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第二章 日常、そして非日常
体調不良②
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「はぁー、スッキリした」
結局午前中は保健室で寝た。ぐっすりと。やはり人間睡眠不足は良くない。勉強での睡眠不足ならまだしも、活発に走り回ったのだ。寝ずに二日目を過ごした気分だった。
異世界に行くにしても時間を考えていかないと体がもたない。受験も失敗しそうな気さえする。
保健室の先生がカーテンをチラリと開けて聞いてきた。
「斉藤さん元気になった? あなたが来るなんて珍しいわよね」
「もう大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました」
私は制服の皺を簡単に伸ばして、保健室の先生にお辞儀をして教室に戻った——。
私が教室に戻ると、丁度昼休憩だったので皆がお弁当を持ち寄ってそれぞれグループに分かれて食べていた。
「美羽、顔色戻ったね」
「うん。寝たら治った。小夜ちゃんありがとう」
「ううん。それより、美羽ごめん」
小夜が手を合わせて謝ってきた。
「どうしたの?」
「田中に話しちゃった。田中のファンが美羽にしたこと」
「そっか」
「ごめんね、なんかめっちゃ怖くてさ。でも、本人達には何も言わないって約束させたからそこは大丈夫」
「ありがとう。まあ、私には小夜ちゃんがいるから良いよ。昔とは違うから」
そう、今は一人じゃない。小夜もいるし拓海も守ってくれている。家に帰れば兄だけでなくレイラや魔王までいてくれる。あとは自分が強くなるだけだ。
そして噂の田中は……食堂に行っているのか教室には見当たらない。教室で話しかけられるとどうしても目立つのでちょうど良い。
私の心配をよそに、それから学校で田中に声をかけられることは無くなった——。
◇◇◇◇
午後からは何事もなく時が過ぎ、帰宅した。
「レイラ、これ何?」
「昨日も夜中まで頑張って下さって美羽もお疲れのようだったので、僭越ながらわたくしが晩御飯をお作りしましたの。先にご飯にします? それともお風呂?」
ニコリと笑うレイラはとても可愛い。こんな彼女が晩御飯を作って待っていてくれるなら学校だって仕事だって頑張れるというものだ。
しかし、そこにあるのはお世辞にも美味しそうとは言えない何かがあった。その何かがそもそもどんな料理なのかも分からない。それ程の見た目なのだ。強いて言うならば黒い炭だ。
「う、うん。ありがとう。先にお風呂にしようかな」
私一人でその食事は食べたくな……勿体無い。せっかくなので、魔王と兄にも食してもらわなければ。レイラのことが大好きな魔王と兄は、これがどんな味だったとしても美味しいと言って食べてくれるに違いない。
「分かりましたわ。お風呂も沸いておりますので、どうぞお入り下さいな」
「ありがとう。レイラ、お風呂の入れ方分かったの?」
「ええ、ボタンを押すだけでしたわ。最近のお風呂は便利ですわね」
「そっか。じゃあ、先に入ってくるね」
私は脱衣場で服を脱ぎ、全裸になった。そして、浴室に入った瞬間、目が点になった。
「何、この泡風呂」
湯船が泡だらけだった。このまま入っても良さそうなくらい泡がてんこ盛りだ。優雅に泡風呂を堪能しろと言うことだろうか?
いやいや、我が家に泡風呂用の入浴剤は置いていない。隣の五十嵐さんにもらった? あり得る話だ。考えても分からないので湯船まで行って泡を持ってみた。そして匂いを嗅いでみた。
「これは……!」
泡の正体が分かった。これは、お風呂用洗剤だ。すぐさまレイラを呼んだ。
「レイラー!?」
「どう致しましたか?」
「これどうやったらこんなことになるの?」
泡風呂を指さして言うと、レイラの目も点になった。
「これは……どうしてこのようなことに? わたくしは、ここに書かれていたようにしただけですわ」
レイラはお風呂用洗剤の容器に大きく書かれた文字を私に見せてきた。
「ほら、書いてあるでしょう。『シュッとかけてこすらずキレイ』と。わたくしは書いてある通りにしたのですわ」
「レイラ……それは、ブラシでこすらなくても良いってだけで、洗剤は後で流さないといけないんだよ」
「そうなのですか!? 申し訳ございません! もう一度入れ直しますわ。美羽、待っていて下さいませ!」
レイラが湯船のお湯を抜いて、再び浴槽を洗うところから始めようとしたので私はレイラに言った。
「もう良いよ。私が教えて無かったのが悪いんだし、今日はシャワーで済ませるから」
「ですが、美羽、湯船に浸からないと疲れがとれませんわ」
「このまま裸で待たされてる方が風邪引くよ」
「分かりましたわ……」
レイラは随分と落ち込んで浴室から出ていった。
失敗したとしてもレイラは私の為に善意でやってくれた事だ。せめて、あの黒い炭……食事だけでも美味しいと言って食べてあげよう。そう心に誓いながらシャワーを浴びた。
——そして私と兄と魔王は、その夜お腹を抱えて寝込んだのだった。
結局午前中は保健室で寝た。ぐっすりと。やはり人間睡眠不足は良くない。勉強での睡眠不足ならまだしも、活発に走り回ったのだ。寝ずに二日目を過ごした気分だった。
異世界に行くにしても時間を考えていかないと体がもたない。受験も失敗しそうな気さえする。
保健室の先生がカーテンをチラリと開けて聞いてきた。
「斉藤さん元気になった? あなたが来るなんて珍しいわよね」
「もう大丈夫です。ご迷惑をお掛けしました」
私は制服の皺を簡単に伸ばして、保健室の先生にお辞儀をして教室に戻った——。
私が教室に戻ると、丁度昼休憩だったので皆がお弁当を持ち寄ってそれぞれグループに分かれて食べていた。
「美羽、顔色戻ったね」
「うん。寝たら治った。小夜ちゃんありがとう」
「ううん。それより、美羽ごめん」
小夜が手を合わせて謝ってきた。
「どうしたの?」
「田中に話しちゃった。田中のファンが美羽にしたこと」
「そっか」
「ごめんね、なんかめっちゃ怖くてさ。でも、本人達には何も言わないって約束させたからそこは大丈夫」
「ありがとう。まあ、私には小夜ちゃんがいるから良いよ。昔とは違うから」
そう、今は一人じゃない。小夜もいるし拓海も守ってくれている。家に帰れば兄だけでなくレイラや魔王までいてくれる。あとは自分が強くなるだけだ。
そして噂の田中は……食堂に行っているのか教室には見当たらない。教室で話しかけられるとどうしても目立つのでちょうど良い。
私の心配をよそに、それから学校で田中に声をかけられることは無くなった——。
◇◇◇◇
午後からは何事もなく時が過ぎ、帰宅した。
「レイラ、これ何?」
「昨日も夜中まで頑張って下さって美羽もお疲れのようだったので、僭越ながらわたくしが晩御飯をお作りしましたの。先にご飯にします? それともお風呂?」
ニコリと笑うレイラはとても可愛い。こんな彼女が晩御飯を作って待っていてくれるなら学校だって仕事だって頑張れるというものだ。
しかし、そこにあるのはお世辞にも美味しそうとは言えない何かがあった。その何かがそもそもどんな料理なのかも分からない。それ程の見た目なのだ。強いて言うならば黒い炭だ。
「う、うん。ありがとう。先にお風呂にしようかな」
私一人でその食事は食べたくな……勿体無い。せっかくなので、魔王と兄にも食してもらわなければ。レイラのことが大好きな魔王と兄は、これがどんな味だったとしても美味しいと言って食べてくれるに違いない。
「分かりましたわ。お風呂も沸いておりますので、どうぞお入り下さいな」
「ありがとう。レイラ、お風呂の入れ方分かったの?」
「ええ、ボタンを押すだけでしたわ。最近のお風呂は便利ですわね」
「そっか。じゃあ、先に入ってくるね」
私は脱衣場で服を脱ぎ、全裸になった。そして、浴室に入った瞬間、目が点になった。
「何、この泡風呂」
湯船が泡だらけだった。このまま入っても良さそうなくらい泡がてんこ盛りだ。優雅に泡風呂を堪能しろと言うことだろうか?
いやいや、我が家に泡風呂用の入浴剤は置いていない。隣の五十嵐さんにもらった? あり得る話だ。考えても分からないので湯船まで行って泡を持ってみた。そして匂いを嗅いでみた。
「これは……!」
泡の正体が分かった。これは、お風呂用洗剤だ。すぐさまレイラを呼んだ。
「レイラー!?」
「どう致しましたか?」
「これどうやったらこんなことになるの?」
泡風呂を指さして言うと、レイラの目も点になった。
「これは……どうしてこのようなことに? わたくしは、ここに書かれていたようにしただけですわ」
レイラはお風呂用洗剤の容器に大きく書かれた文字を私に見せてきた。
「ほら、書いてあるでしょう。『シュッとかけてこすらずキレイ』と。わたくしは書いてある通りにしたのですわ」
「レイラ……それは、ブラシでこすらなくても良いってだけで、洗剤は後で流さないといけないんだよ」
「そうなのですか!? 申し訳ございません! もう一度入れ直しますわ。美羽、待っていて下さいませ!」
レイラが湯船のお湯を抜いて、再び浴槽を洗うところから始めようとしたので私はレイラに言った。
「もう良いよ。私が教えて無かったのが悪いんだし、今日はシャワーで済ませるから」
「ですが、美羽、湯船に浸からないと疲れがとれませんわ」
「このまま裸で待たされてる方が風邪引くよ」
「分かりましたわ……」
レイラは随分と落ち込んで浴室から出ていった。
失敗したとしてもレイラは私の為に善意でやってくれた事だ。せめて、あの黒い炭……食事だけでも美味しいと言って食べてあげよう。そう心に誓いながらシャワーを浴びた。
——そして私と兄と魔王は、その夜お腹を抱えて寝込んだのだった。
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