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特別な部屋ですか

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「次、こんなことしたら怒りますからね」

 シェリアは起きてすぐ寝顔を眺めていた男、セルフィーに言った。

「怒っても可愛いじゃないですか。折角ですし同居体験してみます?」

「拒否権はないですね?だってここ窓がないじゃないですか。逃がす気ありませんよね?」

 そう、シェリアは窓がないことに気づいてしまったのだ。

 ついでに言うならここはものが最小限かつ生活感があるので誰かが使っている部屋なのだろう。
 
 十中八九、セルフィーの部屋だ。

 正確には窓は隠されており、仕掛けを解く必要があるのだ。

「どうでしょう。いい子なら帰してもいいですけど」

「ゾッとしました。それよりお腹すいたので何かください。」

 セルフィーは思ったより大人しいシェリアに疑問を持ちつつ廊下への扉を開けた。
 その瞬間シェリアは素早く廊下へ駆け出した。

「シェリア、ユキ忘れてますよー」

 シェリアはいきよいよく後ろを振り向いたらセルフィーはユキの首を掴んでおりいつでも殺せる体勢であった。

「人質とはずるいですね」

「なんとでもどうぞ。さぁ、部屋に戻りましょうね。そっちは危ない人が多いので。」

 シェリアは大人しく部屋に戻り怯えたユキの体を撫でてあげた。

「キュ、キュー…」

「お待たせしました。夜ご飯はハンバーグですよ」

「なんか、新婚の妻みたいで苛つきます」

「じゃあ私は主夫ですね。」

 シェリアは何を言っても笑顔のセルフィーを無視して食事をしだした。

 食事は普通に美味しく、何も起きなかったのでシェリアは少し安心をした。

「あ、お風呂やトイレはあそこの扉です。」

「……入ってきたりしませんよね?」

「疑われてます?したことないですよ。流石にそこまではしません」

「着替えないけどどうするんですか?」

「こちらで用意してますよ。はい、どうぞ。」

 どこまでも用意周到なセルフィーに少しシェリアは引いた。
 お風呂からあがるとセルフィーが今度は入ったようで…しまい忘れてるセルフィーの本を暇つぶしにシェリアは読んでみた。

「随分と難しい本ですね。」

「キュキュー!」

「お待たせしました。」

「髪濡れてますよ?長いんですから乾かしたほうがいいと思います。」

「乾かしてください。いいでしょう?」

 ベットの縁に座るシェリアに見上げる形でセルフィーは頼んできたのだ。

「……それぐらい自分でしてほしいのですが…」

「駄目ですか?」

 シェリアは根負けし、結局乾かしてあげたのだった。
 その時、シェリアはセルフィーの服の隙間から傷だらけの肌が見えたのが気になったのだ。

「気になりますか?傷」

「いいえ、興味ないです」

 セルフィーは微笑んで聞いてきたが何となく聞かないほうがいいような気がしてシェリアは嘘をついたのだった。
 
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