24 / 78
消えた世界、消えかけた世界の葉
幸せ
しおりを挟むこの世界で1番に嫌われれば、私は幸せなのかな。
この世界の敵が明白になれれば、私の生きる意味ができるのかな。
この世界が私を嫌いになれば、私は誰よりも1番幸せに死ねるのかな。
壊れてしまったわけじゃない。
狂ったわけじゃない。
苦しいわけじゃない。
悲しいわけじゃない。
きっと。
きっと、
多分そうなんだ。
幸せを見つけられた人はいつか死んでしまう。
幸せを見つけられなかった人もいつか死んでしまう。
でも、その死に方が皆同じじゃないのを私は知ってる。
私が1番知ってる。
「ありがとう」を、それなりに言えた。
「ごめんなさい」を、それなりに言えた。
「幸せにする」を、一度も言えなかった。
「幸せにしたい」を、口から出ていかなかった。
「愛してる」を、心から言えてた。
「愛して」を、沢山言った。
あなたのその横顔が好きだった。
あなたのその仕草が好きだった。
あなたのその愛しそうに見つめてくる瞳が好きだった。
あなたのその心が好きだった。
1番あなたを愛してる。
1番あなたを見ていた。
きっと。
きっと、
これからもそうなんだ。
あなたがその命を投げ出した時、私の心もあなたと共に投げ出た。
あなたの心が私に入ってきたのに、私は私の心が出てしまって拒絶してしまった。
「幸せになろう」そう言ってくれたのはあなただった。
「幸せにする」そう言ってくれたのはあなただった。
そう。
そう、
そうなんだ。
私を置いていかないと、力強く言ったあなたは私を置いて行ってしまった。
あなたは私をどう思ってくれたの?
あなたは私をどうしたかったの?
あなたは私をどんな思いで遺したの?
教えて。
教えてよ。
あなたは私を殺したかった?
あなたは私と居て辛かった?
あなたは私のことを嫌いになった?
ねぇ。
答えてよ。
幸せをくれなかったあなたが居なくなって、私はもう幸せに暮らせないんだよ。
幸せにしてくれるんじゃなかったの?
幸せをくれるんじゃなかったの?
あなたを亡くして、私は幸せに死ねなくなったよ。
あなたに看取ってもらうことが、一番の幸せな死に方なのに、なんであなたが先に行ってしまうの?
私と居るよりも向こう側に行く方がよかったの?
私はあなたがいないと、もう生きる意味がわからなくなってしまった。
あなたがいないなら、もう幸せな死に方なんて見つからないよ。
誰もが私を憎んで嫌いになって、私のことをどうでもよくなって、私のことを忘れてしまって、私のことを誰も見なくなったらきっと、あなたに看取ってもらう幸せな死に方の次に幸せに死ねると思うの。
あなたが、
本当に、
本当に、
大切な人なんだ。
あなたに「愛してる」って言い足りなかったのかな。
そう、言い足りなかったかもしれない。
今でも、あなたに言えないことに後悔してるから。
あなたに「幸せにする」と、言えたらよかった。
口から出なかった言葉を無理やり出せばよかった。
今なら、あなたを想って泣きながら言えるのに。
ねぇ。
幸せにしてよ。
「愛してる」
「愛してる」
「あいしてる」
あいしてる
─────幸せにしてあげられなくて、ごめんね─────
0
お気に入りに追加
2
あなたにおすすめの小説

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます
おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」
そう書き残してエアリーはいなくなった……
緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。
そう思っていたのに。
エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて……
※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。

いつか彼女を手に入れる日まで
月山 歩
恋愛
伯爵令嬢の私は、婚約者の邸に馬車で向かっている途中で、馬車が転倒する事故に遭い、治療院に運ばれる。医師に良くなったとしても、足を引きずるようになると言われてしまい、傷物になったからと、格下の私は一方的に婚約破棄される。私はこの先誰かと結婚できるのだろうか?
(完結)貴方から解放してくださいー私はもう疲れました(全4話)
青空一夏
恋愛
私はローワン伯爵家の一人娘クララ。私には大好きな男性がいるの。それはイーサン・ドミニク。侯爵家の子息である彼と私は相思相愛だと信じていた。
だって、私のお誕生日には私の瞳色のジャボ(今のネクタイのようなもの)をして参加してくれて、別れ際にキスまでしてくれたから。
けれど、翌日「僕の手紙を君の親友ダーシィに渡してくれないか?」と、唐突に言われた。意味がわからない。愛されていると信じていたからだ。
「なぜですか?」
「うん、実のところ私が本当に愛しているのはダーシィなんだ」
イーサン様は私の心をかき乱す。なぜ、私はこれほどにふりまわすの?
これは大好きな男性に心をかき乱された女性が悩んで・・・・・・結果、幸せになったお話しです。(元さやではない)
因果応報的ざまぁ。主人公がなにかを仕掛けるわけではありません。中世ヨーロッパ風世界で、現代的表現や機器がでてくるかもしれない異世界のお話しです。ご都合主義です。タグ修正、追加の可能性あり。
僕は君を思うと吐き気がする
月山 歩
恋愛
貧乏侯爵家だった私は、お金持ちの夫が亡くなると、次はその弟をあてがわれた。私は、母の生活の支援もしてもらいたいから、拒否できない。今度こそ、新しい夫に愛されてみたいけど、彼は、私を思うと吐き気がするそうです。再び白い結婚が始まった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる