お狐様の恩返し

泡沫 呉羽

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僕の日常と子狐

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 僕は身体が弱かった。そうだね、産まれた時から弱めではあったけど、支障をきたすくらいではなかったんだ。僕の一族としてはかなり弱く普通の人よりちょっとだけ成長が遅かったかなぐらいだよ。僕には兄弟がいて、兄が2人に姉が1人で妹は双子。子沢山だと思うよね?僕も思う。兄と姉とは母親違いだけど仲はいいほうだよ。唯一、妹達に嫌われてるのを除けばね。僕の母はこうやって離宮に離されていても会いに来ることはない。母が離宮にしてほしいと父に頼んだらしい。

 僕の身体は年々弱くなっている。食事もほとんど入らないし、ベットの上で1日を過ごすことが多くなった。このまま悪い方向に行けば死んでしまうかもしれないと医者には言われた。僕は1人、窓際に置いてある椅子まで倒れ込むように移動をした。窓の外を見ることが唯一の楽しみかもしれない。

「おい、このキツネどっから入ってきたんだ?」

「この傷じゃ助からないだろう。森に帰すか?」

「放置でもいいんじゃね?だってさ、病気の王子しかいないだろ?」

「まぁ、確かに。庭師が気づいたら捨てるだろ」

 僕は表向き難病で離宮で療養をしているということになっている。何年もその状態だったからかなり立場も弱くこうやって言われたり仕事をしなかったりと気を抜くやつがほとんどだ。キツネ………。図鑑でしか見たことがないや。どんな生き物だろうか。僕は窓を開けて巡回中の騎士に話しかけた。ここは二階のため僕の体力じゃ降りれないのだ。

「ねぇ、キツネもってきてくれないかな?」

「「お、王子様!?」……ですが、死にかけで血も出てまして…その…助かる見込みはないかと…」

「…それでも……いいから」

 喋るのでさえ久しぶりでちょっと辛い。話しかけて無視されないところを見ると騎士になって日が浅い人なのかもしれないね。騎士が段ボールにキツネらしきものを入れて窓際に座る僕のもとに持ってきてくれた。

「どうぞ」

 そう言ってすぐ出て行っちゃった。まぁ、いいか。確かに血が出ていて助からないかも……。でも息はあるみたいだね。ベットに戻り下から応急手当て箱を出して消毒液をつけようとしたらキツネに睨まれ思いっきり威嚇をしながら噛まれた。……小さいから子狐なのかもしれない。消毒液が怖かったのかな?僕が何も反応をしなかったからか小さな狐は噛むのをやめ、僕に合わせ首を傾げた。
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