Leaf Memories 〜想いの樹木〜

本棚に住む猫(アメジストの猫又)

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強まる想いが光る葉

夏の終わり、光の闇へ誓った

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 秋風が夏の匂いを攫っていく匂いがする。

鈴夏すずか
 まって!」
「えぇ、早く行かないとお祭り終わっちゃうよ~?」

 俺のとなりで歩いていた彼女は走っていく。
 新しく買った可愛い浴衣を着てパタパタと突っ込むように走る姿は可愛らしい。

「ねぇ、見てみて~!」

 そう言って彼女は俺の元へ帰ると、俺の手を引っ張って連れていく。
 香水も何も付けてない彼女の匂いが、俺の鼻をくすぐった。


 連れていかれたのは屋台を抜けた先の神社だった。
 俺が驚いて彼女に目をやると、彼女は美しく消えそうな笑顔で笑う。

「私ね、前世があるんだ」
「え?」
「前世があるって言っても、少し不思議な感じで…
 この世界とは別の世界で生きてたの。」
「え…」

 何故か、言葉が頭に入らなかった。
 でも確かに頭に入ったのは、異世界での転生をしたこと。でも、俺は頭に入らないだけでどこか冷静な自分がいた。

 話を聞き終わった俺は、頭の中で整理がつかないまま口走るように言う。

「それで、鈴夏はどうするの?」

 嫌な予感がした。
 鈴夏が消えてしまうのではないかと。

「───────」
「え…?」
「─────」
「な、にを言って…」
「────」
「だ、だから」

 何かを伝えようとする彼女は、悲しそうで辛そうな顔をする。
 俺はそんな彼女を見て、この世界の住人ではないのが明白になったような気がして、どういう感情でいたらいいのか分からなかった。

「ごめん」

 辛そうにそう言った彼女は、神社の奥へと走っていった。
 追いかけることを忘れて彼女の背中を見つめていると、風が強く吹いた。
 冷たくて恐ろしいくらいに寂しくなる匂いに包まれる。やっと今の現状に気づいて俺は彼女を追いかける。


「待って!
 まって、鈴夏!」

 俺の声だけが響く神社は、とても寂しさと怖さが増幅させる。
 鈴夏の声が聞こえた気がして、暗い神社の中、それを頼りに向かう。


「鈴夏っ!」
「っ?!
 な…んで」

 酷く驚いた顔をした彼女の瞳には涙が零れ落ちていっていた。
 俺は何も考えず彼女へ走りよると強く抱きしめた。

「ごめん。」
「なに、が?」
「ごめん。」
「やめてよ。」
「一緒にいよう。」

 そう強く言うと、彼女は固まった。

「一緒には、できない。」
「どうして」
「もう、帰らないといけないから。」

 「ごめん」そう言った鈴夏は震える。俺からは顔が見えないけど、泣いてるのは確かだ。

「どうして、急に?
 さっきまで祭りに行くって嬉しそうだったじゃないか」
「本当は、こんな予定じゃなかったの。
 転生者なんだって言うだけだと思ってた。
 だけど、急に帰ってくるように命令された、から…」
「そんな…」

 鈴夏は俺の胸に手を置いてシャツを握りしめ震えると、顔を埋めた。俺は意を決して伝えることにする。きっとこれは、間違いだ。
 間違いではあるけど、これが俺たちの正解だと思うから。

「一緒に行く。」
「え」
「一緒に行くよ。
 鈴夏が行くのなら、俺も行く。
 離れ離れは嫌だろ?」
「……馬鹿。」


 そう言った鈴夏は俺の唇にそっとキスをすると不気味な程に淡く光る渦へとゆっくり歩いて行く。



 俺の手を引っ張って行く彼女の手をしっかりと握る。
 そこに最悪な結末が起きようと、辛い目にあったとしても、彼女と支えあっていくと決意したのだから。

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