7 / 86
第一章 同居スタート
幼馴染
しおりを挟む
拓海は私の幼馴染。家も近所で小さい頃からずっと一緒に育ってきた。
拓海はサバサバした性格で顔も良いので男女共に人気者だ。そんな拓海と仲の良い芋女の私は、女子から妬みの対象に。
虐められている私を拓海が助けるが、それが逆効果。虐めがエスカレートしていった。それを見兼ねた兄が、拓海に言った。
『もう美羽とは関わらないでくれ』
と。拓海は兄の言いつけを守った。すると虐めは徐々に落ち着いていき、今では一人だが友人もいる——。
そんな拓海とバッタリ会った。レイラと魔王様と買い物の最中に。
「ぐ、偶然だね」
「その人たち誰?」
拓海が私の肩を掴んでいる魔王を睨んでいるような気がするのは気のせいか。そして、魔王はいつまで肩を掴んでいる。
魔王の手をペチペチと叩いてみると、魔王は手を離した。
「えっと……今うちでホームステイしてる人達」
「そっちの男も?」
やはり拓海は魔王を睨んでいる。私の代わりに魔王が応えた。
「そうだ。何か問題でも?」
拓海は至極不愉快そうな顔をして、私の手を引いた。
「美羽、ちょっと……」
レイラと魔王に聞こえない距離まで移動すると拓海が立ち止まったので、私は拓海に聞いた。
「どうしたの?」
「大丈夫なのか? 女の子は良いけど、あの男」
「大丈夫って?」
魔王だってバレた? いやいや、そんなはずはない。
拓海は頬を赤らめながら、恥ずかしそうに言った。
「いや……いかがわしいことされてないか? さっきも迫られてただろ」
「迫られてはないけど……」
いかがわしい妄想はされそうになった。
「でも、あの男の人は隣にいた金髪の子が好きなんだよ」
「そうなのか?」
納得のいっていない顔だが事実だ。嘘は言っていない。
「私、もう行くね」
「おぅ。あ、美羽、なんかあったらすぐに連絡しろよ。秒で駆けつけてやるから」
「何それ。拓海の癖に格好良いじゃん」
素直にそう言えば、拓海は私の髪をクシャクシャっとして言った。
「格好良いんだよ。じゃあな」
拓海はそのまま人混みに消えた。
「もう、髪ぐちゃぐちゃになっちゃったじゃん」
髪を整えながらレイラと魔王の元へ向かうと、レイラが目を輝かせながら聞いてきた。
「誰ですの!? 美羽はあの方とお付き合いしているのですか?」
「幼馴染の拓海。付き合ってはないよ。最近は話もしてないし」
「そうなのですね。美羽の恋愛話が聞けるかと楽しみでしたのに、残念ですわ」
「俺に敵意剥き出しだったが……」
魔王も気付いていたのか。そりゃ気付くか。
「なんか誤解してたみたい。しっかり説明しといたから大丈夫だと思うよ。それに、多分もう会わないだろうし」
拓海とは家は近いが、高校も別のクラスでほぼ会うことはない。すれ違っても最近は挨拶すらしていない。
「もう良いじゃん。買い物の続きしよ!」
◇◇◇◇
買い物を済ませ、帰りにアイスを食べながら帰路についた。
「汗びっしょりだね。レイラ、先にお風呂入ろう」
「そうですわね。さすがにベタベタですわ」
私とレイラが口々に言うと、魔王がお風呂を沸かしてくれた。
「ありがとう」
「服を買って貰ったからな」
「魔王様、嬉しそうだね」
安いセール品なので申し訳なく思いながらも、喜んでもらえたなら買った甲斐があると言うものだ。
「美羽からの初めてのプレゼントだからな。大切に毎日着るよ」
爽やかに笑う魔王を見て、私はボンッと頭から湯気が出そうになった。
「魔王様、そういうのは好きな女性に言うセリフ! レイラに言ってあげて」
「でも、買ってくれたの美羽だし。美羽も好きだから良いだろ」
「もう、魔王様ってば。レイラ、お風呂入ろう」
あんなに自然と好きだと言われたら勘違いしてしまいそうになる。魔王は女性を何人も泣かせてきたに違いない——。
早速お風呂に入り、私はレイラの髪を洗っている。
「レイラ、後は髪の毛だけだね」
「これも美羽の指導の賜物ですわ」
「はは、指導って程じゃないけどね」
レイラは、うちに来た当初は私が全身くまなく洗っていた。しかし、今では体は自分で洗えるようになった。
髪は長いのもあって洗い残しがある為、仕上げに私が洗っている。
私はレイラの髪の毛にトリートメントを付けながら、ふと疑問に思ったことを口にした。
「レイラは、魔王様のことどう思ってるの?」
「どう、とは?」
「魔王様はレイラのこと大好きだけど、レイラの気持ち聞いた事なかったなって思って」
レイラは悩んでいるのか、暫く沈黙が続いた。トリートメントを流し終えると、レイラが口を開いた。
「わたくしは……よく分かりませんわ。政略結婚が普通でしたので、恋愛というものがよく分かりません。わたくしが魔王様と結婚しなければならないのなら結婚するまでですが」
「そっか。ここは自由だから誰と恋愛しても良いんだよ。レイラにも好きな相手が見つかると良いね!」
「はい」
レイラはにっこり笑顔で返事をすると、ちゃぽんと湯船に浸かった。
魔王には悪いが、私はレイラの味方だ。レイラに好きな相手が見つかれば全力で応援する。元の世界に戻すつもりはない。
ただし、もしもレイラが好きになる相手が魔王なら私は潔くレイラとお別れしよう。
そんなことを考えながら、頭をわしゃわしゃと洗った。
拓海はサバサバした性格で顔も良いので男女共に人気者だ。そんな拓海と仲の良い芋女の私は、女子から妬みの対象に。
虐められている私を拓海が助けるが、それが逆効果。虐めがエスカレートしていった。それを見兼ねた兄が、拓海に言った。
『もう美羽とは関わらないでくれ』
と。拓海は兄の言いつけを守った。すると虐めは徐々に落ち着いていき、今では一人だが友人もいる——。
そんな拓海とバッタリ会った。レイラと魔王様と買い物の最中に。
「ぐ、偶然だね」
「その人たち誰?」
拓海が私の肩を掴んでいる魔王を睨んでいるような気がするのは気のせいか。そして、魔王はいつまで肩を掴んでいる。
魔王の手をペチペチと叩いてみると、魔王は手を離した。
「えっと……今うちでホームステイしてる人達」
「そっちの男も?」
やはり拓海は魔王を睨んでいる。私の代わりに魔王が応えた。
「そうだ。何か問題でも?」
拓海は至極不愉快そうな顔をして、私の手を引いた。
「美羽、ちょっと……」
レイラと魔王に聞こえない距離まで移動すると拓海が立ち止まったので、私は拓海に聞いた。
「どうしたの?」
「大丈夫なのか? 女の子は良いけど、あの男」
「大丈夫って?」
魔王だってバレた? いやいや、そんなはずはない。
拓海は頬を赤らめながら、恥ずかしそうに言った。
「いや……いかがわしいことされてないか? さっきも迫られてただろ」
「迫られてはないけど……」
いかがわしい妄想はされそうになった。
「でも、あの男の人は隣にいた金髪の子が好きなんだよ」
「そうなのか?」
納得のいっていない顔だが事実だ。嘘は言っていない。
「私、もう行くね」
「おぅ。あ、美羽、なんかあったらすぐに連絡しろよ。秒で駆けつけてやるから」
「何それ。拓海の癖に格好良いじゃん」
素直にそう言えば、拓海は私の髪をクシャクシャっとして言った。
「格好良いんだよ。じゃあな」
拓海はそのまま人混みに消えた。
「もう、髪ぐちゃぐちゃになっちゃったじゃん」
髪を整えながらレイラと魔王の元へ向かうと、レイラが目を輝かせながら聞いてきた。
「誰ですの!? 美羽はあの方とお付き合いしているのですか?」
「幼馴染の拓海。付き合ってはないよ。最近は話もしてないし」
「そうなのですね。美羽の恋愛話が聞けるかと楽しみでしたのに、残念ですわ」
「俺に敵意剥き出しだったが……」
魔王も気付いていたのか。そりゃ気付くか。
「なんか誤解してたみたい。しっかり説明しといたから大丈夫だと思うよ。それに、多分もう会わないだろうし」
拓海とは家は近いが、高校も別のクラスでほぼ会うことはない。すれ違っても最近は挨拶すらしていない。
「もう良いじゃん。買い物の続きしよ!」
◇◇◇◇
買い物を済ませ、帰りにアイスを食べながら帰路についた。
「汗びっしょりだね。レイラ、先にお風呂入ろう」
「そうですわね。さすがにベタベタですわ」
私とレイラが口々に言うと、魔王がお風呂を沸かしてくれた。
「ありがとう」
「服を買って貰ったからな」
「魔王様、嬉しそうだね」
安いセール品なので申し訳なく思いながらも、喜んでもらえたなら買った甲斐があると言うものだ。
「美羽からの初めてのプレゼントだからな。大切に毎日着るよ」
爽やかに笑う魔王を見て、私はボンッと頭から湯気が出そうになった。
「魔王様、そういうのは好きな女性に言うセリフ! レイラに言ってあげて」
「でも、買ってくれたの美羽だし。美羽も好きだから良いだろ」
「もう、魔王様ってば。レイラ、お風呂入ろう」
あんなに自然と好きだと言われたら勘違いしてしまいそうになる。魔王は女性を何人も泣かせてきたに違いない——。
早速お風呂に入り、私はレイラの髪を洗っている。
「レイラ、後は髪の毛だけだね」
「これも美羽の指導の賜物ですわ」
「はは、指導って程じゃないけどね」
レイラは、うちに来た当初は私が全身くまなく洗っていた。しかし、今では体は自分で洗えるようになった。
髪は長いのもあって洗い残しがある為、仕上げに私が洗っている。
私はレイラの髪の毛にトリートメントを付けながら、ふと疑問に思ったことを口にした。
「レイラは、魔王様のことどう思ってるの?」
「どう、とは?」
「魔王様はレイラのこと大好きだけど、レイラの気持ち聞いた事なかったなって思って」
レイラは悩んでいるのか、暫く沈黙が続いた。トリートメントを流し終えると、レイラが口を開いた。
「わたくしは……よく分かりませんわ。政略結婚が普通でしたので、恋愛というものがよく分かりません。わたくしが魔王様と結婚しなければならないのなら結婚するまでですが」
「そっか。ここは自由だから誰と恋愛しても良いんだよ。レイラにも好きな相手が見つかると良いね!」
「はい」
レイラはにっこり笑顔で返事をすると、ちゃぽんと湯船に浸かった。
魔王には悪いが、私はレイラの味方だ。レイラに好きな相手が見つかれば全力で応援する。元の世界に戻すつもりはない。
ただし、もしもレイラが好きになる相手が魔王なら私は潔くレイラとお別れしよう。
そんなことを考えながら、頭をわしゃわしゃと洗った。
11
お気に入りに追加
100
あなたにおすすめの小説

異世界転生ファミリー
くろねこ教授
ファンタジー
辺境のとある家族。その一家には秘密があった?!
辺境の村に住む何の変哲もないマーティン一家。
アリス・マーティンは美人で料理が旨い主婦。
アーサーは元腕利きの冒険者、村の自警団のリーダー格で頼れる男。
長男のナイトはクールで賢い美少年。
ソフィアは産まれて一年の赤ん坊。
何の不思議もない家族と思われたが……
彼等には実は他人に知られる訳にはいかない秘密があったのだ。

オバサンが転生しましたが何も持ってないので何もできません!
みさちぃ
恋愛
50歳近くのおばさんが異世界転生した!
転生したら普通チートじゃない?何もありませんがっ!!
前世で苦しい思いをしたのでもう一人で生きて行こうかと思います。
とにかく目指すは自由気ままなスローライフ。
森で調合師して暮らすこと!
ひとまず読み漁った小説に沿って悪役令嬢から国外追放を目指しますが…
無理そうです……
更に隣で笑う幼なじみが気になります…
完結済みです。
なろう様にも掲載しています。
副題に*がついているものはアルファポリス様のみになります。
エピローグで完結です。
番外編になります。
※完結設定してしまい新しい話が追加できませんので、以後番外編載せる場合は別に設けるかなろう様のみになります。
能力値カンストで異世界転生したので…のんびり生きちゃダメですか?
火産霊神
ファンタジー
私の異世界転生、思ってたのとちょっと違う…?
24歳OLの立花由芽は、ある日異世界転生し「ユメ」という名前の16歳の魔女として生きることに。その世界は魔王の脅威に怯え…ているわけでもなく、レベルアップは…能力値がカンストしているのでする必要もなく、能力を持て余した彼女はスローライフをおくることに。そう決めた矢先から何やらイベントが発生し…!?

チートを貰えなかった落第勇者の帰還〜俺だけ能力引き継いで現代最強〜
あおぞら
ファンタジー
主人公小野隼人は、高校一年の夏に同じクラスの人と異世界に勇者として召喚される。
勇者は召喚の際にチートな能力を貰えるはずが、隼人は、【身体強化】と【感知】と言うありふれた能力しか貰えなかったが、しぶとく生き残り、10年目にして遂に帰還。
しかし帰還すると1ヶ月しか経っていなかった。
更に他のクラスメイトは異世界の出来事など覚えていない。
自分しか能力を持っていないことに気付いた隼人は、この力は隠して生きていくことを誓うが、いつの間にかこの世界の裏側に巻き込まれていく。
これは異世界で落ちこぼれ勇者だった隼人が、元の世界の引き継いだ能力を使って降り掛かる厄介ごとを払い除ける物語。

疲れきった退職前女教師がある日突然、異世界のどうしようもない貴族令嬢に転生。こっちの世界でも子供たちの幸せは第一優先です!
ミミリン
恋愛
小学校教師として長年勤めた独身の皐月(さつき)。
退職間近で突然異世界に転生してしまった。転生先では醜いどうしようもない貴族令嬢リリア・アルバになっていた!
私を陥れようとする兄から逃れ、
不器用な大人たちに助けられ、少しずつ現世とのギャップを埋め合わせる。
逃れた先で出会った訳ありの美青年は何かとからかってくるけど、気がついたら成長して私を支えてくれる大切な男性になっていた。こ、これは恋?
異世界で繰り広げられるそれぞれの奮闘ストーリー。
この世界で新たに自分の人生を切り開けるか!?

夢幻の錬金術師 ~【異空間収納】【錬金術】【鑑定】【スキル剥奪&付与】を兼ね備えたチートスキル【錬金工房】で最強の錬金術師として成り上がる~
青山 有
ファンタジー
女神の助手として異世界に召喚された厨二病少年・神薙拓光。
彼が手にしたユニークスキルは【錬金工房】。
ただでさえ、魔法があり魔物がはびこる危険な世界。そこを生産職の助手と巡るのかと、女神も頭を抱えたのだが……。
彼の持つ【錬金工房】は、レアスキルである【異空間収納】【錬金術】【鑑定】の上位互換機能を合わせ持ってるだけでなく、スキルの【剥奪】【付与】まで行えるという、女神の想像を遥かに超えたチートスキルだった。
これは一人の少年が異世界で伝説の錬金術師として成り上がっていく物語。
※カクヨムにも投稿しています
婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪
naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。
「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」
まっ、いいかっ!
持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

【完結】番である私の旦那様
桜もふ
恋愛
異世界であるミーストの世界最強なのが黒竜族!
黒竜族の第一皇子、オパール・ブラック・オニキス(愛称:オール)の番をミースト神が異世界転移させた、それが『私』だ。
バールナ公爵の元へ養女として出向く事になるのだが、1人娘であった義妹が最後まで『自分』が黒竜族の番だと思い込み、魅了の力を使って男性を味方に付け、なにかと嫌味や嫌がらせをして来る。
オールは政務が忙しい身ではあるが、溺愛している私の送り迎えだけは必須事項みたい。
気が抜けるほど甘々なのに、義妹に邪魔されっぱなし。
でも神様からは特別なチートを貰い、世界最強の黒竜族の番に相応しい子になろうと頑張るのだが、なぜかディロ-ルの侯爵子息に学園主催の舞踏会で「お前との婚約を破棄する!」なんて訳の分からない事を言われるし、義妹は最後の最後まで頭お花畑状態で、オールを手に入れようと男の元を転々としながら、絡んで来ます!(鬱陶しいくらい来ます!)
大好きな乙女ゲームや異世界の漫画に出てくる「私がヒロインよ!」な頭の変な……じゃなかった、変わった義妹もいるし、何と言っても、この世界の料理はマズイ、不味すぎるのです!
神様から貰った、特別なスキルを使って異世界の皆と地球へ行き来したり、地球での家族と異世界へ行き来しながら、日本で得た知識や得意な家事(食事)などを、この世界でオールと一緒に自由にのんびりと生きて行こうと思います。
前半は転移する前の私生活から始まります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる