟いた。
「思ったよりも早く上に行けるかもしれんな」
「美羽、焚き付けるのが上手いね」
「なんの話?」
私はキョトンと魔王と小夜を見つめた。
「まさか無自覚とは……」
「小夜、こいつは恐ろしいやつなのだ」
「え、まさか魔王様まで……? 駄目ですよ! 魔王様にはレイラちゃんが、私がいるんですから。こんな悪魔に引っかかっちゃ絶対駄目ですよ!」
「小夜ちゃん、人のこと悪魔って酷くない? あ、でも魔王様って元は悪魔なの? てことはさ、悪魔って悪い人ばっかりじゃないんだね。悪魔は褒め言葉だね」
ニコリと魔王に笑いかけると、魔王の顔が赤くなった。
「こら、美羽もうやめて! 美羽は勉強だけしてたら良いから!」
「私だってそうしたいよ。てか、私ここに付いてこなくて良かったんじゃない? 帰ろうかな」
私が呟けば、喧嘩をしていた拓海と田中が同時に言った。
「「ダメ! 美羽がいないと頑張れない!」」
「あ、そう……二人共仲良いんだね」
それから暫くは最下層でコボルドやホーンラビット等の下級魔物を次々と倒し、一つ上の層に上がった——。
◇◇◇◇
「生身の人間が一日で上にあがれるとはな。大したものだ」
「愛のチカラは凄いね」
「小夜ちゃん言ってて恥ずかしくないの? てか、拓海も田中も何してんの?」
拓海と田中は先程から空中に手をかざして一喜一憂しているのだ。側から見れば不審者にしか見えない。
「なんかさ、この辺タッチすると自分のステータスみれるっぽいんだ。田中は今レベル何?」
「レベル三。拓海は?」
「レベル四だ。勝ったな」
どんぐりの背比べだが、経験値を積めば確実に強くなるということか。流石乙女ゲーム。私も気になって、空中をタッチしてみた。
「ほんとだ。出てきた。私は……レベル一だって」
「仕方ないよ。戦ってないんだから。あ、美羽、攻略対象の好感度見れるっぽいよ」
「小夜ちゃん、私たちヒロインじゃないんだから見てもゼロに決まって……」
「美羽?」
攻略対象の好感度が上がっている。しかも二人も。一人はコリン好感度四十。この間、離島で話をしたからだろう。良い印象を持ってもらえたようで安心した。
しかし、もう一人のセドリックとは誰だ。攻略対象の一人なのは知っている。だが、この世界で会った覚えはない。
「セドリックって女嫌いのセドリックだよね?」
「うん。中々好感度あがらないやつ」
「八十九とか書いてあるんだけど」
「は?」
「何かの間違いだよね。会ったことないしさ。これ信用ならないよ」
私はステータスを閉じた。そして、ふと疑問に感じたことを口にした。
「ダンジョンってさ、百層とかあったりするんでしょ? この調子で大丈夫なの?」
学校もあるし、順調に一日二層ずつ上がれたとしても五十日はかかる。先にシャーロットにアイテムを取られてしまうのがオチだ。
「そこなんだ。百層まではないがな。ただ、どの階層にアイテムがあるか分からんことには結局一つずつ上がるしかないしな……」
私と魔王が今後の心配をしていると、小夜が何事もないかのように言った。
「情報屋に聞きに行く?」
「え、何それ?」
「美羽知らないの? 王都の端っこの方にあるバーなんだけど、そこのバーテンにお金払えば大抵の情報は教えてくれるはずだよ」
初耳だ。私は課金はしないから、そういうのは全てスルーしていた。魔王も然り。小夜がいてくれて心底良かったと思った。
「じゃあさ、私と小夜ちゃんで聞きに行こうよ。拓海と田中はここで頑張ってもらってさ」
「では、俺も」
「魔王様は駄目だよ。二人に何かあったらどうするの? 魔物相手なんだから一緒にいてあげて」
「だが……」
女子二人で行かせるのが心配なのだろう。気持ちは分かるが魔物とバーテンダー、明らかにバーテンダーの方が安全だ。
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「うん。それなりに。で、どこ行くの?」
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