お狐様の恩返し

泡沫 ウィルベル

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ニアと夢の世界

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 気づいたらきれいな草原の上に寝室着のままたっていた。夢だろうか?でもそれにしてはリアルに感じてしまう。ほら、太陽とか綺麗に輝いてるんだもん。

「ここ、どこかな……」

――ババババ!ドッカーン!

 遠くから凄い鉄砲みたいな音が聞こえたと思ったら物凄く重たい音が聞こえた。突風みたいなのが吹いて髪が揺れる。本当に夢………?人が1人吹き飛んできた。うわわ!!
よしっ!キャッチ出来たよ!

「………ニア?」

 狐面にヒビが入っており、割れている。何があったんだろ………。

「うっ……銀髪さん…?嘘でしょう!?………こちらへ」

 僕の手をとり、走り出した。何かを気にするように後ろを振り向き、懐から何かを後ろに投げつけた。……ニアって足早すぎない!?……あ、村?みたいなところが見えてきた。そのまま裏口と思うところから入り、家の後に隠れ座った。

「………ここは精神世界です。どうやら銀髪さんを巻き込んだらしいので、どうにか出口をつなぎます」

 精神世界は魂に干渉する行為に等しいため禁止されているはずだよね……?

「本来なら私のみを精神世界に巻き込む気だったのでしょう。申し訳ないです。…………人数が多すぎて中々出口が…………」

 ニアと話していたら後ろの家の壁が音を立てて崩れた。
そこからニアに似た男が出てきて、その後ろに狐面をした人が数人ついてきた。

「ほぅ、他の者が紛れていたか。まぁいい。そこの者、そいつのそばから離れとけ。でないと巻き込むだろう。身の保証が出来ん」

 なんだかニアとは違って普通に怖いんだけど……。ニアを守るように手を広げて前に出る。プンプン!僕ニアを虐めるやつ嫌いだよ!!……それになんかニアに外見が似てるのが嫌だ!

「外見は仕方なかろうて…………。まぁ思ったよりは男らしいな。だが実力不足だな。二人して油断しすぎだ」

 ニアは僕が前に出たのが意外なのかポカーンとしてて、僕は彼のスピードについていけず男はニアを手に持つ傘で刺した。

「悪いな。俺を憎んでもいい。………俺はどこまでも傀儡でしか無いのだろう………」

 精神世界は魂に干渉する行為に等しい。だからここで死んだら現実でも死んでしまう。何故彼は悲しげな表情でいるのだろう。何故僕は守れなかったのだろうか。

「…………銀髪さん!?それは駄目です……!!!」

 腹を抑えてニアが何かを言っている。僕は今怒っている。自分に。彼に。僕は強くなりたい、もっともっと!
そのあたりで僕の意識が消えた。最後に見たのはニアが駆け寄り男が驚きに表情を固め、周りの人たちが倒れて行くところだった。




「目が覚めましたか?」

 あれ?僕…………精神世界に飛んでそれから……

「銀髪さんのお陰で魂が消えてしまう前に戻ることが出来ました。が、魂に傷を覆ったために暫くはゆっくりと安静にしなければならなくなりました。申し訳ありません。助けていただきありがとうございます」

 やっぱり夢じゃなかったんだ…………。僕、最後記憶が飛んでるけど助けれたらしい。ってて。凄く体中が痛いんだけど!?

「無理した反動が筋肉痛として出ているのかもしれません。あまり、動かないでください」

 な、なるほど。

「二人して安静だね」

 うん、お揃い。多分ニアのほうが重症であると思うけど、2人生き残れて良かったよ。もしくは2人で死んでたら良かったのかな?……うーん、あの男の人誰だろう。

「ニアに似てた嫌な奴だれ?」

 やっぱり……あいつ嫌いだ。なんか嫌いだね。ニアを虐めたりするから嫌だぁ。

「あれは……同郷の者になります。私は時々あぁやって精神世界に引きずり込まれることが諸事情であるんですよ」

…………それは大変じゃん!!その時は僕も連れて行ってね!!ニアと一緒にいたいから!

「僕も……連れて行ってね?」

 ニアはふるふると首を振った。

「いえ、精神世界の構築にたくさんの同郷の者に協力を仰ぐ必要がありまして、維持にも力を使うのでかなり疲れているはずです。多分1年以上はないと思います」

 そっかぁ。待てよ!?て事はにあの男も現実でうろちょろしてるって事だよね。僕がニアの騎士ナイトになるからね!?あいつなんていつかはけちょんけちょんにしてやるんだ!!

「なんだが銀髪さん…やる気満々な気が………?」

 やる気を燃す僕にニアが首を傾げ、ポツリと呟いたのだった。

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